第8話 ようやく始まりの日

雷迅ライシュンを習得してから早2年。ただただ特訓漬けの毎日を過ごしていた俺は、

「もう…無理…。温かいご飯…食べたい…。冒険らしいことしたぁぁぁぁい!!!」

ついに精神崩壊していた。

それもそのはず。合計4年の間、ひたすらランニングによる体力向上、肉弾戦を想定してひたすら筋トレ、闘い方に関しては全くの素人なので、日本で観てたバトル物の主人公の闘い方を思い出しながら、現れた野生動物に試したりなどしていた。最初は鹿、次に猪、最後は最初に追われたことのある熊らしき動物。知っている動物なはずなのに、何故かどいつもこいつも凶暴化していて、いつ死ぬかと覚悟を決めた程だ。

けど、それも2年も続ければ、それなりに闘い方も様になってきたように感じる。

食事に関しても最初は山菜や川魚しか食べていなかったが、動物を駆り始めて肉を食えるようになった。これほど肉の有り難みを感じた事が無く、この世界に来て肉を口にした瞬間涙を流したよ…。

そして獣の肉を取り入れ始めて、スキルに変化があった。それは、ステータスに表示されている、

スキル:【獣身雷化】《ジュウシンライカ》の文字。

【雷化】も使えるが、この【獣身雷化】はその雷化の上位互換。内容は、全ステータスが一時的に爆発的に上昇するということ。

どれだけ上昇するかステータスを比較してもらえるとわかりやすいか。

【クロト】: ATK:40 DEF:25 AGL:65 DEX:20

SPP:100

雷化状態: ATK:80 DEF:25 AGL:130 DEX:20

SPP:100

雷化だけでも、火力と敏捷は2倍になっていてかなり強くなっている。しかも今の雷化の持続時間は20分間。7歳という年齢を考えるとこんな7歳おそらくいないだろう。まぁこの世界の人間を見たことがないから、もしかしたら強さは平均とかの可能性もあるが…。もし平均、もしくは平均以下だというんであれば、この世界で生き抜く自信は無い!

そして、問題の獣身雷化だが、

獣身状態: ATK:170 DEF:120 AGL:200

DEX:110 SPP:200

全ステータスが3桁超える化け物っぷり。実際にこの状態で熊を殴ったら即死だったからなぁ…。人間相手には使うことないんじゃねえのかこれ…。デメリットとしては、1日1回だけしか使用できない事、持続時間は現段階では3分しか保たない事くらいだ。まぁ非常手段ってとこかな。まぁ何はともあれ、

「これだけ強くなれば7歳でも生きていけるだろ!後はお金さえ工面すればなんとかなるが、なるようになるしかない!てか早く街行きてーよ!」

4年も樹海で過ごしたんだ。いい加減人の温かみが恋しい年頃よ!知識は置いてあった本のお陰で、可能な限り貪った。次に向かう大都市ゼノンの情報と道のりを頭に入れて、

「さぁ、行きますか!目指せ大都市!絶対可愛い美女を捕まえてみせる!」

日本で叫んでたら即お巡りさんのお世話になったであろうセリフを吐いて、自分を鼓舞した。

「そういえば、オーディストが騎士団学校に入学しろって言ってたな。確か10歳からって言ってたっけ…。」

今7歳だけど飛び級とかさせてくれないかなぁ。

「そもそも入学条件ってなんだろ。全員入学できるもんなのかな。」

あれこれ色々考えてはいたが、考えたところで分かるはずもないので、頭を空っぽにして鼻歌混じりにゼノンへ向かった。道のりはここから歩いて2日くらいらしいが、雷化を使えば1日で行けそうだった。

そうしてがむしゃらに雷化を織り交ぜながら歩く事1日、樹海を抜けて、ようやく大都市ゼノンと思われる街が視界いっぱいに広がった。

「ここが…大都市ゼノン…。ようやく…ようやく…ここまで…っ!」

修行で辛かった4年間を思い出し、感極まった声で大きく叫んだ。

「さぁ!行こうか!」


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