第九話 進化する能力


 私達は今、ガラルホルン首都オウデン近くにあるA級ダンジョンに向かっている。


私達についてきたパラケルトは楽しそうにスキップしている。

 これは遠足じゃないんだが。


 私はパラケルトを警戒しながら歩を進める。


 A級ダンジョンに着き、冒険者カードを門番に見せて中に入る。


 その際に確認したけど、パラケルトはSランク冒険者らしい。


 十二星王だからイルティミナと同じSSSランクだと思ってたけど違うみたいだ。


 足を踏み入れたこのA級ダンジョンは四十階層まであるみたい。


 S級ダンジョンを攻略した私達にとっては楽勝···だと思ってたけど、パラケルトが歩き疲れてルートヴィヒがおんぶする事になって戦力が減った。


 パラケルトは研究室にいつも籠もっているので、体力がないらしい。


 足手まといを抱えながらも私達は各階層のボスモンスターを倒していき、あっという間に四十階層のボスモンスターを倒した。


 パラケルトは戦闘には一切参加しなかった。何の為に杖を持ってきたのだろう。


 私達はサイの様なボスモンスターが落とした角をアイテム袋にしまって、ダンジョンコアのある場所まで向かう。


 ダンジョンコアを見つけ、吸収しようと手を伸ばしたけど、途中でパラケルトが待ったの声をかける。


 「ステラ氏が触る前に私達が先に触るのね」


 パラケルト言った通りにルートヴィヒ、セシル、イルティミナ、チェルシー、パラケルトがダンジョンコアに触るけど、やはり反応はない。


 パラケルトは結果に満足したのか、私に触るように促す。


 私が触ると、ダンジョンコアは光りだす。


 「おぉ〜!? 本当に反応したのね!?」


 目を輝かせて興奮しているパラケルトが気になりながらもダンジョンコアの声に耳を傾ける。


 『ダンジョンマスター、A級ダンジョンコアを確認しました。ダンジョンコアの統合を開始しますか?』


 『うん。このダンジョンは私の管理下に置いてね。名前はオウデンダンジョンにするわ』


 『了解しました。このダンジョンをオウデンダンジョンとしてダンジョンマスターの管理下に置きます。それでは統合を開始します』


 光っているA級ダンジョンコアが私の身体の中に入っていく。 


 その光景を興味津々な様子で凝視するパラケルト。


 「ほぇ〜!? 本当に吸収したのね!?」


 パラケルトに手をニギニギ触られながら新たな能力が開放されていないか確認する。


 『ダンジョンコア。A級ダンジョンコアを吸収した事によって新たな能力は開放されたの?』


 『イエス。ダンジョンの創造可能数が三つから五つに増え、管理下に置いてあるダンジョン間を転移で行き来する事が可能になりました』


 『管理下に置いてあるダンジョンの行き来? つまりここからヨルバウム帝国のGDダンジョンとシュライゼムダンジョンに転移出来るっていう事?』


 『イエス』


 マジで!? それが本当なら移動が時短出来る。めっちゃ便利じゃん!!


 私が喜んでいると、イルティミナが私の肩を叩く。


 「嬉しそうにしている所悪いけど、何がどうなったか説明してほしいべさ」


 あぁ、嬉しさのあまり皆を置いてけぼりにしてしまった。


 皆に管理下に置いてあるダンジョン間を行き来出来るようになったと伝えると皆驚いていたけど、特にパラケルトが目を輝かせている。


 「それが本当なら凄いのね!! 早速試してみるのね!!」


 パラケルトが私の身体を激しく揺さぶる。


 「そ、そんなに揺さぶらなくても私も試そうと思ってたから揺さぶるの止めて!!」


 パラケルトは揺さぶるのは止めて、私の身体に触る。皆も私の身体に触り、準備完了。


 行き先はシュライゼムダンジョンにしよう。


 『ダンジョンコア。シュライゼムダンジョンに私達を転移して』


 『了解しました。ダンジョンの入口に転移ししますか?』


 以前、ダンジョンの入口に転移したら、門番の兵士を驚かせたから一階転移する事にしよう。


 『ううん、シュライゼムダンジョンの一階に転移して』


 『了解しました。シュライゼムダンジョン一階へと転移を開始します』


 私の体だけじゃなく皆の身体も光り始め、目の前が一瞬真っ暗になり、気付くと見覚えのあるダンジョンの中に居た。


 パラケルトが転移に興奮している中、ここがシュライゼムダンジョンかどうかわからないので、一旦外に出ると、シュライゼムダンジョンで合っていたみたいだ。シュライゼムダンジョンの門番をしている兵士が不思議そうに私達を見て首を傾げているが、気にせずダンジョンの中へと戻る。


 「本当にシュライゼムダンジョンに転移したみたいべさね!!」


 パラケルトだけじゃなくイルティミナも興奮している。


 興奮して私の身体をベタベタと触るイルティミナとパラケルトに辟易しながらも、管理下に置いてあるダンジョン間を転移出来る事がわかったので、オウデンダンジョンの一階へと転移する。


 最初は転移の浮遊感に気持ち悪さを感じていたけど、それにも慣れてきた。


 オウデンダンジョンに戻って来た私達は外に出て、賢者の塔へと戻る事にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る