第10話 事情聴取と棚ぼた
ウォルターと呼ばれる署長に裏に連れて行かれた俺。平然とした顔に周りからは見えているだろうが、全く状況について行けず、頭の中では
(いやいや一体俺が何したんだ!?ただ熊からドロップした素材見せただけだぞ!早く金だけ置いて解放してくれよーー!)
とおもいっきり叫んでいるがこの凛々しいポーカーフェイスの前では誰も気づけまい。
「ん?どうした?あー…別にこれから取って食おうなんて思っちゃいないから安心してリラックスしてくれて構わないよ。」
ウォルターには普通にビビっていることがバレていた。穴があったら入りたいぜ。
と少し歩くと一つの部屋の前で立ち止まった。
「ここが私の専用部屋だ。遠慮なく入ってくれたまえ。」
そう促されれば入らざるおえない。仕方なく部屋に入る俺。
「し、失礼しますー…」
「うむ、そこのソファーに腰をかけたまえ」
ウォルターと対面して座ったところに、先程の美人受付嬢がお茶を入れて持ってきてくれた。美人が入れてくれたお茶を飲めるだけでもここに来た甲斐があったというもんだ、うん。
「サラス、ありがとう。さて単刀直入に聞こう。先程のドロップ品は君が倒して手に入れたと見て間違いないかな?見たところ君の年齢は7歳から8歳くらいに見えるが。」
ふむ…なるほどな…。美人受付嬢の方はサラスさんというのか…。あとで食事にでも誘ってって違う!違う!今はそれよりも質問に答えるのが先だ!
「あーえっと、熊の名前は分かりませんが、間違いなく僕が倒してドロップしたアイテムです。
年齢も仰る通り7歳です。」
事実を述べると分かっていてもマジかコイツみたいな顔をやっぱりされた。なんだ?
「君はあまりピンと来ていないとおもうが、君が倒したモンスターはデスベアーといって、かなり凶暴かつ獰猛なモンスターだ。特徴は鋭いツメによる攻撃でどんな物も切り裂く力と鋭さ、厚い毛皮に覆われた全身はあらゆる物理攻撃や魔法攻撃のダメージを軽減し中々倒れない厄介なモンスターだ。中級ライセンスの所持者のパーティでも6〜7人、上級だと3〜4人といった人数でようやく倒せるといったモンスターだ。」
え?いや、マジかよ…。やたら強いと思ってたけど、そこまでヤバイやつだったなんて。先にこの話聞いてたら普通に逃げてたぞ!
「それにあの森はデスベアー以外にも凶暴なモンスターがたくさんいることから、多くの冒険者にも怖れらていて、あの森を通るときには必ず護衛のパーティを数名付けるほどだ。それをたった一人で抜けて更にモンスターを狩れる実力。普通なら上級どころか特級ライセンスでも不思議ではないが、君の登録は無いときた。君は一体何者なんだ?どこでその力を身につけた?」
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ。なんも答えられん…。ここでバカ正直に前世で雷に打たれたら転生して神様に雷が使えるようにしてもらったんですとか、言ったらマジで通報されかねんぞ!!何か上手い言い訳…言い訳…。
「実は、僕は生まれて親に捨てられたらしんですが、とある強い騎士の方に拾われたんです。そこで戦闘のイロハを教えていただきました。そして、僕は更に強くなりたい気持ちで無理を言って冒険に来ました。あの森ではここへ来る途中でたまたま通っただけです。」
口が裂けてもあの森で4年修行で過ごしたなんて言ってしまったら心臓発作を起こすんじゃ無いかって心配になるレベルだ。
「その戦闘を教えてくれた騎士の名前はなんというんだ?」
あ、やべ。名前確認されるとは思わなかった…。とりあえずジジイの名前を言っておくか。
「えっと…オーギュストって言います…。」
とその名前を言った途端、ウォルターの顔が驚きに満ちた顔になっていた。隣のサラスさんも同様だ。
「なんだって!?オーギュストと言ったら伝説の冒険者でマジシャンズナイトの異名を持つおそらくこの世界最強の人物だ。そもそも都市伝説レベルの話だったし、ある日突然消息を絶った謎多き人物だ。そんな人が教えてるなんて…。」
おいマジかよ…。あのジジイ神じゃなかったんか!?まさか冒険者から転生して神になったって言わねえよな?いや俺が実際転生してるから言われても不思議ではないが…同姓同名だと信じよう。日本だと同姓同名は普通にいるしな!
「クロトと言ったか。君学園へ入学する気はないか?」
「学園?学園への入学は10歳からでしかも入学にはそれなりの強さと家柄が必要では?」
「なに、私が学園長へ進言しよう。君の実力を生で見ればその気にもなるだろう。入学金には君が持ってきた素材を売れば入学金を払ってもお釣りが来るくらいだ、対して問題ないよ。」
マジか!あの素材そんな高いのか!学校通わずあの素材だけ集めて売れば最早楽して生活出来るんじゃないか?労働や学校なんて嫌ってほど日本で味わったことだしなぁ。まぁけどあのジジイには学園には行った方が良いって言われてるし、棚ぼただと思って話に乗るかー。
「分かりました。学園編入のお話お受けします」
「そうと決まれば直ぐに話を通そう!サラス、学園長へ連絡を!」
「はい、ウォルター署長!」
とんとん拍子に話しが進んでいった。学園か、どんな奴らがいるのか少し楽しみではあるな!
その顔は不思議と笑っていることに気づきはしなかった。
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