第六話 VSクラーケン①


 現在、僕達は港町サザランに向けて馬車を走らせている。


 イルティミナ先生がガラルホルンの何処かに転移魔法陣を設置していれば話は早かったんだけど、転移魔法陣を設置していないらしく、正規ルートでガラルホルンに向かう為に、サザランへと向かっている。


 前にサザランに行った時は世界魔法学院大会に参加する際に、船に乗る為に訪れた。


 今回もガラルホルンに向かう為に船に乗る。


 ああ、久しぶりの船旅は想像するだけでワクワクするなぁ。


 だが、港町サザランに着いたら様子がおかしい。


 港に船がずらりと並んでいる。


 住民達の表情は暗いし、船は海に出ていない。何事だ?


 冒険者ギルドに行って聞いてみるとするか。


 港町サザランの冒険者ギルドに入ると、冒険者達や受付嬢も皆、重苦しい空気を漂わせている。


 何事かと受付嬢に聞いてみる。


 「実は今海にはAランクモンスターのクラーケンが大量発生しているんです。しかも上位種の一際大きいクラーケンも発見されています。上位種ですからSランクモンスターになります。クラーケンの数からしてSSランクのクエストになるんですが、受けてくれる人が誰も居なくて」


 なるほど。それでこの重苦しい雰囲気か。


 クラーケンが大量発生してるなら船は海に出れないもんな。


 このままじゃガラルホルンに行けるのがいつになるかわからない。


 よし、このクエストを受けよう。


 ステラ達を見ると、同じ事を考えていたみたいで皆頷く。


 「そのクエスト、僕達が引き受けます!!」


 「え!? 本当ですか!? ···すみません冒険者カードを見せてもらってもいいですか?」


 僕達は受付嬢に冒険者カードを渡す。


 「確認させて頂きます。···え!? 大賢者イルティミナ·ホルス様!? それに全員がS級ダンジョン踏破者!? し、少々お待ち下さい。ギ、ギルドマスターを呼んできます!!」


 慌てて奥の部屋へと入っていく受付嬢さん。


 数分後、筋肉質の妙齢の女性を引き連れて受付嬢さんが戻って来た。


 「待たせたね。で? 誰が大賢者様だい?」


「私べさ」


 イルティミナ先生が手を上げる。


 「···へ〜、あんたが大賢者様かい。随分と小さいんだね。私はこの港町サザランの冒険者ギルドのギルドマスターをしているミネルバだ。あんた達が難易度SSのクエストを引き受けてくれると聞いたけど本当かい?」


 イルティミナ先生が小さいと言われて憤慨しているのをなだめながら、会話を進める。


 「はい、僕達がクラーケン達を討伐します」


 「···ふ〜ん、SSSランク冒険者一人と、Aランク冒険者一人、B級冒険者一人、最低ランクのFランク冒険者が二人か。普通はFランク冒険者が二人もいる冒険者パーティーに任せないんだけど、あんた達はS級ダンジョンを踏破しているパーティーだ。大賢者イルティミナ·ホルス様も居るし、あんた達只者じゃないね?」


 僕達を見定めるかの様にじろじろと見つめてくるミネルバさん。


 「···よし、わかった。あんた達を信じてこのクエスト任せるよ!!」


 「引き受けると言った僕が言うのもなんですが、そんなすんなりと任せていいんですか?」


 「ははっ。私は自分の直感を信じていてね。あんた達なら倒してくれると私の直感が告げたのさ」


 勘で決めていいものではない気はするけど、任せてくれるんだから有り難い。


 早速僕達は海に向かおうとするけど、ミネルバさんが待ったをかける。


 「あんた達、海に出る為の船を持っていないだろう?」


 そういえばそうだ。誰かに船を出してもらわないといけない。


 でもこんな危険に巻き込む訳には···。


 悩んでいるとミネルバさんが僕の背中を叩く。


 「ははっ、心配するな。この私が船を出してやろうじゃないか!!」


 「ごほっごほっ、本当ですか? でもギルドマスター自らが出るなんて危険なんじゃ」


 僕の心配をよそに豪快に笑いながら僕の背中を叩く。い、痛い。


 「こう見えても元Aランク冒険者だよ、私は。それに町の危機にこそギルドマスターが出張らないとね」


 ミネルバさんは笑いながら冒険者ギルドから出ていく。


 ミネルバさんを追いかけると、ミネルバさんは港に浮かぶ一隻の船に乗っていた。


 「行くんだろ? さっさと乗りな」


 ミネルバさんに促されて船に乗り込む。


 中々丈夫そうな船だ。


 「それじゃあ、クラーケンどもが見つかった地点まで向かうよ!!」


 海に出て数分後、海が荒れだした。


 「そろそろクラーケンどもが現れるよ!! 準備しな!!」


 ミネルバさんの声で僕達は武器を構える。


 すると、海にいくつもの渦ができ、そこから大きなイカが現れる。


 これがクラーケン!! でかい!!


 渦から現れたクラーケン達の触腕が船に向かって伸びてくる。


 僕とセシルはその触腕を斬る。


 切断面から青い体液を出しながら苦しむ数匹のクラーケン。


 だけどクラーケンの数は少なくても三十体以上はいる。


 長い戦いになりそうだ。

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