第五話 B級ダンジョンの復活


 私は試したい事があり、皆にお願いして約五日間、馬車に揺られ王都シュライゼムに帰ってきた。


 王都シュライゼムに戻ると、馬車を置いて、B級ダンジョンがあった場所へと向かう。


 イルティミナ、チェルシー、ルートヴィヒ、セシルもついて来た。


 B級ダンジョンがあった場所へと着いた。


 イルティミナが森を消滅させてから二年以上も経っているので、若木や草が生えている。


 私が試したい事はB級ダンジョンの復活だ。


 その為にダンジョンコアに話しかける。


 『ダンジョンコア。ダンジョンの創造でダンジョンを作る事が出来るんだよね?』


 『イエス。ダンジョンを創造しますか?』


 『うん、創造するよ』


 『了解しました。それではダンジョンの設定をしていきます。ダンジョンの等級はどうしますか?』


 『等級はB級で。というか、前ここにあったB級ダンジョンと全く同じダンジョンを作りたいんだけど出来る?』


 『可能です。ここにあったB級ダンジョンのデータは残っています。では以前のB級ダンジョンのデータを用いて創造を開始します。手を地面に触れて下さい』


 ダンジョンコアに言われた通りに地面に触れると、地面が光り始めて、地面が揺れ、地鳴りが起き始める。


 地面が粘土の様にグニャグニャと動き、以前見たB級ダンジョンと同じ入口が出来た。


 しばらくして揺れと地鳴りがおさまる。


 『ダンジョンの創造が終了しました。管理下に置く為のダンジョン名を設定してください』


 『じゃあ、シュライゼムダンジョンで』


 『了解しました。シュライゼムダンジョンの名でダンジョンマスターの管理下に置きました』


 よし、無事にB級ダンジョンが復活したぞ。


 「皆、B級ダンジョンが復活したよ」


 皆に伝えると呆然と事の成り行きを見ていたルートヴィヒ、セシルは呆気にとられている。


 イルティミナとチェルシーはダンジョンの創造を興奮しながら見つめ、ダンジョンに潜りたがっている。


 私もダンジョンが元通りか見てみたいので潜る事にした。


 中に入り、進むと剣と盾を持った骸骨のモンスターが現れた。


 聖属性魔法で倒し、先へと進む。


 十階層へと着いた。


 十階層の扉を開けると、見覚えのある斧を持った牛モンスターが居た。


 ミノタウロスを倒して、先へと進む。


 以前はショートカットしたので二十階層には行っていない。


 今回は前のダンジョンと同じか確かめるだけなので、さっさと三十階層に行きたい。


 前と同じ様に土魔法で穴を掘るかと考えていると、頭の中に声が響く。


 『ダンジョン最奥へと転移しますか?』


 『えっ? そんな事出来るの?』


 『イエス。管理下に置いているダンジョンは何階へでも転移可能です。最奥へと転移しますか?』


 『うん、お願い』


 皆に私に触れてもらい転移する。


 気付くと大きな扉の前に居た。


 イルティミナ達は驚いているけど、お構いなしに扉を開ける。すると、そこにはやはり見覚えのある黒いワイバーンが居た。


 向かってくるワイバーンを瞬殺し、部屋を確認する。


 うん、私が前に来たB級ダンジョンと出現するモンスターも地形も同じだ。


 同じである事が確認できたので、外へと転移する。


 B級ダンジョンを復活させる事が出来たので報告しに行くとしよう。


 王都シュライゼムへと戻り、冒険者ギルドへと入る。


 受付嬢さんにレドルフのおっちゃんを呼んでもらうようにお願いして、待つ事数分。


 二階からレドルフのおっちゃんが降りてきた。


 「デストロイヤー? お前達はコロラド山脈のS級ダンジョンを攻略しに行ったんじゃなかったか?」


 「それならもう攻略したわ」


 「なっ!? もう攻略したのか!? 随分と早いな。···ダンジョンは崩壊させなかっただろうな?」


 「ええ、大丈夫。それよりも聞いて。シュライゼムのB級ダンジョンを復活させたの!!」


 「···はっ? ···崩壊したB級ダンジョンをか?」


 レドルフのおっちゃんは混乱しているので、S級ダンジョンであった事とB級ダンジョンをどうやって復活させたか説明する。


 「ダンジョンコアを吸収してダンジョンを作れるようになったか。う〜む、とても信じられない話だが、イルティミナ殿達も見ているようだし本当みたいだな。わかった。俺はこれからB級ダンジョンが復活した事を皇帝陛下に伝えに行く。詳しく説明する必要があるので一緒についてきてくれ」


 「わかったわ」


 私達はレドルフのおっちゃんと共に城の謁見の間で皇帝陛下にB級ダンジョン復活を伝えた。


 事の経緯を伝えると、皇帝陛下からダンジョンが作れる事は秘密にするように言われた。


 ダンジョンが作れると知られれば他の国々から狙われる可能性もあるらしいからだ。


 それだけダンジョン創造の力は大きなものみたい。


 皇帝陛下との謁見を終えると、皇帝陛下の横に控えていたクルトが駆け寄ってきて久しぶりに色々と話した。


 少し見ない間に大人っぽくなった気がする。


 クルトと別れ、レドルフのおっちゃんと共に冒険者ギルドへと戻って来た。


 レドルフおっちゃんは私達を二階の執務室に通し、ソファーに座らせる。


 「···デストロイヤー。ダンジョンはいくつも作れるのか?」


 「ちょっと待って。確認するわ」


 『ダンジョンコア。ダンジョンはいくつでも作れるの?』


 『いえ、今の私のキャパシティでは残り三つのダンジョンを作るのが限界です。新たなダンジョンコアを吸収すればキャパシティも増えますが』


 なるほど。ダンジョンコアを吸収すればするほどダンジョンを作れるキャパシティは増えるのか。


 ダンジョンコアから聞いた事をレドルフおっちゃんに伝える。


 「今の所、ダンジョンは残り三つを作るのが限界みたい。もしかしてダンジョンを作って欲しいの? レドルフのおっちゃんには迷惑かけたから作ってもいいけど」


 「···いや、結構だ。下手にダンジョンを増やすと他国にお前の能力を勘づかれるかもしれん。それにダンジョンを増やす事で現状の経済バランスが崩れかねん。安易に増やすのは止めたほうがいいだろう」


 経済バランスを崩すかもしれないとは考えもつかなかった。気を付けよう。


 「うん、気を付けるよ。それとまた別のダンジョンへと潜りたいから近くのダンジョンを教えてくれない?」


 「近くのダンジョンか。そうだな···」


 レドルフおっちゃんが思案していると、イルティミナが口を開く。


 「その事で相談があるべさ」


 「相談?」


 「そうべさ。私とチェルシーがもうすぐガラルホルンへと旅立つ事は知っているべさね?」


 「うん、知っているけど。それがどうしたの?」


 「実はステラのダンジョンコアの力を見せたい奴がガラルホルンに居るべさ。だからそいつに会うついでにガラルホルンのダンジョンに潜るのはどうかと思ったんだけど、どうべさ?」


 ガラルホルンのダンジョンか。ダンジョンコアが手に入るのならどこでもいいし、私に会わせたい人っていうのも気になる。それにイルティミナやチェルシーと別れるのが寂しかったから、まだ一緒にいれるのは嬉しい。


 「うん、わかった。ガラルホルンについて行くよ。ルートヴィヒとセシルもそれでいい?」


 ルートヴィヒとセシルは頷き賛成してくれる。


 よし、次の目的地はガラルホルンだ。

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