獨り
彼女が部屋を出たあと、シャワーを浴びて普段は飲まない瓶ビールを開ける。もちろん煙草に火をつけることも忘れてない。
普段口うるさくて煽ってばかりくる彼女が、行為中は驚くほど静かになる。
いや、静かではないのか。
部屋に響く嬌声がいつもの強気な彼女とはかけ離れたものであったからそう感じただけなのかもしれない。
よく考えれば、彼女は変わってしまったとは思う。イタズラ好きで掴みどころがない所は相変わらずではあるが、酒に強くなったし感情を表に出さなくなったと思う。
出会って1年ってことはあと数日で初めて体を重ねた日からも1年経つということ。
あれから色んなことがあったと思う。
お互い相手ができたし、この関係を隠しながら4人で朝まで呑み明かしたり、お互い振られたり。
この関係が原因では無いが。
……多分。
ご無沙汰だからって呼び出して、作業のような行為。事務的な挨拶に最後に煙草。
彼女は気分的な理由では断らない。
それが俺を受け入れてくれてる気がして、人には見せたくない黒い部分でさえ彼女には話してしまう。
彼女はわかるよ、私もそう思ってただなんて本音かどうか分からない同調をくれる。
…行為中のあの声も、本音かどうか分からないが、それすらも心地よくて。
ここには愛も何も無い。
紡がれる言葉といえば
「私いっちゃう」「俺もいっていい?」
それくらい。
10分にも満たないお互いを慰めるだけの作業。
彼女は何も言わない。俺の都合で呼び出して、俺の都合で帰しても、何も。
彼女がそれでいいなら、まぁいっか。
俺がよければ、それで。
「……阿呆くせ」
どこで間違えてしまったのだろうか 84 @ku_84
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