第7話 歴史と特訓の成果

「おっし!今日のノルマ終わりー!っと」

今までブラック企業に勤めてたからからか、特訓をノルマと言ってしまうあたり、職業病だなと思ってしまう。

ちなみにその特訓というのは、ひたすらランニング、その後雷化を纏ってのランニングというかなり地味な作業。雷化を使って分かったことが、雷化を纏った状態での激しい行動はかなり負担が掛かり、体力もごっそり持っていかれ、結果5分も保たないこと。普通に発動してる状態であれば、10分は纏えるのだが…それだと意味が無い。よって体力さえ付ければ、雷化を纏った状態も長引くのではないかという安直な考えが導き出された。だって他に思いつかないし…。

そして、そんなこんなで樹海での修行と小屋での読書生活から2年の月日が経っていた。カレンダーや時計が無い為正確ではないが、起きる寝るまでを1日とカウントしていった結果、印が730個付いていたからである。

この2年を経て分かったことがいくつかあるが、それはこの世界には種族がある。それぞれ《人族》、《魔族》、《エルフ族》、そして限りなく少ないが混合の《ハーフ》の種族がいるということ。まぁこの種族の話は簡単にだがオーディストから聞いたことがあるが、種族の違いにはかなり意味合が変わってくる。人族と魔族は基本的に敵対し、互いの領土を賭けて戦争することもあるとのこと、その理由はオーディストの話にも出てきたが、過去の4人の化け英雄とそれに敵対していた魔王との因縁。

その4人の化け英雄は人族であるが故に、魔王の存在は決して認められなかったらしい。そして、魔王が存在しているからという理由で平穏に過ごしていた魔族の元へ人族の殺戮行為。その行為により、魔王の逆鱗に触れた人族との戦争が起きたという話だった。

そしてその因縁は今でも続いているという。

そして戦争を唯一止めることができるのがエルフ族。エルフ族には個人の力が他種族より強い者が多く、そしてそのエルフ族を束ねているのがこの世界でも5本の指に入るほどの強さを持つエルフだという。過去に起こった人族の殺戮による戦争を止めたのもこのエルフ族とのことだが、一体何年生きているんだろうか…。

「っとそういえばオーディストが今更ながら餞別を渡してきたんだっけか」

その餞別というのは、なんとアイテムBOX!しかも手に持たなくても良い、念じるだけで取り出し可能、収納可能という神スペックアイテム!さすがオーディスト様だぜっ!

2日前に急に夢の中に現れたと思ったらこの神餞別。けど、転生する時にこのアイテムがあることをただ単に伝え忘れただけじゃねえのかとも思わなくもないが、些細なことである。

しかもじじいオリジナル、自分がイメージした服になるマジックアイテムが入っている。

これがかなり便利で、長袖にもなれば半袖にも水着にもなれる代物。これ売ったら家建つんじゃないなかな…売らないけど…多分…。

「しかし2年間ひたすらランニングだけしかしてないけど、ステータス上がってんのかなこれ」

そういえばステータス確認してなかったことを思い出した。ふむ、とりあえず確認してみるか。上がってないとは思うけども…。

「えーっと……んーー。ん?」

【クロト】ATK:20 DEF:15 AGL:50 DEX:15

SPP:90

所持スキル:雷化ライカ 雷迅ライシュン

     痺れ耐性

ステータスが上がってることにもビックリだが、雷迅??いつの間にこんなスキルを得てたんだ…。んで、性能っと……。

雷迅ライシュン:自分の目視できる場所(半径10m)までの場所まで一瞬で移動出来る。

めちゃ強じゃん、これ…。相手に消えたと錯覚させることも可能なうえに、いざと言うときに戦闘から離脱することもできる!

「チート技きたぞこれ!!しかもこの技も特訓次第では距離が伸びるってことかな!」

雷化は纏える時間、雷迅は瞬間移動できる距離。努力次第で俺の能力が化け物に…あーニヤニヤが止まらん…!

「とりあえず試すか!」

まず目視して、移動できそうな場所を絞り、そして唱える。

「雷迅(ライシュン》!」

すると風景が一瞬で認識した場所に変わった。

「マジで瞬間移動じゃん、すげーこれ!」

興奮して、人がいたらドン引きされそうなテンションで一人で盛り上がっていた瞬間、突然膝がガクッと崩れた。

「…えっ…なんだ…急に…力が…体力がごっそり…減ったような感覚が…」

もしかして、この技も極めるまで欠点だらけの技…なのか…?やっと俺も異世界最強に近づけると思ったのによぉ…

「また特訓…いつまでこの小屋生活続くんだよ…」

先の長さにいろんな意味で膝が崩れた…勘弁してくれよ…。レベリングはRPGの醍醐味だけど、こんな序盤のマップでちまちまレベリング…。

俺が冒険始めるのは一体いつになるんだろうか。誰か教えてくれ!

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