第二十一話 第二皇子の反逆!!


 ――第二皇子テルナー視点。


 俺の母様ミゾルテ·ヨルバウム第二皇妃は第三皇妃であるクルトの母リーシェ·ヨルバウムの事を嫌っている。


 俺の母様は侯爵家の生まれのせいか平民を蔑んでいる。


 そんな母様の教育を受けたので、俺も平民は嫌いだし、平民から皇妃になったクルトの母も嫌いだ。


 だから平民の血を引くクルトも当然嫌いになった。


 平民の血を引くくせに俺よりも魔法の才能があるのも気に食わない。


 世界魔法学院大会に出場し、活躍した事も気に入らない。


 死地に向かわせたつもりなのに戦争で成果をあげたのも気に食わない。


 父上は俺の意見は聞かないのに、クルトの意見は聞く。気に入らない。


 世界最高議会では護衛をクルトに任せたのも気に入らない。


 あいつの友が十二星王になったのも気に入らない。


 あいつは父上、正妃、アルバート兄上にも好かれている。


 気に入らない気に入らない気に入らない!!


 あいつの全てが気に入らない。


 古代人の神かなんか知らないが、アルジュナという小娘など、軍さえ任せてもらえば俺が討伐してやるのに父上は俺に任せてくれない。


 きっとまたクルトに任せるつもりだ。


 近頃貴族の間でもクルトの評判が上がっている。


 これ以上戦果をあげられるのは我慢できない。


 クルトに出来るのだから俺ならもっと戦果をあげられる筈だ。


 父上に何度も軍を預けてもらうようにお願いしたのに、父上は俺を残念な者を見るような目で見つめながらそれを却下した。


 父上の隣に控えていたアルバート兄上も同じ様な目で俺を見ている。


 何故そんな目で見る!? 俺は俺の力を認めてほしいだけなのに!!


 父上の執務室から出て、苛立ちながら歩いていると、城に未だに滞在している炎王バルバトスが話しかけてきた。


 「これはこれはテルナー皇子。何やら悩んでる様子ですがどうしたのかな?」


 こいつも元は平民。相手をするつもりはない。


 無視して去ろうとするが、行く道をバルバトスが塞ぐ。


 「何のつもりだ!?」


 「そう怒らずに。テルナー皇子が軍を率いてアルジュナ討伐に向かうおつもりだと聞いてね。」


 「その話なら父上に却下された。俺には任せられないらしい。またどうせクルトが率いる事になる」


 不満をバルバドスにぶつけると、バルバドスは笑みを浮かべる。


 「そうですか、テルナー皇子の勇敢さがわからないとは皇帝陛下も見る目がない。俺様ならテルナー皇子に任せるのに」


 バルバドスの言葉で俺はの苛立ちは少し薄らぐ。


 「そうだろう? 俺は勇敢に立ち向かおうとしているのに理解してくれないのだ!!」


 「うんうん、テルナー皇子の苛立ちはよくわかりますぜ? 俺様ならテルナー皇子の力になれるかもしれない。場所を変えて話しませんか?」


 俺の力になれる?


 俺はバルバドスの言葉に惹かれて、自室へとバルバドスを招いた。


 そこでバルバドスが語った話は過激なものだった。


 「クーデターだと!? 何を言っている!? 俺は別に皇帝になろうとは思っていない!!」


 「まぁ、落ち着いて。何も皇帝陛下を殺すとは言ってません。一時的に拘束するだけです。クーデターを起こし、貴方が皇帝になってアルジュナを討伐すれば皇帝陛下も周囲の者も貴方を認め褒め称えるでしょう」


 俺の事を父上が認めてくれる? 


 「···だが、クーデターを起こすだけの力が今の俺にはない」


 「そこはご安心を。炎王である俺様、闘王、地王が貴方の味方になります。それに貴方の味方になってくれる者に心当たりがあるのでは?」


 そうだ。俺の派閥に入っているマゲラス将軍ならば味方になってくれる筈だ。


 十二星王三人とマゲラス将軍が率いる軍がいればクーデターも現実味を帯びてくる。


 「···父上やアルバート兄上は殺さないぞ? それでもいいならクーデターの案に乗ってやる」


 「ええ、俺様はテルナー皇子に力を貸すだけ。テルナー皇子の好きなようになさって下さい」


 バルバドスとの話を終え、マゲラス将軍にクーデターの事を話すと驚きながらもクーデターに参加してくれる事になった。


 さぁ、これから俺を認めさせる為の戦いが始まる。


 突然のクーデターに父上や兄上は為す術もなく簡単に拘束できた。


 「何を考えているのだ、テルナー!!」


 「ふっ、父上や兄上に私の力を認めさせる為に、皇帝となってアルジュナを討伐するつもりです」


 「馬鹿な事を!! 冷静になるんだテルナー!!」


 「私は冷静ですよ、アルバート兄上」


 拘束されて叫ぶ事しかできない父上と兄上を見て笑みが溢れてしまう。


 俺に反発しそうな正妃や城の重鎮も拘束できたし、後は第三皇妃とクルトを捕まえるだけだ。


 「第三皇妃とクルトを急ぎ捕まえよ!! 抵抗するならば殺しても構わん!!」


 俺の言葉に父上が驚く。


 「弟を殺すだと!? 正気かテルナー!?」


 「ふふっ、俺はクルトを弟などと思った事は一度もありません。殺すのに何の躊躇いもない」


 そう、むしろやっと殺せるのだ。


 やっと目障りなクルトを消せるのだ。

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