第一章 異世界転生と隠し子
第一話
「ふぅ、まさに間一髪。それにしてもそんなに驚くことかな?」
背後から声をかけた彼女が手をかざすと頭から倒れていった渚の体が地面すれすれで制止する。とはいえ手や足を使っているわけでもなく渚の体は不自然に地面から浮いていた。
声をかけた本人もまさか気を失うほどに驚かれるとは思ってもいなかったらしく普段よりも反応が遅れたようだった。危ない危ないと額に浮かんだ汗を片手で拭っている。
「わざわざこんな事で魂を傷つけられても困るけど、ちょっとした息抜きにこうでもしないとやってられないよ。どう考えたって流石にブラック過ぎる仕事なわけ。普段の状態ですら私の許容量を軽くオーバーしてるのにいきなり五十億って何よ、応援をよこすとか言いながら実際に来たのは僅か五人だよ? それが初日が終わった時点で三人になってたし、というか仮にも神を名乗るんだから責任くらい持ちなさいよ。何より今日は一人しかいないときた、これじゃ応援の意味ないでしょ。応援の意味わかってる? 私が望んでいる応援は声援とかじゃなくて増援の方なんだけど。そもそもいくら私でも不眠不休で仕事なんて無理、上は現場の状況を理解しているのかを問い詰めたいところだよ全く……はぁあ、私もバックレたい……」
誰に話しているわけでもないがぶつくさと文句を言いながら彼女が指を鳴らすとどこからともなく椅子にテーブル、ソファーが出現する。そのまま渚を支えているのであろう右の手をソファーが出現した方へスライドすると渚の体がその方向へと浮遊して音もなくソファーの上にと横たわる。
「起きてそうそうまたパニックになられても困るし一応普通の一軒家のリビングっぽくしておくかな」
そうして、彼女が今度は手を叩く。
すると、今度はどこからともなく壁がせりあがり真っ白かった地面が綺麗なフローリングのものへと変化する。
「それにしても、面白い波形をしてるなこの子は……きっと面白い事になるぞ」
ツンツンと横になる渚の頬をつつきながら彼女は優しく、それでいて怪しげに微笑んだ。渚が寝てもまだ余るソファーの端に腰掛けながら物思いに
「こういう珍しい
白い空間に不気味な笑い声がこだまする。
この笑い声が発端になってこの後様々な大事件が起きたのだがそれはまた別の話。
とはいえ渚が目を覚まさない限り彼女は自分の仕事を全うすることが出来ない。自分のしてしまったこととはいえどこの状況では渚が目を覚ますのを待つ他に選択肢はなかった。
その後ボケーっと何もない天井を見上げて「あ、屋根つけ忘れてた……ま、空飛べるわけじゃないしいいか」、などと呟きながら何もせずに時間を潰していると、暇すぎたのかあるいはここ最近の疲れが出たのかいつの間にか彼女の精神は眠りの世界へと誘われていたのだった。
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