第三十四話
「サリーナ様、ヘレナお嬢様。私はご主人様に雇われてこの屋敷で働かせいただいてます、レナリアです。そしてこちらが同じくここで働かせていただいてますセクタールです」
この屋敷に案内されたヘレナとサリーナはすぐにリビングに通されて、こうして簡易的な自己紹介をすることになったのだ。
ヘレナの向かいに座るレナリアは茶髪に黒目でサリーナとだいたい同じくらいの背格好。そのレナリアの右隣に座るセクタールは黒髪に黒目で背丈は150cmくらいである。
ただ二人ともどうにも落ち着かない様子でソワソワしている。普段従者である彼女たちが主人とする人と共に座っているという状況、それともう一つ。
「えーっと、知ってるとは思うけど一応私も自己紹介をしておきましょうか。私はサリーナ・バルトホルン、六年前までは冒険者をしていて今はお嬢様の専属のメイド兼母親を名乗らせていたただいてます。なので私には普通に接していただいて結構ですよ」
「いえいえいえ、滅相もございません。あの英雄サリーナ様に仕えられるということは私たちにとっては天にも昇るほどに光栄なことなのです。何より私とセクタールは貴方様に命を助けられた身、いかようにもおつかいくださいませ。ヘレナお嬢様におかれましてもご主人様には大変お世話になっております。なので少しでもこの御恩をお返しできるように
深々と頭を下げるメイドの二人。
「え、えぇ? 頭を上げてください。私は何もしてないわけですから、かしこまられる義理もないわけですし……その、普通にお願いします」
サリーナとヘレナは二人の忠誠心の厚さに困惑が隠せなかった。特にヘレナに関しては面識がない分余計にそれを感じていた。
「そうだ! さっき言ってたサリーナが二人の命を助けたってどういうこと?」
「えっと、もう今から八年も前のことになります。まだ、サリーナ様が英雄と呼ばれる前の頃のことです。私と彼女はレイアスロアの辺境の地マリス村の生まれで―――」
「あぁ、デーモンの襲撃があった村……じゃあ、あの時の生き残り、そうですか私はてっきり女の子と男の子を助けたと思っていたんですけど二人とも女の子だったわけですね。確か、あの時は二人ともお嬢様と同じくらいの年齢でしたっけ?」
「はい、私が七歳でセクタールは六歳でした。結局そのデーモンによって村は壊滅、村人も私たち以外は全滅、行くあても帰る場所もなくなって途方に暮れていた私たちを拾って育てていただいたのがご主人、リブライト様なのです」
「とーさまって色々なところで出没するんだね。この前も街に来てたみたいだし」
「ふふ、そうかもしれませんね。私の時もいきなり私の家に訪ねて来られましたから。それも護衛を一人も連れずにです。何というか自分に素直な方、とでもいうのですかね、やりたいと思ったことは絶対やるみたいな。私にとっては羨ましい性格のお方です」
「あ、サリーナ。明日のこと」
「大丈夫ですよ。さっき早速レナリアに頼んでおきましたから」
「はい。お嬢様、お任せ下さい。カトラス家の別邸はこの近くにありますのでこの後直ぐに届けに伺う予定です」
「そっか、ありがとう」
ヘレナの言葉に滅相もございません、と嬉しそうに微笑むレナリアだった。
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