第十四話 世界最高議会②


 会議場に居る人々の視線を受けながら僕はヨルファングさんの発言に目を丸くする。


 「こいつの強さは認めるぜ。俺が保証する」


 ヨルファングさんが推挙した事に各国の王や代表が驚く中、イルティミナ先生やパラケルトさんも口を開く。


 「あたしもルートヴィヒの十二星王入りには賛成べさ」


 「うんうん、ルートヴィヒは光迅流十五代目当主だし、十二星王に入るだけの実績は十分なのね」


 十二星王の三人が僕を推挙した事で流れが変わる。


 「実績という点で言うのなら、ルートヴィヒ殿は、三年前の世界魔法学院大会にて個人戦、タッグ戦ともに優勝している。私もルートヴィヒ殿が十二星王入りするのは賛成だ」


 魔法大国ガラルホルンの代表も僕を推挙すると、マドランガ共和国の代表やミズホ王国の国王、ミュルベルト王国の国王も僕を推してくれた。


 ガゼット皇はまさか対抗馬が現れるとは思っていなかったのか焦りながら発言する。


 「ま、待ってくれ。空席になっている十二星王の座は我が国の弓王が長年座していたのだ。弓王を継ぐ者が座るべきだと思わないか?」


 「そうだな。弓王の名を継いで欲しいし、俺様はハルケーを推すぜ」


 ふんぞり返りながら座っている炎王がハルケーを推挙してガゼット皇は笑みを作る。


 だが、ガゼット皇の意見に反する意見があがる。


 「十二星王は強さが基準です。強ければ誰がなろうと構わないと思いますが?」


 シンセリア教国の教皇にして、十二星王の一人でもある『聖王』の発言にガゼット皇は悔しそうに顔を歪める。


 今の所僕を十二星王に推す声の方が多い。


 ガゼット皇が必死にハルケーを推す中、剣王ゼアルス·シルファリオが口を開く。


 「十二星王は強さが基準でしょ? なら二人を戦わせて勝った方を十二星王にすればいいと思うのだけれどどうでしょう?」


 剣王ゼアルスの意見に、先程まで焦っていたガゼット皇は笑みを浮かべる。


 「そうだな、それがいい。強い方が十二星王になるべきだ。勝てるなハルケー?」


 「はい、必ず勝ちます」


 ハルケーの返事に機嫌が良くなったガゼット皇は、僕とハルケーが戦う方向へと話を進めていく。


 各国の王や代表はこの提案に賛成し、十二星王の『槍王』、『闘王』、『断絶王』、『氷王』、『地王』もこの提案に賛成した。


 僕達の戦いが大多数の賛成で決まり、三日後にシュライゼムにある闘技場にて戦う事になった。


 その後は他の議題はあがらずに世界最高議会は終了した。


 今回の世界最高議会で決まった事は、対アルジュナ連合の結成と、新たな十二星王を決める戦いの二つ。


 僕達の戦いは、各国の王や代表、十二星王はもちろんの事、民衆達にも公開するらしい。


 より多くの証人が居たほうが後々揉めないかららしい。


 各国の王や代表、十二星王達が会議場から出ていく中、剣王ゼアルスが僕に近付いてきた。


 「やぁ、ルートヴィヒ君。君の事は応援しているよ。君が十二星王になれたなら、とびっきりのプレゼントをあげるから頑張ってね」


 そう言うと、剣王ゼアルスは爽やかに微笑みながら去っていく。


 何で突然話しかけてきたんだろう? 面識はない筈。


 それにプレゼント?


 剣王ゼアルスの言葉に疑問を感じていると、グルンガル陛下がクルトと共に近付いてきた。


 「ルートヴィヒ、三日後の戦いでそなたが勝つ事を応援しているぞ」


 「ありがとうございます。持てる限りの力を尽くそうと思います」


 「うむ、期待している」


 去っていくグルンガル陛下を追いかけるクルトがすれ違いざまに「頑張れよ」と言いながら僕の肩を軽く叩いていった。


 ガゼット皇と護衛のハルケーは去っていく時に僕を睨んでいた。


 今の内から闘志剥き出しだ。


 戦いまでは3日もある。


 それまでヨルファングさんやイルティミナ先生に稽古をつけてもらうとしよう。



 時は進み、ハルケーとの戦い前夜。


 ヨルファングさんやイルティミナ先生の他に、セシル、ナギさん、キルハ、チェルシーも稽古に付き合ってくれた。


 皆に感謝しながら自室にて愛剣のクラウソラスを磨いていると、ドアがノックされたので開けるとセシルが居た。


 「よう、ルゥ。ちょっと話してもいいか?」


 僕は頷きセシルを部屋へと入れる。


 セシルは座り、少しの間談笑した後、真剣な表情になる。


 「···ルゥは本当に強くなったよな。俺達の強さには前々から差はあったけど更に差は広がった。悔しい気持ちはあるけど、ルゥが世界魔法学院大会で優勝した時も嬉しかったし、光迅流十五代目当主になった時も嬉しかった。俺がこれだけ嬉しいんだからステラが光迅流の当主になった事を知ったら凄く喜んだと思う。十二星王になったら俺は喜ぶだろうし、ステラもきっと喜んでくれるに違いない。だから明日の戦い勝てよ。勝って俺とステラを喜ばせてくれ」


 セシルが拳を僕に突き出す。


 僕はその拳に拳を軽くぶつける。


 「ええ、必ず勝ちます。勝ってセシルとステラを喜ばせますから」

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