第四話 目覚め始める力
黄金のドラゴンを倒し、私達は一息つく。
ドラゴンは黄金の剣を残して光の粒子となって消えた。
四十階層のボスから得た韋駄天の靴(イルティミナが名付けた)はセシルが装備したので、黄金の剣――クラウソラス(これもイルティミナが名付けた)はルートヴィヒが使う事になった。
お目当てのダンジョンコアを探すと、前のB級ダンジョンと同じで、奥の壁の真ん中に透明の石が埋め込まれている。
ダンジョンコアに触ると光り出し、声が聞こえてきた。
『ダンジョンマスターを認識しました。現在、貴方様はB級ダンジョンコアをお持ちです。S級ダンジョンコアと統合しますか?』
前に聴こえた機械音声の様な声だ。
だけど、他の皆は声に反応しない。
「皆、さっきの声聴こえなかった?」
「声? 何も聴こえなかったけど」
ルートヴィヒの言葉に他の皆も頷く。
もしかしてさっきの声は私にしか聴こえない?
『イエス。私の声はダンジョンマスターである貴方様にしか聴こえません。S級ダンジョンコアを統合しますか?』
私の心の声に返事が返ってきた。
なら伝えたい事を念じてみる。
『S級ダンジョンコアを統合したらこのダンジョンは崩壊するの?』
『イエス。S級ダンジョンコアを失ったこのダンジョンは崩壊します』
まずいな。B級ダンジョンが崩壊した時も大騒ぎになったし、次は牢屋に入れられるかもしれない。
『それは困るんだけど。S級ダンジョンコアを統合してもダンジョンが崩壊しない様には出来ないの?』
『可能です。S級ダンジョンコアを統合すれば、ダンジョンマスターは、ダンジョン創造とダンジョン管理の能力が使える様になります。このダンジョンに名前をつけ、ダンジョンマスターのダンジョンとして管理するならば、崩壊するのを防げます』
『そうすればS級ダンジョンコアをゲットできて、ダンジョンも崩壊せずに済むのね?』
『イエス』
良かった。それならレドルフのおっちゃんにも怒られずに済みそうだ。
『そっか。ならこのダンジョンの名前は黄金のドラゴンにちなんで、GDダンジョンにするわ』
『かしこまりました。S級ダンジョンコアの吸収と同時にこのGDダンジョンをダンジョンマスターの管理下に置きます』
頭の中から響く声の言った通りにS級ダンジョンコアが私の身体の中に吸収されていく。
その光景を見て皆が驚く。
そりゃあ、皆からしたらいきなり透明の石が私の身体の中に入っていくのだから驚くよね。
『ダンジョンコアの統合並びにGDダンジョンを管理下に置きました』
ダンジョンコアは私の中に吸収されたけど、この前みたいにダンジョンは崩壊しない。
ダンジョンコアの声の言ったダンジョンの管理がどういった意味かはわからないけど、崩壊しなかったので良かった。
「さっきから上の空だけど大丈夫?」
ルートヴィヒが心配して私の顔を覗き込む。
ダンジョンコアと話をしていて皆を置き去りにしちゃってた。
皆にダンジョンコアの声が私だけに聴こえる事と、ダンジョンコアとの会話を伝えた。
「ステラがダンジョンマスターで、ダンジョンの創造と管理が出来る···べさか。う〜ん、よく分からないけど、ダンジョンは崩壊せずに済んだべさね?」
「うん、大丈夫みたい」
「それならば良しべさ。ダンジョンコアを得る事は出来たみたいだし、ダンジョンから出るべさ」
イルティミナの言葉で皆上の階層へと戻ろうとしているけど、私はB級ダンジョンでの転移を思い出した。
『ねぇ、ダンジョンコア。前回ダンジョンから外に転移出来たけど、それって今回も出来る?』
『可能です。外に転移しますか?』
『待って。転移は私だけじゃなく皆も一緒に出来るの?』
『ダンジョンマスターの身体に触れている者ならば一緒に転移可能です』
やった。いちいち来た道を戻らずに済む。
「皆、今から外に転移するから私の身体に触れて」
皆、訳がわからないまま言われた通りに私の身体に触れる。
『ダンジョンコア、外に転移して』
『了解しました。外に転移します』
私の体だけじゃなく皆の身体も光り始めたと思ったら、目の前が一瞬真っ暗になり、気付くとダンジョンの外に居た。
よし、無事に転移出来たみたいだ。
私は上手くいって喜んでいたけど、皆は突然外に転移して混乱している。
「こ、これは転移魔法!? しかもあたしが使う転移魔法よりも高度な転移術式べさ!!」
イルティミナが興奮し、私の身体をベタベタ触る。
やめろ、お前に触られても嬉しくない。
イルティミナの手を払いのける。
イルティミナの名残惜しそうな視線を無視して、私は考える。
ダンジョンの創造と管理。
ダンジョンコアは、私がこの能力が使えるようになったと言っていた。
創造と言うからには、おそらくダンジョンが作れるのであろう。
あれ? ···もしかして私、便利な能力が使えるようになっちゃったんじゃない?
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