#2.39360時間
先日、四年半という短い様で長い時間を共にした恋人と別れた。
最後の一年は、ほとんど喧嘩をしていた気がする。
もちろん喧嘩ばかりしていたわけではなく、休日にただ散歩をして近所にある港の見える公園に出かけたりもしたし、何か特別なことをする訳ではなく、ただその人といる空間や時間がとても愛おしく感じたりもしていた。
今思うと、あの楽しかった時間や愛おしさで喧嘩をしていた日々に蓋をして、ただ理想や綺麗事だけを見ていたのかも知れない。見ていたかったのかも知れない。
「好き」と伝えたあの日から、気が付いたらその「好き」も言わなくなってしまって、いざ伝えようと思ってもなかなか言葉に出せずになっていた。
伝えなかったからと言っても、嫌いになってしまったわけではない。
そこには変わらず「好き」があった。だけどどこかに慣れもあったのだと思う。
あの人が言うには「変わってしまった」らしい。
私自身、変わったのかは判断できないが、きっと変わってしまったのだろう。
だって、好きだったあの人がそう言うのだから。
スマホに保存されたあの人は、ずっと笑っている。
それはきっと真実であり、虚像でもあるのだろう。
削除するのは簡単だ。
選択をして、ボタンを押せばいいだけ。
たくさんあるから。
時間がないし。
めんどくさい。
色々と理由をつけて削除をしていない。
家にある荷物も宅配で送ってしまえばいいのに、あの人が取りに行くと言ったから、未だに部屋の隅に纏まっている。
こんな文章まで作って、未練を垂れ流して。
私はズルい人間だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます