第五話 様々な思惑
――マルタ視点。
私は魔法以外に興味ない。だから魔法以外の授業は苦痛だ。まぁ国語の授業は魔導書を読むのに役立つから良しとする。
だから魔法以外の授業で成績が悪くても気にしない。
魔法さえ成績が良ければそれでいい。
火、水、風、土属性の魔法適性を持つ私は将来宮廷魔導師長も夢じゃないとベルグア先生が言っていた。
それに既に四つの属性すべての初級魔法が使える。レベッカもダスマンも適正属性は一つしかない。魔法ではフェブレン家で一番の成長株だった。ルートヴィヒとステラが来るまでは。
ルートヴィヒは魔法適性一つとはいえ珍しい聖属性の適性を持つ。
全ての魔法を究めたい私にとって聖属性を使えるルートヴィヒは大変羨ましい。
なのに更に上を行く奴が現れた。そうステラだ。
なんと六属性全ての適性があったのだ。
う、羨ましすぎる。六属性全ての適性がある人なんて世界には十二星王じゅうにせいおうにして『大賢者』の称号を持つイルティミナ·ホルス様しかいない。
十二星王は世界中の王が参加する世界最高議会によって決められる世界最強の十二人だ。
十二星王での異名は『魔導女王』。
魔法の深淵に触れたとも言われる方だ。そんな方と同じ六属性なんて羨ましすぎる。
···ちょっと待てよ。イルティミナ様と同じ六属性の適性を持つステラなら魔法の深淵を覗く事もできるのでは? なら仲良くしておけば私もおこぼれで魔法の深淵を覗けるかも。
よし、今の内にステラの世話をして優しいお姉さんポジションを築くぞ!!
◆◆◆
――シェイド視点。
俺っちは所謂孤児だ。孤児院の先生が光迅流の使い手だったから物心つく頃から剣を振っていた。
知らぬ間に神童と呼ばれるようになった。それを聞きつけたアルゴ様が俺っちをこのフェブレン邸に呼んでくれた。
更に剣の腕前は上達した。アルゴ様がヨルバウム帝国の帝都にある光迅流本山に行けるように手配してくれた。本山での修業は厳しかったけど、当主自ら修業をつけてくれる事もあってやりがいがあった。
気付けば十八歳になって免許皆伝をもらい師範の資格を得た。
周囲からは未来の剣聖だともてはやされていたけど、自分の剣の限界が視えてしまった。同時に自分が剣をそこまで好きじゃない事にも気付いてしまった。なので、本山を降りてフェブレン邸に戻り剣術指南役を勤めるようになった。
剣術指南役を務めて七年。初めて天才というものを知った。一を教えれば十を知るその才能を見た時、俺っちは鳥肌が立った。
天才、神童ともてはやされた俺っちだけど、自分が井の中の蛙だと知った。
ああ、これが本当の天才なのだと。でもそこにショックは無く、むしろ感動があった。
自分次第でこの天才を鈍らな剣にも名剣にも変えられるのだ。
元々人に剣を教えるのは好きだったけど、この時程教える喜びに身を震わせた事はなかった。
そして決めた。この非凡な才能を持つルートヴィヒに俺っちの持てる全てを教え込むと。
◆◆◆
――アルゴ視点。
ルートヴィヒとステラを連れてきて正解だった。
ルートヴィヒは全ての授業で優秀だと各教師から聴いている。
だが特に剣の腕前は天賦の才を持っていたらしい。
あの天才と称されたシェイドが自分よりも才能があると言ったのだから。
それだけでなく、魔法でも希少な聖属性魔法の適正を持っていた。
だが最も驚いたのは赤子のステラが六属性全ての魔法の適性を持っていた事だ。
正直言い方は悪いがステラは優秀なルートヴィヒのおまけの様な存在だった。
蓋を開けてみればステラも天賦の才を持っていた。
他の修練生も優秀な子達ばかりだが、この二人は未来のフェブレン家のみならずヨルバウム帝国の為になるかもしれない。
大切に育てなくては。
それと孫のセシルの様子が最近おかしい。
どうもルートヴィヒに嫉妬しているようだ。
同い年だから友になってくれればと思っていたのだが、どうも雲行きが怪しい。
あれだけの才能を持った人間が同い年で存在するのだ。嫉妬するのもしょうがないのかもしれないが、願わくば仲良くやってほしいものだ。
◆◆◆
――セシル視点。
俺はルートヴィヒが嫌いだ。
元々修練生の奴らは気に食わなかったけど、ルートヴィヒは特に気に入らない。
お祖父様に気に入られ、おれに勉学を教えている奴らも口を開くとルートヴィヒが凄い、ルートヴィヒのようになりなさいと言う。気に入らない。
魔法の先生であるベルグアも、水と風の魔法適正を持つ俺をべた褒めしていたのに、今ではルートヴィヒとその妹のステラに夢中のようだ。気に入らない。
剣術指南役のシェイドも、俺の修練の時間に奴の事を褒めた。
「一度ルートヴィヒと手合わせをしてみては? ためになりますよ」と言われた。気に食わない。
最近はお父様とお母様もルートヴィヒを褒める。気に入らない。
極めつけはお祖父様にルートヴィヒと仲良くなさいと言われた。気に入らない。
俺は知っている。あいつがスラム生まれだと。使用人達が陰で話しているのを聴いた。
なぜ次期伯爵の俺がちょっと優秀なだけのスラム生まれの人間と仲良くしないといけないのだ。
だからあいつと会うたびに嫌みを言っているのだが、いつもニコニコと笑い受け流す。
気に食わない。俺は眼中にないというあの態度が。
あいつが慌てふためいて困った姿が見たい。
なのであいつの大事なものを隠す事にする。
せいぜい慌てふためくがいい!
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