第二話 氷王、剣王、槍王VSリヴァイアサン


 ――対アルジュナ連合軍所属ウルスラ連合国軍指揮官ガウス·ミットレイ少将視点。


 上空にアルジュナが現れたと同時に、海を軍船で移動していた私達の目の前に体長四十メートルはありそうな蒼き海龍が現れた。


 私は長年海軍に所属しているから知っている。


 この海龍が古くから存在しているSSSモンスターリヴァイアサンだということを。


 若き新兵だった頃に一度だけ見た事があった。


 その時は所属していたウルスラ連合国軍船団を全て沈められた。


 私は運良く助かったが、大勢の仲間が死んだ。


 あの時の恐怖が蘇るが、私は今、対アルジュナ連合軍船団を率いる指揮官だ。しっかりせねば!!


 「全船防御魔法を張りつつ撤退せよ!!」


 私の命令に従い、全ての船が防御魔法を張りつつ撤退を開始する。


 だが、リヴァイアサンは私達を逃がすつもりはないらしい。


 リヴァイアサンは口から高水圧の水弾を放ち、防御魔法を展開している味方の船を次々と沈めていく。


 くそっ!! このままでは壊滅してしまう。


 そう思っていると、私が乗る旗船にリヴァイアサンの口が向けられる。


 万事休すかと思い、国に残した家族を想いながら目を瞑ったが、数秒経っても攻撃は放たれない。


 不思議に思って目を開けると、目の前には分厚い氷の壁が生まれており、その壁がリヴァイアサンの水弾を防いでいた。


 船団を守れるほどの分厚く長い壁を張れる者を私は一人しか知らない。


 その者は我が国ウルスラ連合国の英雄にして十二星王の一人である氷王フィゼルド·コールブランド。


 その氷王は海を凍らせ、リヴァイアサンと対面している。


 そんな氷王の元に二人の人間が駆けつけた。


 一人はマドランガ共和国所属の十二星王である剣王ゼアルス·シルファリオ。


 もう一人はヤーバル王国の将軍も務めている槍王ガティ·イザーク。


 三人の十二星王は海神とも呼ばれるSSSモンスターリヴァイアサンと向かい合う。


 今から壮絶な戦いが始まる。


 「全船急いでこの場から退避せよ!!」


 船団が戦いに巻き込まれない様に私は指示を出す。


 私には彼らの戦いの邪魔にならないようにする事しかできない。


 頼むぞ、氷王、剣王、槍王。


 リヴァイアサンを倒してくれ!!



        ◆◆◆



 ――氷王フィゼルド·コールブランド視点。


 なんとか旗船を沈ませずに済んだ。


 旗船が沈んでしまえば船団は簡単に崩壊してしまうからな。


 俺はリヴァイアサンと船団の間に分厚い壁を作り、海を凍らせて足場を作ってリヴァイアサンを見上げている。


 ···でかいな。約四十メートルといったところか。


 これは中々骨が折れそうだ。


 久しぶりの強敵を前にしてついつい溜息を吐いてしまう。


 面倒臭くてしょうがないがリヴァイアサンと戦うしかない。


 そう思ってリヴァイアサンと睨み合っていると、後方から剣王ゼアルス·シルファリオと槍王ガティ·イザークがやって来た。


 「氷王助けに来たよ」


 「これがリヴァイアサン。中々でかいね」


 二人とも武器を構えてやる気満々だ。


 剣王と槍王が来てくれたなら俺はいらないんじゃないか?


 「お前らがリヴァイアサンと戦うなら俺は戦わなくていいか?」


 そう言うと、槍王は溜息を吐き、剣王は笑い出す。


 「はぁ〜、この強敵を目の前にしてその選択は無しだよ氷王」


 「ははっ、相変わらずの面倒臭がり屋だな氷王は」


 はぁ〜。やはり戦わないと駄目みたいだ。


 しょうがなくリヴァイアサンに目をやると、俺達に水弾を飛ばそうとしている所だった。


 「全てよ凍れ!! フロストワールド!!」


 俺は水弾ごとリヴァイアサンを凍らせた。


 だが、氷に亀裂が入ると、数秒で氷が割れて氷の中からリヴァイアサンが出てきた。


 「ぐぉぉぉおんっ!!」


 リヴァイアサンは凍らされた事を怒っているのか大きな鳴き声を上げながら、巨大な尻尾を海の中から出して俺達に向かって叩きつけようとする。


 その尻尾の攻撃に剣王と槍王は向かっていき、巨大な尻尾に無数の傷をつける。


 「ぐぉぉぉぉんっ!!」


 傷をつけられたリヴァイアサンは大きく鳴きながら海に潜っていく。


 ちっ、海に潜られたのは厄介だ。


 何処から現れるか分からない。


 いつリヴァイアサンが現れてもいいように身構えていると、俺達が立っている氷の足場が大きく揺れる。


 まずい!! 俺達の真下から現れるつもりだ。


 俺は急いで海に向けて大きな氷の三叉槍を放つ。


 「穿け!! アイストライデント!!」


 真下に向かって放った氷の三叉槍は見事リヴァイアサンに当たったみたいで、苦しみながら海の中からリヴァイアサンが姿を現す。


 リヴァイアサンの頭からは緑色の血が流れている。


 俺達の攻撃を警戒してるのか、俺達から離れた場所に現れてそこから水弾を俺達に向けて放つ。


 放たれたいくつもの水弾を剣王はまるで踊っているかの様に避けたり、レイピアの連突きで打ち消したりしている。


 槍王は、二メートルはありそうな翡翠色の槍を豪快に振り回して水弾を打ち消している。


 二人が水弾を無効化してくれているので、俺は氷技を放つ事に集中できる。


 まずは離れた場所にいるリヴァイアサンまでの足場を作ろう。


 「地を作れ!! アイスフィールド!!」


 辺り一面の海面が凍っていく。


 これなら剣王と槍王もリヴァイアサンに近づける筈だ。


 剣王と槍王はリヴァイアサンが放つ水弾を打ち消しながらリヴァイアサンへと近付いていく。


 そんな二人に一際大きく強力な水弾を放とうと口を大きく開け魔力を溜めているリヴァイアサン。


 あれは放たれるとまずい!!


 「剣王!! 槍王!! 空中へとジャンプしろ!!」


 俺は二人に指示を出すと、両手に魔力をあるだけ溜めて最大氷技を放つ!! 


 「時さえ凍れ!! アブソリュートゼロ!!」


 絶対零度の氷技が空気中の水分さえ凍らせながらリヴァイアサンへと向かっていく。


 咄嗟にジャンプした剣王と槍王の顔や手の皮膚も薄っすら凍っているように見えるが二人は無事な様だ。


 リヴァイアサンを見ると、リヴァイアサンの巨体は凍っている様に見える。


 でもリヴァイアサンは、魔力を身体に纏わせて防御したのか完全に凍らせるには至らなかった。


 あと数十秒でリヴァイアサンは氷の中から出てくるだろう。


 だが、それだけの時間があれば、剣王と槍王には十分だろう。


 剣王は凍ったリヴァイアサンに近付くとジャンプしてリヴァイアサンの顔に向けて渾身の剣技を放つ。


 槍王は駆けながらリヴァイアサンの胴体に向けて物凄い魔力を纏わせた翡翠色の槍を振り抜く。


 「シルファリオ剣術奥義――星群剣!!」


 「無双流槍術奥義――絶槍!!」


 同時に放たれた二人の十二星王の技は、リヴァイアサンの顔には無数の穴が空き、槍が当たった部分の胴体は見事に消し飛んでいた。


 氷の中から出ようとしていたリヴァイアサンの身体からは魔力が消えて、槍王の一撃で胴を断ち切られたリヴァイアサンの身体は凍った海面へと叩きつけられて凍った海面を割りながら海へと沈んでいった。


 はあ〜、疲れた。


 これで戦いは終わったかに見えたが、空中に黒い大きな渦が現れ、その中からいくつもの獣の顔をつけた異形のモンスター群が出てきた。


 リヴァイアサンを倒したと思ったらこれか。


 剣王と槍王は異形のモンスター達と戦う気満々みたいだが、俺はもう休みたい。


 だがそういう訳にもいかないか。


 俺は魔力回復薬を飲みながら渋々異形のモンスター達の元へと向かった。

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