第二十話 クーデター!?
カンメイ山からラフォウに戻って来た私達は、一度烈華拳法総本山に戻り、封印の補強完了を報告した。
「お疲れ様でした。ミン老師はやはりラティス殿達と共にS級ダンジョンへと潜るのですか?」
「うん、なんか面白そうだから行ってくるアル」
「わかりました。いってらっしゃいませ」
「「「いってらっしゃいませ!!」」」
フェンさんが頭を下げると他の拳士達も後に続いて頭を下げてシャオを送り出す。
シャオと共に総本山から降りてS級ダンジョンへと向かう。
S級ダンジョンに着いて門番の兵士に冒険者カードを見せていると、兵士はシャオに気付いて背筋を伸ばし敬礼をしながら私達を通してくれる。
その際にシャオの冒険者カードを見せてもらったのだが、やはりSSSランク冒険者だった。
Sランクモンスターであるドラゴンを羽虫の様に扱う強さを持っているのだから当然と言えば当然だ。
ダンジョンの中に入ったので、シャオにダンジョンコアや私の事を話す為に仮面を外す。
「···ほう、その顔はアルジュナという奴に似ているアルネ」
シャオにこれまでの事とダンジョンに潜る理由を話した。
「···何か訳ありだとは思っていたけど、ユルゲイトが造った古代人のクローンで、アルジュナに身体を奪われて今は別のクローンの身体に入っているアルか。そして今はアルジュナに対抗する為にダンジョンコアを集めていると···」
「信じられない話だと思うけど本当の事なの」
「確かに驚きの内容だったけど信じるアルよ。短い期間だけど、一緒に過ごしてラティスがこんな嘘をつく人間じゃない事はわかっているネ」
シャオが信じてくれて安心した私は、シャオの力を貸してもらう為に頭を下げる。
「シャオ。多くの人間を殺すつもりのアルジュナを私は放っておけないの。アルジュナを止める為にあなたの力を貸して!!」
「ふふっ、言われるまでもなく一緒に戦わせてもらうネ。元々アルジュナという奴とは戦うつもりだったアル」
笑顔で共に戦う事を誓ってくれるシャオ。
SSSランク冒険者で、闘王の師匠でもあるシャオが共に戦ってくれるのはかなり心強い。
規格外の力を持つシャオを新たな仲間に加え、私達はS級ダンジョンを進む。
シャオの力は凄まじくボスモンスターとの戦いも苦戦する事はなく、三日かけて五十階層のダンジョンを攻略し、S級ダンジョンコアを手に入れた。
あと二、三個集めれば、ステラの身体だった頃のダンジョンマスターの能力と同等になる。
次に目指すは烈華民国の隣国ヤーバル王国のS級ダンジョンとA級ダンジョン。
ダンジョンコアを集めた後は時間があれば一度ヨルバウム帝国に戻ろうと思っているけど、戦争が始まっていれば直接アルジュナの元へと向かう事になるだろう。
あぁ、早くルートヴィヒに会いたいなぁ。
ルートヴィヒを想いながらダンジョンから出てラフォウの街へと戻ると、号外新聞がまた配られていた。それを読んでいる民衆達は驚いていたり、動揺していたりとどよめいている。
私も号外新聞を手に取り読むと、驚きの見出しが書かれていた。
『ヨルバウム帝国にてクーデター!?』
見出しに動揺しながら先を読む。
『ヨルバウム帝国第二皇子テルナー·ヨルバウムがクーデターを起こして皇帝と第一皇子を拘束し、それに対し第三皇子クルト·ヨルバウムは大将軍ミハエルと共にクーデター鎮圧軍を立ち上げた。テルナー陣営には、ヨルバウム帝国将軍マゲラス率いる一軍と、炎王バルバトス、地王ガイツァー、闘王ヤン·ジェウの十二星王三人が居るらしい。クルト皇子率いるクーデター鎮圧軍には魔導女王、錬金王、修羅王、迅王の四人が参入し、兵士は集めている段階との事』
あのいけ好かない第二皇子がクーデター!?
それに十二星王が三人もついてるなんて!?
動揺して読み終わった号外新聞を震わせてしまう。
同じく号外を読んでいたシャオは読み終わった号外新聞を握り潰す。
「ジェウめ、他国の諍いに参加するとは!! 闘王になって少しはマシになったと思っていたのに!!」
シャオはかなり憤慨している。弟子である闘王がクーデターに参加しているのが許せないらしい。
そんなシャオを横目に見ながらクーデター鎮圧軍を率いるクルトやヨルバウム帝国に居る皆の事を考えてしまう。
クルトが戦うという事は当然ルートヴィヒやセシル、他の皆も戦いに参加するに違いない。
行かなければ!!
「ごめん、皆!! 今から私はヨルバウム帝国に向かうわ!!」
すぐにでもヨルバウム帝国へと向かおうとするが、ラダンさんに引き止められる。
「落ち着けラティス!! 今から行っても決着はついてる筈だ。それにクーデター鎮圧軍には十二星王である魔導女王や錬金王、修羅王、そして迅王であるルートヴィヒも参入していると書かれている。十二星王が四人も居るんだ。鎮圧している事を信じて俺達はやるべき事をやろう!!」
ラダンさんの言葉で私の頭は冷える。
そうだ、今から行った所で決着はついている可能性が高い。
それにイルティミナやパラちゃん、ルートヴィヒが居るし、修羅王は確か十二星王最強と呼ばれている人物だ。
そうだクルト達を信じよう。
信じて私は私のやるべき事をやるんだ。
私はヨルバウム帝国に行きたい気持ちを必死に抑える。
クルト、皆、頑張って!!
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