第十三話 世界最高議会①


 僕やセシル、ナギさん、キルハは、ヨルファングさんに世界最高議会が開催されるまでの間修行をつけてもらった。


 その間、ジアスとチェルシーはイルティミナ先生に修行をつけてもらい、パラケルトさんは部屋で何か作っているみたいだった。


 そしてとうとう世界最高議会が開かれる日がやってきた。


 世界最高議会に参加する王はどこも大国ばかり。


 中央大陸からは、ヨルバウム帝国とミュルベルト王国。


 北大陸からは、ガゼット皇国、ウルスラ連合国、シンセリア教国。


 西大陸からは、ガラルホルン、フランツェル王国、イルシュミット共和国、バルツァー王国。


 東大陸からは、マドランガ共和国、マルト王国、バイツァール王国。


 南大陸からはヤーバル王国、烈華民国。


 そして東方の島国ミズホ王国。


 この十五ヶ国が世界最高議会に参加する国々だ。


 そして十二星王も、イルティミナ先生、パラケルトさん、ヨルファングさんを除いた八人が城に集まっているらしい。


 セシルがヨルファングさんの護衛を務める事になったので、イルティミナ先生、パラケルトさん、ヨルファングさん、チェルシー、セシルと共に城へと向かう。


 城の門番引き止められ、冒険者カードを出して身分を証明していると、ヨルファングさんを気付いた門番の兵士は緊張で体を震わせている。


 無事に門を通過し、案内人の兵士について行くと、広い会議場に連れてこられた。


 既に各国の王や代表達、十二星王も揃っているようだ。


 イルティミナ先生、パラケルトさん、ヨルファングさんは案内された席に座り、チェルシーはイルティミナ先生の背後に立ち、僕はパラケルトさんの背後に立ち、セシルはヨルファングさんの背後に立った。


 全員が集まった事を確認して、今回の議長であるヨルバウム帝国皇帝グルンガル·ヨルバウム陛下が世界最高議会の開催を告げる。


 グルンガル陛下の後ろにはクルトが護衛として立っている。


 「今回、集まってもらったのは三ヶ月程前に空中に現れたアルジュナの件についてだ。アルジュナについて詳しく知らない者も居るだろうから話しておく」


 グルンガル陛下はユルゲイトの策謀で古代人の神アルジュナの封印が解かれた事を会議場に居る者達に説明した。


 「これが余の知る全てだ。信じられぬ者もいるかもしれないがこれが真実である。そしてこれからどうするべきかを今から話し合おうと思う」


 グルンガル陛下の言葉に真っ先に反応したのは、ガゼット皇国の皇――ビスティルク·ガゼット皇。


 「どうするべきかだと? そんなの戦争に決まっている。奴は世界に喧嘩を売り、我が国の英雄弓王カルフェド·イングラムを殺したのだぞ!! 到底許されるものではない!!」


 ガゼット皇は鼻息を荒くし、大声で叫ぶ。


 ガゼット皇の意見に頷くものもいたけど、マドランガ共和国代表が待ったをかける。


 「ガゼット皇の意見には賛成だが、その前に確認したい事がある。中央大陸の戦争でオルファースト王国側にガゼット皇国はついたが、裏にユルゲイトが居た事を知っていたのか?」


 マドランガ共和国代表の言葉にガゼット皇は動揺する。


 「も、もちろん知らなかった。あの戦争への参加は弓王カルフェドが強引に決めた事。ユルゲイトが裏で動いていた事を知っていれば参加などしなかった!!」


 ガゼット皇は汗を垂らしながら弁解する。


 「···ふむ、そうですか。ならばいいのですが、ガゼット皇国は未だにヨルバウム帝国に賠償金を払っていない。その件はどうするおつもりか?」


 「だ、だからあの戦争への参加はカルフェド·イングラムの独断で行われ、我が国は騙されたのだ。よって我が国も被害者である。賠償金は払うつもりだが、被害者である事も考慮した金額にして欲しい」


 マドランガ共和国代表に追い打ちをかけられて、汗をハンカチで拭きながらグルンガル陛下に頭を下げる。


 「ガゼット皇の意見はわかった。その辺も考慮し、賠償請求をさせてもらうとしよう。それよりもアルジュナをどうすべきかだ。余もガゼット皇の意見に賛成だ。世界中の国々が一丸となってアルジュナと戦うべきと思っている」


 グルンガル陛下の意見に他の国々の王や代表達も頷き、対アルジュナ連合を作り、共に戦う事になった。


 その際の連合の盟主国は、今回の世界最高議会の開催国であるヨルバウム帝国に決まった。


 ガゼット皇が自分の国を盟主国にしたそうにしていたが、その意見は通らなかった。


 対アルジュナ連合が作られる事が決まり、今回の世界最高議会は終わりを迎えるかと思ったが、ガゼット皇が別の議題を持ち出す。


 「我が国の英雄弓王が亡くなり、十二星王に空席が出来た。その空席を弓王の弟子であるこのハルケー·バイスで埋めたいと思っているのだが如何か?」


 ガゼット皇は護衛として後ろに控えていた茶髪の長髪を紐で束ねている青年を指差しながら告げる。


 十二星王を抱えるという事は国にとって大きな力となる。


 カルフェド·イングラムが亡くなって十二星王が居なくなったガゼット皇国としては新たな十二星王を抱えたいのだろう。


 それにハルケー·バイスは弓王の弟子にして、その弓の腕前は素晴らしく、いずれカルフェドをも超える逸材として他の国々にも知られている。


 十二星王に推してもおかしくない逸材である。


 他の国々も自分の国で十二星王を抱えたい気持ちはあるみたいだけど、十二星王に足る逸材が居ないみたいで、渋々とハルケーの十二星王入りを認める流れになっている。


 ハルケーが十二星王になる流れになってニヤけるガゼット皇だけど、ヨルファングさんがその流れを止める。


 「十二星王の空席を埋められる逸材なら俺も知っている」


 ヨルファングさんはそう言いながら僕を見つめる。


 「俺はヨルバウム帝国のルートヴィヒ·バンシールを推すぜ」


 ヨルファングさんの発言によって会議場の視線が僕に向けられた。

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