第八話 錬金王
私達は、サザランの町から魔導船に乗り込んで約三週間で魔導大国ガラルホルンの港町シュペッゼへと着いた。
港町シュペッゼで一泊してから魔導自動車へと乗り約二週間で王都オウデンに着いた。
イルティミナについて行くと、ガラルホルンで有名な賢者の塔が見えてきた。
どうやら目的地は賢者の塔らしい。
賢者の塔は、世界中から一流の魔法研究者達を集めて、様々な研究を行っている場所として有名だ。
ここには、あの錬金王パラケルト·スミスも居るらしい。
賢者の塔へと着いて中に入ると、受付があって、エスカレーターやエレベーターみたいな乗り物がある。乗り込んでいるのは白衣を来た人間ばかり。
私やセシル、ルートヴィヒは、いきなり文化水準が変わり、落ち着かないけど、イルティミナとチェルシーは賢者の塔によく来てるのか、迷わず進む。
イルティミナとチェルシーについて行きエレベーターみたいな乗り物に乗り込む。
行き先は最上階のボタンを押した。
数分後、エレベーターの扉が開く。
イルティミナ達について行き、ある部屋の前に着く。ドアに付いてあるボタンをいくつか押すとドアが横に開いた。
中は色んな機械でごちゃごちゃしている。
お世辞にも綺麗とは言えない。
そんな状態もお構いなしでイルティミナは奥へと進み、白い丸い物体の前で歩みを止める。
「パラケルト、お前はまたこんな所で寝てるべさか」
イルティミナが白い物体に声をかけ軽く突くと、もぞもぞと白い物体が動き、頭がひょこっと出てくる。白い物体の正体は、紺色の長髪をボサボサにした十代後半に見える女性だった。
イルティミナはこの人物をパラケルトと呼んだ。まさか、床で丸まっていたこの女性が錬金王!?
「ふぁ〜、もう朝なのね?」
「いやいや、もう昼べさ」
白衣を着ている女性は大きく欠伸した後、お腹が減っているのかお腹を大きく鳴らして悲しそうにお腹をさする。
イルティミナは溜息を吐きながら、アイテム袋から干し肉を取り出して、寝癖が凄い事になっている女性に渡す。
「イルちゃんありがとうなのね」
イルティミナから干し肉を受け取ると、リスの様にガジガジと干し肉を食べていく。
「パラケルト。食べながらでいいから聞くべさ」
イルティミナは私達の事と、戦争でユルゲイト·スペンサーと会った事と、私のダンジョンマスターの能力について話す。
干し肉を食べ終わったパラケルトは私達に視線を向ける。
「初めましてなのね、ステラにルートヴィヒにセシル。私はパラケルト·スミス。皆からは錬金王と呼ばれてるのね。それからチェルちゃん久しぶりなのね」
「···うん、久しぶり」
やはりこの女性が錬金王なのか。もしかして十二星王は変人が多いのか?
パラケルトを見つめていると視線がぶつかり、パラケルトが私に近づいてきてペタペタと私の身体を触り始める。
「ふ〜む。あの狂人ユルゲイトが作った人間? という事はホムンクルスなのね。でもあのユルゲイトが只のホムンクルスを作るとは考え難いのね。それにダンジョンマスター? う〜ん、凄く興味深いのね」
ペタペタと私を触りながら私の服を脱がそうとするパラケルト。
「ち、ちょっと何するのよ!!」
パラケルトの手を払う。
「痛いのね。ちょっと身体を見せて欲しいだけなのね」
パラケルトは手の指を動かしながらまた近付いてくる。
ひぃっ、気持ち悪い!!
私がパラケルトに怯えていると、イルティミナがパラケルトの頭にチョップを放つ。
「い、痛いのね、イルちゃん」
頭を擦るパラケルトを呆れた視線で見つめるイルティミナ。
「調べたい気持ちはわからんでもないべさ。でもここには男も居るべさ。いきなり服を脱がすのは駄目べさよ」
パラケルトは納得したのか、ルートヴィヒとセシルに目を瞑るように言う。
いやいや、脱がないから。
私は服を脱がせないように自分の身体を抱きしめながらパラケルトを睨む。
そんな私を見て残念そうにするパラケルト。
イルティミナはパラケルトを呆れた顔で見ながら私達に紹介してくれる。
「こいつがかの錬金王パラケルト·スミスべさ。多少残念な所もあるべさが、こいつは間違いなく天才べさ。この賢者の塔を建設したのもパラケルトだし、魔導船や魔導自動車を作ったのもパラケルトべさ。パラケルトならステラの事も何か分かるんじゃないかと思って会わせたかったべさ」
ほう? このアホの子イルティミナにツッコミをさせる程の残念な女性がこの塔や魔導船、魔導自動車を作ったのか。
確かに天才だ。だけどパラケルトは只の天才じゃない。恐らく···。
私が思案に耽っていると、いつの間にかパラケルトの顔が目の前に。
髪の毛と同じ紺色の瞳で私の顔を覗き込み、皆に聴こえない声で私に囁く。
私は驚いてパラケルトから離れる。
やっぱりこの人は!!
私が驚愕した顔で見つめているのもお構いなしでパラケルトは机に置いてある杖を持つ。
「ステラ氏達はこれからダンジョンに潜ろうとしているのね? なら私もついて行ってステラ氏の能力を見せてもらうのね」
私は、笑顔でダンジョンについてくると告げたパラケルトを只々見つめている事しかできなかった。
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