最終章

第一話 第二次魔法大戦の始まり


 オルファースト王国についた私達は、オルファースト王国の異変を感じながらもアルジュナが居るであろう王都カルガニオを目指した。


 途中気持ちの悪い異形のモンスターと戦いながらもカルガニオに着くと、カルガニオの中から戦闘音が聴こえる。


 私達がカルガニオに入ると、街の巡回をしていたクローンに見つかった。


 集まってきたクローン達をラダンさん、イレーヌさん、ゼロ、シャオと共に蹴散らしながら戦闘音が聴こえるカルガニオの王宮へと向かった。


 戦闘音を頼りに王宮を走っていると、王宮の警備をしていたクローン達が襲いかかってくるけど、皆で蹴散らし先へ進む。すると戦闘音と共に戦っている者達の声が聴こえる。


 その声の中には懐かしい人達の声も混ざっている。


 その中にルートヴィヒの声も聞こえた。


 あぁ、この先にルートヴィヒが居るんだ。


 早く駆けつけたかったけど、ルートヴィヒと戦っている相手――アルジュナであろう人間の言葉が気になった。


 アルジュナは王宮をダンジョン化して不死身になっていると言った。


 ならそれをどうにかしない事には助けに入っても意味がない。


 アルジュナの不死身をどうにかする為に、私は私の頭の中に話しかけた。


 『ダンジョンコア、この王宮がダンジョン化しているって本当?』


 『イエス、現在この場はダンジョンの中です』


 ダンジョンコアから返事が返ってきてアルジュナが言ってた事が事実だと認識できた。


 私は少しの間考えて、アルジュナの不死身を解除するには、アルジュナの管理下に置かれているこのダンジョンを私の管理下に置けばいいのではないのかと閃いた。


 『ダンジョンコア、このダンジョンを私の管理下に置く事は出来る?』


 『ノー、このダンジョンはダンジョンマスターと同等の能力がある人間の管理下に置かれています。ダンジョンマスターの能力ではその者の管理下からこのダンジョンを奪う事はできません』


 くっ、駄目か。私の管理下に置ければアルジュナは不死身ではなくなったというのに。


 だが、ダンジョンコアの言葉には続きがあった。


 『ですが、ダンジョンマスターの管理下の能力で相殺させてダンジョン化を解く事は出来ます。このダンジョンのダンジョン化を解きますか?』


 答えはもちろんイエス!!


 『うん、お願い!!』


 『···このダンジョンのダンジョン化を解く事に成功しました』


 よし!! これでアルジュナは不死身じゃなくなった!! 


 今助けに行くからね、ルートヴィヒ!!


 私はルートヴィヒ達が居る謁見の間へと足を踏み入れた。



        ◆◆◆ 



 僕は抱きついてきたステラをずっと抱きしめていたかったけどそうもいかない。


 「嘘よ嘘よ嘘よ!! あなたは私が身体を奪った時に消滅した筈よ!! 何で生きているの!?」


 ステラの登場に動揺しているアルジュナが僕とステラの再会の邪魔をする。


 ステラは名残惜しそうに僕から離れてアルジュナを睨む。 


 「私が何で生きているのかは分からない。だけど、クローンの成功作の身体に入る事ができたから、あなたと同じダンジョンマスターの能力を得る為にダンジョン巡りをしたの!! だから私が居る限りダンジョンマスターの能力は無効化されたも当然よ!!」


 ステラが勝ち誇った顔でアルジュナを睨む中、動揺していた筈のアルジュナが笑い出す。


 「···ふふふっ。そう、確かにダンジョンマスターの能力は無効化されたのかもね。だから何? それで勝ったつもり? ダンジョンマスターの能力がなくなったからといって私の有利は変わらないわ!!」


 さっきまでの動揺が嘘の様にアルジュナは笑いながら両手を上へと向ける。


 すると、アルジュナの両手の上に大きい黒い渦が生まれる。


 「私の勝ちが揺るがない事実を見せてあげる!! 我が忠実なる下僕よ、破壊の獣よ、我が勝利を確実なるものとする為に顕現せよ!!」


 黒い渦はどんどん大きくなり、謁見の間どころか、王宮まで崩れ始める。


 僕や他の皆は戦うのを止めて王宮から脱出する。


 僕らが脱出したと同時に王宮は崩れ、王宮を崩す程に大きくなった黒い渦からは邪悪な魔力を放つ三つ首の黒き巨大な龍が現れた。


 その黒き邪龍の真ん中の頭の上にアルジュナが立っている。


 僕達は目の前に現れた邪龍を見て冷や汗をかいてしまう。


 それ程邪龍は禍々しい魔力を放っていた。


 そんな僕達を見てアルジュナが笑う。


 「ふふっ、私の可愛いアジ·ダカーハを見て恐れているみたいね。でも恐怖はこれだけじゃないわよ」


 アルジュナが上空に手をかざすと、上空に別の場所に居るであろう対アルジュナ連合軍の姿が映し出された。


 陸から進軍している対アルジュナ連合軍の元に黒き巨体の牛の様なモンスターが現れ、海から進軍している対アルジュナ連合軍の元には巨大な蒼き龍が姿を現している。


 『ふふっ。世界中の人間達よ、見えているかしら。愚かにも私と戦う事を選んだあなた達の軍の元には絶望を送ったわ。せいぜい藻掻き苦しみながら死ぬといいわ』


 アルジュナが世界中に向けてそう言うと、上空に映し出されていた映像は消えた。


 映像が消えると、アルジュナは僕達を笑いながら見下ろす。


 「ふふっ、あなた達の仲間の元には、ベヒーモスとリヴァイアサンを送ったわ。今頃蹂躙されているでしょうね」


 おそらくさっき上空に映し出されていた黒い牛のモンスターがベヒーモスで、海に現れた蒼き龍がリヴァイアサンなのだろう。


 名前だけは知っている。


 目の前に居るアジ·ダカーハと呼ばれたモンスターもベヒーモスとリヴァイアサンも遥か昔から居ると言われているSSSモンスターだ。


 そのモンスター三頭がアルジュナの配下だとは。


 このまずい状況の中、アジダカーハの他の頭の上に立っている炎王バルバドスが口を開く。


 「アルジュナ様。俺様もこんな奴らより、弱い奴らを蹂躙してぇ。こっちに向かっているであろう敵軍の所へ俺様を転移してくれねぇか?」


 炎王バルバドスの願いを聞いてアルジュナは邪悪に笑う。


 「ふふっ、あなたも悪い子ねぇ。でも弱い子達を蹂躙したい気持ちは分かるわ。いいでしょう、あなたを敵軍の元へと飛ばしてあげる」


 そう言ったアルジュナはバルバドスに手を向ける。


 するとバルバドスは黒い渦の中に飲み込まれていった。


 「さて、あとはキメラ兵達を敵軍の元へと送って、クローン兵の相手とアジ·ダカーハ、傭兵王、地王、闘王の相手をあなた達にしてもらうわ」


 アルジュナが遠くに見える三十万は居る死んだ様な人達に手を向けると、様々な獣の顔を持ったモンスターへと姿を変えていく三十万の人達。その三十万のキメラ兵はアルジュナが作った黒い渦の中に入っていく。


 そしてステラやアルジュナに似た大勢のクローン兵達は僕達に敵意を向ける。


 僕達の相手を二万のクローン兵とアジ·ダカーハ、闘王、地王、傭兵王に任せたアルジュナが上空に手を向けると、王宮の瓦礫が上空に集まり、上空に空飛ぶ城が現れた。


 「さて、それでは私とユルゲイトは高みの見物をさせてもらうわ。戦いはアジ·ダカーハ、闘王達、クローン兵に任せるわね。行きましょうかユルゲイト」


 「はい、アルジュナ様」


 アルジュナとユルゲイトはアジ·ダカーハと傭兵王、闘王、地王、二万のクローン兵を残して上空の城へと飛んで行った。


 慌ててアルジュナ達を追いかけようとしたイルティミナ先生とパラケルトさんだけど、残った傭兵王、地王、闘王、アジ·ダカーハに邪魔された。


 「くっ、ここはあいつらを倒さない事には上に行けそうにないべさ」


 険しい表情のイルティミナ先生は僕達に視線を向ける。


 すると、ヨルファングさんが口を開く。


 「あのデカイトカゲは俺が相手をする」


 あの禍々しい魔力を放っているアジ·ダカーハを一人で!?


 「流石に一人では危険です。あのアジ·ダカーハからは邪悪な力を感じます」


 僕はヨルファングさんが一人で戦うのを止めさせようとするけど、ヨルファングは首を横に振る。


 「駄目だ。あいつは危険だからこそ俺一人で戦う」


 ヨルファングさんは頑なに意見を変えない。ここは任せるしかなさそうだ。


 だが、闘王、地王、傭兵王、二万のクローン兵の相手もしないといけない。


 すると、ステラと共に来たシャオさんという人が闘王の相手を買って出た。


 「弟子の相手は師匠である私にさせてもらうネ」


 これであと二人と二万のクローン兵。


 「なら地王の相手は私がするのね」


 パラケルトさんが地王の相手をしてくれるらしい。


 残るは傭兵王と二万のクローン兵。


 「傭兵王ならさっきと同じで俺とキルハで相手をすればいいんじゃないか?」


 セシルの意見にキルハも縦に首を振る。


 傭兵王の相手はセシルとキルハがする事になった。


 「じゃあ、二万のクローン兵はナギ、チェルシー、そこのラダンとイレーヌ、ゼロでする事にするべさ。ルートヴィヒとステラとあたしは上空の城へと行ってアルジュナとユルゲイトを討つべさ」


 イルティミナ先生が話をまとめようとしたけど、ゼロさんが待ったをかける。


 「すみません、ユルゲイトの相手は私に任せてもらえないでしょうか?」


 ゼロさんの真剣な表情を見てイルティミナ先生は少し思案する。


 「ユルゲイトと何かあるんべさね?」


 「···はい、ユルゲイトは私の創造主の一人です」


 「···わかったべさ。ユルゲイトと何か因縁があるんならお前に任せるべさよ。じゃああたしは、ルートヴィヒ、ステラ、ゼロを上空の城へと送った後にナギ達と共に二万の敵兵と戦うべさよ」


 それぞれの相手が決まり闘王達に視線を向ける。


 「話し合いは終わったかな?」


 闘王、地王、傭兵王がアジ·ダカーハの頭の上から降りてきた。


 話し合った通りにアジ·ダカーハの相手はヨルファングさん。闘王はシャオさん。地王はパラケルトさん。傭兵王はセシルとキルハ。二万の敵兵は、ナギさん、チェルシー、ラダンさん、イレーヌさんと僕達を上空の城へと送ったイルティミナ先生が相手をする事になった。


 僕とステラ、ゼロさんはイルティミナ先生に触れて上空へと飛翔する。


 アジ·ダカーハが僕達に狙いを定め大きく口を開けるけど、ヨルファングさんの一撃で吹っ飛ばされる。


 その隙に僕らは上空の城へと向かった。


 こうして後に第二次魔法大戦と呼ばれる戦争は始まった。

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