第三十四話 続々と


 剣を抜きレヴァンティンのエンチャントをかける。


 「おいおい、俺達と戦うつもりか? 素直に降参した方がいいと思うぜ?」


 「どうせ生かすつもりはないでしょう?」


 「ハハッ、そりぁそうだっ!!」


 バルバドスが笑いながら蒼炎を放つ。


 それを斬り裂くと目の前に闘王が迫っている。


 「君とまた戦えるなんて嬉しいよ、ルートヴィヒ!!」


 「僕は嬉しくありません」


 魔力を纏った拳と剣がぶつかり合い衝撃波が生まれる。


 相変わらず一発一発が必殺の一撃だ。


 上手く捌かなければ殺られる。


 だが闘王の相手ばかりもしてられない。


 横から傭兵王が近付いている。


 「久しぶりだな小僧!! 少し見ない間に十二星王になったんだって? 本当に十二星王に足るか見てやるよ」


 傭兵王が双剣を抜いて連撃を放つ。


 くっ、闘王と傭兵王の攻撃を同時に捌くのは流石に厳しい。


 闘王と傭兵王から瞬歩で距離をとると、地王ガイツァーが地面から無数の岩槍を生み出す。


 全力で駆けながら岩槍を躱すと、ユルゲイトが魔法陣を生み出し、闇魔法で生み出した無数のシャドウランスを放ってくる。


 それを斬ったり避けながら回避しているのだけれど、同時に炎王と地王も攻撃してくる。


 それでもなんとか回避し続けたけど、アルジュナが僕に手を向ける。


 あれはまずい!!


 「光迅流二ノ型応用技――激光迅!!」


 全力の斬撃を何もない空間に放つ。


 するととてつもない衝撃が剣から体に伝わる。


 地面や壁には衝撃で亀裂が入った。


 なんとか防げたけどなんて威力の攻撃だ。


 冷や汗を垂らしながらアルジュナに視線を向ける。


 そのアルジュナは僕を見て妖艶な笑みを浮かべている。


 「凄いわねあなた。私の攻撃を防ぐなんて。もしかして見えているの?」


 「···いえ、あなたの攻撃は見えていません。ただとてつもない殺気と圧を感じたので防がせてもらいました」


 僕はアルジュナと会話しながらアルジュナに剣を向ける。


 「へぇ〜、殺気と圧を感じて防ぐなんて凄いわね。 ん? そういえばあなた見た事あるわ。···あぁ、確か私が復活した時に胸を刺し貫いた子よね? 生きていたのね」


 「えぇ、仲間のおかげでなんとか生き残れましたっ!!」


 話しながら瞬歩で駆けてアルジュナに向かって剣を放つけど、見えない壁に阻まれる。


 ちっ、硬い!!


 闘王と傭兵王が攻撃してきたので見えない壁から離れる。


 「あらあら、この人数を相手にしてまだ生き残っているなんて凄いわ。あの時は咄嗟に胸を貫いたけど、間違いだったみたいね。私、あなたの事を気に入ったわ。どう? 私の配下に加わらない?」


 「いいえ、お断りします!! あなたは僕の妹の身体を奪って、妹の身体で大量の人々を殺そうとしている。いえ、既にオルファースト王国の多くの民を殺していますね? そんな人間の配下には絶対になりません!!」


 アルジュナを睨むと残念そうに溜息を吐いている。


 「そう、残念だわ。確かに多くの人間をユルゲイトの実験に使ったわ。でも元々あなた達は私が生み出した様なもの。どう扱おうが自由でしょ?」


 ···やはりアルジュナは危険だ。


 オルファースト王国の三百万の民達の多くはユルゲイトの実験で死に、生き残った失敗作はテルナー皇子の様に異形の化け物へと変わりオルファースト王国内を彷徨っていたのだろう。そして成功作の三十万のキメラ兵というのがおそらくカルガニオの外に居た死体の様に見えた人達だ。


 なんて酷い事をするんだ。


 こんな事をしでかしたのにアルジュナからは罪悪の感情を微塵も感じない。


 こいつは絶対に倒さないといけない。


 僕がアルジュナを睨むとアルジュナは眉を八の字にして残念そうな表情を作る。


 「あぁ、本当に残念。あなたの様な優秀な子は手元に置いておきたかったのに。···でもしょうがないわよね。あなたが私を拒否したのだから。さようならルートヴィヒ」


僕に向けているアルジュナの手に凄まじい魔力が集まっていくのを感じる。


 まずいあれは受けちゃ駄目だ。


 絶対に回避しなければと思っていると、突如王宮が破壊音と共に震え始める。


 よしっ、来てくれた。


 時が経つごとに王宮の震えと破壊音は大きくなり、そして謁見の間の壁が吹き飛んだ。


 壁には大穴が空き、そこから頼もしい仲間達が現れた。


 「間に合ったようだな」


 どうやら王宮の震えの原因はヨルファングさんだったみたいだ。


 「ルゥ、大丈夫か?」


 ヨルファングさんの後ろから心配そうに僕へと駆け寄るセシルに大丈夫と頷く。


 「おやおや、敵さんが勢揃いべさ。···今ここで決着をつけるのもありかもしれないべさね」


 「そうなのね!! ここで奴らを倒せば万事解決なのね!!」


 ヨルファングさんの後ろから更に現れたイルティミナ先生とパラケルトさんは戦う気まんまんでアルジュナ達を睨む。


 「そうですね、ここで倒せるならば倒した方がいい」


 「すげぇなぁ!! 強そうな奴らが沢山居るじゃねぇか!! ···うし、決めた!! 俺は傭兵王と戦うぜ!!」


 「···キルハ、これは遊びじゃない」


 イルティミナ先生とパラケルトさんに続いてナギさんは瞳に五芒星を浮かび上がらせ魔眼を開放して戦闘態勢に入り、キルハは嬉しそうに傭兵王バーン·マグナスをターゲットにする。


 そんなキルハを窘めながらチェルシーは杖を構える。


 このメンバーならばアルジュナを倒せるかもしれない。


 そう思いながら僕は剣を構え直す。

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