第三十八話
「ちなみにですけど、サリ……お母さんとソフィアのお父様の関係ってどうなってるの?」
二人を見ていたり会話の端々を聞いているとどうにも以前からの知り合いのようだし、なぜかサリーナの方が立場が上のような感じでヘレナはそれが気になっていた。
サリーナは自分から進んで過去を語らない、聞かれたことにも必要最低限しか答えない。ヘレナとしてもわざわざ本人が語りたくないもの語らないものを率先して聞こう問い詰めようなどは思わない。それでも、それでもだ、どうしたって好奇心というものがあるわけで、結局のところ気にしてしまった以上知らずにはいられないのだった。
「サリーナ様と同じように私のお父様も昔に冒険者をしていた時期があったそうなんです、その時サリーナ様に何度か命を救われているそうなんです。年齢的にはお父様の方が倍くらいあるなのにまるでサリーナ様の方が師匠みたいで、ちなみにですけどサリーナ様のおかけで冒険者を辞める踏ん切りがついたって言ってましたわ」
「なるほど。でも、ソフィアのお父様ってこの国では最強じゃないの?」
「えぇ、槍術だけならばこの国では最強ですよ。でも、強さの種類は沢山ありますから」
(とはいえ。レバノス様の強さというのは並大抵では無いでしょう。前に聞いた話ではとーさまとレバノス様は魔法学院来の親友で学生の時にとーさまは剣術大会でレバノス様は槍術大会で優勝していたといっていましたから。そんなレバノス様がここに来たのは十中八九とーさまが呼んだからでしょう。本来領主が領地を離れるというのはよっぽどのことそれこそ領主会議程の何かがなければ基本的に従者を使うもの。でも、そうだとして何をするつもりなのかな? レバノス様がわざわざ来ているということはレイアスロアではなくアレイスロアの方で何かがあるということでしょうから……でも、とーさまと似たような雰囲気の方でしたし案外娘のためだけに来たということも、とはいえ一国の騎士団長がそれだけのためにここまで来るというのも変な話なわけだけど)
「……ナ……レナ?……ヘレナ!」
「あっ、はい……どうしたの?」
「それはこっちのセリフですよ。突然俯いちゃってなんの反応もないんですから、何を考えてたの?」
「ううん、そんな人がお母さんに何の用なのかなって気になっただけで……」
考えたところできっと私には関係ない、ヘレナはそう割り切って思考を放棄したのだった。
そうしてその後もしばらくソフィアとヘレナで話しているといきなり部屋の扉が開け放たれた。
驚く二人と二人を
「……いや、そんなに警戒しなくてもいいと思うんだが」
扉の奥では扉を開け放った張本人が恥ずかしそうに頭を搔く。
「お父様、ノックくらいしてください。それにここはヘレナの部屋ですよ、仮にも紳士を
「待て待て、ソフィア。そんなに怒るな、サリーナの許可も貰ってる……というか仮にもって、謳うって父さんショック」
ヘタっと萎れるように
「なんかどっちが親なのか分かりませんね。それでレバノス様、要件は何ですか?」
ただ、レバノスはその言葉を待っていたと言わんばかりに目を輝かせてヘレナを見据えた。
「ふーむ、冷めた視線にキレのある毒舌、状況を的確に把握する観察眼。想像以上にサリーナの子供だな君は、ちょっと失礼」
そう言ってヘレナの前にしゃがんだかと思えば次にはヘレナの両脇を掴んで持ち上げる。
「ひゃぁ、ななな何するんですかぁ」
あまりにも突然のことで顔を真っ赤にしながら手足をバタバタとさせるヘレナ。
レバノスはそのまま二、三回ほどヘレナの体を上下に移動させる、いわゆるたかいたかいである。ヘレナの精神面は前世も併せて二十歳を超えている、それ以前に七歳にもなれば家族以外からそういったことをされるのは誰であっても恥ずかしいだろう。
「うむ、こんなところまでよく似ている」
満足したといった表情でヘレナを床に戻すレバノスとはわわ、と両手で顔を覆うヘレナを見てソフィアは我慢の限界だったようだ。
「お父様っ! いい加減にしてください! ヘレナ、いきましょう」
ヘレナとは違って真っ赤になったソフィアは少し強引にヘレナの手を引っ張って部屋を後にした。
「えっ? 俺なにかソフィアを怒らせることした?」
「……いえ、
そうはいったレナリアではあったが口調は冷たく言葉の端々には確かな棘があった。残されたレバノスはあごひげを撫でながらどうしたものかと考え込むのだった。
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