「ああ、シャーロット……この私がこの地で暮らすための駒」

「え――」

「駒、だと?」

 こちらを流し見て、微笑む女。

 しらばくれるつもりなど、毛頭ないらしい。

「貴方が生まれてくれたおかげで、私はこの城で今日まで過ごすことができたわ。ありがとう、シャーロット」

「おかあ、さま……」

「そしてさようなら。退屈しのぎにはなったわ、人間」

 愕然と膝を折る姫。

 天族の女は、その視線を、姫から彼女を支えているエレンへと向けた。

「じゃあ行きましょうか、

「え?」

 どうして彼女は、エレンの名を知っているのか――

 そんなことを口にする余裕などはなかった。

 何故なら――

「私が、私の――エレン」

「え――」

 その発された女の言葉に、この場の誰もが言葉を失ってしまったからだった。

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