第十七話 ミン·シャオ


 私達はマドランガ共和国にあるB級ダンジョンとD級ダンジョンのダンジョンコアをゲットし、南大陸へと渡った。


 現在、烈華民国港町――ファンコンにあるA級ダンジョンを踏破し、ダンジョンコアを手に入れて町に戻ってくると、新聞の号外が配られており、町民達が興奮した様子で見ている。  


 何事かと地面に落ちている号外新聞を手に取り、内容を見る。


 そこには、対アルジュナ連合が組まれる事と新たな十二星王の誕生が書かれていた。


 対アルジュナ連合も気になるが、私の目は新しい十二星王の名に釘付けになる。


 号外には、でかでかと『迅王ルートヴィヒ·バンシール!!』と書かれている。


 マジで!? ルートヴィヒが十二星王になった!?


 仮面でわからないと思うけど、驚きのあまり口を大きく開けている私の横から、私が持っている新聞を見るラダンさんとイレーヌさん。


 「おいおい、ルートヴィヒが十二星王だとっ!? ···あの野郎そこまで強くなったのか!?」


 嬉しいのか悔しいのか分からない表情で新聞を見つめるラダンさん。


 「ラティス良かったじゃない。あなたのお兄さんが十二星王よ」


 イレーヌさんの声で、驚きのあまり思考停止していた私は我に返る。


 「う、うん。しかも光迅流の十五代目当主になった事も書かれてるわ。凄い、凄いよお兄ちゃん」


 私はやっと実感が湧いてきて嬉しさがこみ上げてきた。


 「その迅王がラティス様のお兄様なのですか。お強いのですね」


 「そうだよ、ゼロ。私のお兄ちゃんは物凄く強いんだから!!」


 胸を張りながらゼロの言葉に返事する。


 あぁ、世界中の人間にルートヴィヒの事を自慢したい気分。


 それに新聞の記事を読む限り元気みたいだし安心した。


 そういえばゼアルスさんはちゃんと私が生きてる事を伝えてくれたかな? 伝えてくれているといいけど。


 それにしてもルートヴィヒはやっぱり凄い。


 私も負けずにダンジョンコアを集めなきゃ!!


 次に目指すダンジョンは、烈華民国首都ラフォウにあるS級ダンジョン。


 ここからラフォウまでは馬車で二週間かかるらしい。


 中々時間がかかるが仕方ない。あぁ、パラちゃんの魔導自動車があったらもっと速く着くのに。


 馬車に乗り、揺られながら進む途中で山賊に襲われている馬車を発見。


 急いで助けに向かうけど、黒髪を二つの団子に纏めた金色の瞳の少女が三十人はいた山賊を一人でやっつけてしまった。


 馬車の主らしき商人が少女にぺこぺこと頭を下げている。


 私達は必要なかったみたいなので自分達の馬車に戻ろうとしたけど、お団子頭の少女に呼び止められる。


 「さっきは助けに来ようとしてくれてありがとアル」


 「ううん、私達の助けはいらなかったみたいだし気にしないで」


 助けられた訳でもないのにお礼を言うなんて中々良い子みたいだ。


 私達は少女に別れを告げ馬車へと戻ろうとするけど、何故かお団子頭の少女もついてくる。


 「あの、何でついてくるの?」


 「いやぁ、歩いて旅をしてたのだけど、ラフォウまで遠くて疲れたネ。そこに馬車で旅しているあなた達を発見したネ。何たる幸運」


 つまり馬車に乗せろと言う事か?


 「なら先程助けた商人の馬車に乗せてもらえば良かったじゃない」


 「あの馬車は乗っている護衛も含めて四人とも男だったネ。むさ苦しいのは好きじゃないアル。そちらは美女が三人も居るし、乗るなら断然こっちネ」


 ニコニコと笑みを浮かべながら私達の馬車に乗り込む少女。


 ラダンさん、イレーヌさんに視線を向けると、苦笑いしながら頷いている。乗せてもいいという事だろう。


 「···まぁ、ラフォウまで遠いからしょうがないか。私はラティス。こっちはラダンさんにイレーヌさんとゼロ。あなたの名前は?」


 「私? 私はミン·シャオ。武闘家アル。武者修行の旅の最中ネ」


 見た目十二歳くらいなのに一人で武者修行の旅とは。まぁ、山賊三十人を一人で倒せるのだから一人でも問題ないのだろうけど。


 「よろしくネ、ラティス、イレーヌ、ゼロ」


 「いやいや、オレは無視か!?」


 「男は基本無視と決めてるネ」


 シャオはラダンさんから距離をとり、私やイレーヌさん、ゼロにすり寄る。


 「···変な事したら降ろすからね」


 「へ、変な事? 何の事アルか? 私にはわからないアル」


 誤魔化しているが何かするつもり満々だったみたいだ。警戒しておくとしよう。


 乗せたのを少し後悔しながら私達はラフォウへと馬車を走らせる。


 途中野営を何度かしたけど、寝る度にシャオは私やイレーヌさん、ゼロに襲いかかろうとする。


 最後の方の野営ではラダンさんがシャオの見張り役になってくれたので安心して寝むれたけど。


 町や村によれば美しい女性を必ずナンパする。

 それを止めるのは私達。


 ラフォウに着く頃には少しの後悔が大きな後悔になっていた。 

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