第9話 金策

こっちの世界に来て初めて見るたくさんの人。大都市ならではの街並みや商人の数に驚き圧倒され、街の雰囲気は活気に溢れ、そんな中で俺は、

「金…どうしよう…」

1人現実的な壁に当たっていた。

現実世界でも安月給で、アニメや推しアイドルのグッズを集めるのに、毎回金欠を味わってたっていうのに……なんで異世界にまで来て金欠を味わないといけないんだ…!

なんて言っていても仕方がない。とりあえず人に聞いて、手っ取り早く金稼げる方法聞くか。

「あ、あの…す、すみ、すみま…」

「???」

やっべ…ただでさえコミュ症なのに、こっちに来て初めて見る人、しかもジジイ以外と喋ることも初めてで、喋り方忘れてた…。

「どうしたんだ、少年よ」

話すことにもたついていた俺に、俺が今声を掛けた人から優しい声がかけられた。現実世界なら不審者扱いだったろうに…なんて優しい世界!

「あ、あの、すみません。こっちに来たの初めてなんですが、どこかすぐにお金を稼げる場所はありますか?」

なんとか次は普通に話せた。

「うーん、そうだなぁ…。毎日何かしら依頼を出している依頼案内所で依頼をクリアできれば、報酬が貰えるよ。といっても簡単な依頼ほど安いから、まとまったお金が欲しいのであれば、難しい依頼をこなす必要があるかな。あとは、換金所かな。」

「換金所?」

「そう、換金所。モンスターからドロップした素材や珍しい薬草なんかを換金所に持っていくと、そのレアリティに合わせてお金をくれるんだ。アイテムさえあれば手っ取り早く稼げるぞ」

そういえば、修行中かなりモンスターを狩ったから素材はかなり余ってたな…。薬草てか食べれそうなキノコとかもあったはず…。まぁ売れるかどうか知らんけども…。とりあえず行ってみて売るかぁ。

「教えてくれて、あ、ありがとうございました!」

「いやお安い御用だよ。また何か困ったことがあれば、声を掛けるといい。あぁ、まだ名乗ってなかったな。俺はシュレク。この街で《ウッド》と言う宿泊所を経営している。寝泊まりや食事が必要になったら是非来てくれ、安くするぞ。」

「はい!その時は是非お世話になります!」

そう言ってシュレクさんと俺は別れた。男前でいい人だったなぁ。

俺はさっそくシュレクさんから教えてもらった換金所のある場所まで向かった。この街の中央にデカイ建物があるらしいが、そこが換金所らしい。なんだが、銀行みたいだな…。

換金所に着いて周りを見れば、たくさんの人が受付の人に物を見せていた。予想よりも高値で売れたのか、大喜びしてる人もいれば、もっと高値で売れると騒いでいる人もいる。しかし、騒ぎすぎた人は甲冑きた用心馬らしき人に外に連れ出されていった…おっかねぇ…。

俺もさっそく可愛いお姉さんのところに順番待ちしながら並んでいた。可愛いお姉さんの所に並ぶって大事だと思うんよ、うん…。

「こんにちは、ボク。今日はどうしたの?」

可愛いお姉さんからボクって言われるなんともいえない背徳感が俺を襲う…いやいやそうじゃないそうじゃない!

「あ、あのここでアイテムとか売れるって聞いたんですがここで大丈夫ですか?」

「あーえぇ大丈夫よ。何を売りたいの?」

どうやらあっていたらしいので、とりあえず素材を出してみた。

「え、えっと…これなんですが…」

「えっ…これ…えっ?」

俺の出したアイテムを見て固まるお姉さん。なんだろう、このお姉さんの目が、『え?こいつこんなの売れると思ってんのか?正気か?』って目をしてる。ツラみ…。

「ボク?これ…どうやって手に入れたの?」

「どうやってって…ここに来る前の森で出会ったモンスターですが…?」

「この街の前の森って…この子が…このモンスターを!?」

一人でブツブツ喋りながら俺を得体の知れない物体を見るかのような目で見てくる。

「どうかしましたか?もしかしてこれだけじゃ足りないですか?」

仕方なく他の素材も出そうとした時、

「一体何事かな?」

奥からきっしりとした服装を着た中年の男が現れてきた。現実世界で言ったら管理職についてそうな感じか…。

「あ、ウォルター署長!これを!」

そう言って受付の可愛い女性が署長という男に俺が渡したアイテムを見せた。関係ない話だが、スタイルいいなぁこのお姉さん。

「ん?ふむ…。こいつはデスベアーの爪にデスベアーの毛皮…。かなりの上物だな…。これをこの少年が?」

「えぇ、そうみたいです。」

「ふむ、少年、名はなんという?」

「え?えっと、クロトと言います…けど…。」

「では、クロト。少し奥の部屋で話せないかな?」

「え…えええぇぇ!」

物を売りに来ただけなのに、早々に事情聴取らしい…。お巡りさん…ボクは何もやってません!!誰か助けてくれぇぇぇ!!




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