第十六話 最高のプレゼント


 僕とハルケーの戦いは終わり、僕の十二星王入りが決まって再び城の会議場へと各国の王や代表、十二星王が集まり、僕の十二星王入りを祝してくれる。

 ガゼット皇や炎王は面白くなさそうにしているけど。


 僕が十二星王になった事でまた一つの議題が持ち上がった。


 それは僕の十二星王での異名を何にするかだ。


 イルティミナ先生はふざけてイケメン王とつけようとしたけど、もちろん却下された。


 他にも光王や白王、瞳の色から碧眼王などの名も挙がったけど、最終的にはグルンガル陛下が名付けた『迅王』が僕の呼び名になった。


 呼び名が決まって議会が終了して家へと戻ると、剣王ゼアルス·シルファリオが訪ねてきた。


 なんでも僕にプレゼントを持ってきたらしい。


 そう言えば十二星王になれたならプレゼントをあげると言ってたな。


 プレゼントと言うわりには手に何も持っていないけど、とりあえず家の中に入ってもらう事にした。


 ゼアルスさんは、ローナが用意したお茶を啜ると、僕に視線を向ける。


 「ルートヴィヒ君、まずはおめでとう。実に見事な試合だった。君の剣さばきを見て私も君と戦いたくなったよ」


 剣王ゼアルスさんに褒められるのは嬉しいけど、わざわざ褒める為に来たのだろうか?


 「おいおい、お前は褒める為だけでここに訪れたのか?」


 僕の横に座っているヨルファングさんの言葉で思い出したのか、ゼアルスさんは笑顔で僕に驚きの内容を伝える。


 「そうそう、君が嬉しがるプレゼントを持ってきたんだよ。それはね、君の妹が生きてるって情報さ」


 「······えっ?」


 僕の妹が生きている? どういう事?


 意味が分からず僕の頭の中が真っ白になっている中、代わりにイルティミナ先生がゼアルスさんを問い詰める。


 「ルートヴィヒの妹が生きているってどういう事べさ!? 説明するべさゼアルス!!」


 「落ち着いて落ち着いて。私の知っている事を今から話すから」


 そう言って話すゼアルスさんの話の内容はとても驚きで、とても嬉しい内容だった。


 「つまり、ステラの魂はクローンの身体に入って生きているって事べさね?」


 「あぁ、ステラ、いや、今はラティスと名乗っている彼女から聞いたから間違いないよ。その彼女は今はアルジュナを倒す為にダンジョンコアを集めている。だからここには来れなかったんだ」


 ステラが生きている? その事に驚いているのは僕だけじゃなく、セシル、ナギさん、ローナ、ジアス、チェルシー、パラケルトさん、イルティミナ先生も目を丸くしている。


 ローナとジアスは今にも泣きそうだ。


 僕は嬉しさもあるが、まだ信じられない。


 「本当にステラは生きているんですね?」


 「あぁ、君が悲しんでいるだろうから生きてる事を伝えてと言っていたよ」


 その言葉で僕の目から涙が溢れてくる。


 「そっか、生きていたんだ。良かった、本当に良かった」


 嬉しさのせいか涙が止まらない。


 気付くと、セシル、ローナ、ジアス、チェルシーも泣いている。


 しばらく泣いた後、落ち着きを取り戻した僕は伝えてくれたゼアルスさんに頭を下げる。

 

 「ゼアルスさんありがとうございます。最高のプレゼントです」

 

 「いやぁ、そうかい? そんなに喜んでくれたなら伝言役を引き受けて良かったよ」


 僕とゼアルスさんはお互いに笑顔になるけど、イルティミナ先生はすぐに伝えに来なかった事が気に入らないみたいでゼアルスさんを睨む。


 「ステラが生きている事を知っていたなら、ルートヴィヒが勝ったらプレゼントをあげるなんて言わないでさっさっと伝えに来ればよかったべさ!!」


 「う〜ん、プレゼントがあった方がやる気が出るかなと思って。私はルートヴィヒ君に勝ってもらいたかったからね」


「じゃあ何で世界最高議会でハルケーと戦うように仕向けたべさ!?」


 「それはルートヴィヒ君の強さが気になってね」


 そう言いながらゼアルスさんは僕にウインクする。


 「ゼアルスちゃんは相変わらずお茶目なのね」


 パラケルトさんは呆れた様子でゼアルスさんを見てる。


 その後、イルティミナ先生、パラケルトさん、ヨルファングさん、ゼアルスさんは四人で酒を酌み交わしていた。


 僕はステラが生きていた嬉しさを噛みしめながら就寝した。



 翌日、各国の王や代表や十二星王、ヨルバウム帝国の重鎮が集まる中、僕の十二星王入りを祝って式典が行われた。


 超大国であるヨルバウム帝国に十二星王が生まれたのは百二十年ぶりらしいので、派手に祝されるのもおかしくないのかもしれない。


 式典の後、街中でパレードが行われた。


 目立つのは少し恥ずかしかったけど、シュライゼムの人々は僕の十二星王入りをとても喜んでくれたのでそれは嬉しかった。


 パレードが終わった翌日に、各国の王や代表、十二星王達はシュライゼムから去っていった。


 だけど、ヨルファングさんはシュライゼムに残るらしい。


 ヨルファングさんが残ってくれる事を喜びつつ、アルジュナとの戦いに向けて修行をする。


 今この瞬間もステラはアルジュナを倒す為にダンジョンコアを集めているのだ。強くならなければ。


 ゼアルスさんの話によると、マドランガ共和国のダンジョンに行った後は南大陸に向かうと言っていたらしい。


 南大陸に会いに行こうか悩んだけど、すれ違う可能性もある。


 アルジュナを倒す事が目的ならいずれ会える。


 だからステラ、会える日までに僕はもっと強くなるよ。


 そして今度は君を必ず守る。

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