第40話 歩く暴走少女

出会った日からアリエスのアイリスを真衣と追い回す日々が始まった。

しかし修は風邪が治らず調べてみたら、インフルエンザだったらしく、アイリスの脅威にさらされずすんだのが救いだった。

アリエスは登下校中のアイリスを人気のない学校の近くで待ち伏せ、何度もその培われた体術で襲って来た。

そのたびにアイリスもアリエスを拘束し捕まえようとしたが、アリエスは引き際をよくわかっており、何度も逃げられてしまった。


「流石に連日は骨が折れますね」


「ちょっと付き合わされ続けてるアタシの身にもなってよ!なんで私がアンタらの戦いに付き合わなきゃならないのよ!」


「ではそう言ったらどうです?付き合いきれないから一人で奇襲してと」


教室でアイリスがそう言うと、真衣は難しい顔をして眉間にしわを寄せた。


「そう簡単な話じゃないのよ…。これは部隊での親友の愛をかけた戦いだもの」


「愛ですか…私も好きでカプリコルヌスを拘束したわけじゃないのですが…。というより、闇の暗殺部隊の中に親友なんて作っていいんですか?お母様に怒られたりしません?」


「…まぁ、なりゆきだから?」


アイリスが深いため息をつくと、真衣は焦りながら言った。


「なっ…何よ!いいじゃない別に!アタシの勝手でしょう!?」


「…深入りすると良くないと、忠告はしましたよ」


アイリスがそう言うと、そのアイリスを鋭い視線で見つめる少女が外にいた。

もちろんそれはアリエスだった。


「ちょっと…いる?もしかして…。」


話していりのがバレないように、真衣がカーテンのある所からそう尋ねると、アイリスは首を縦に振った。


「何でよりによってカプリコルヌスかなぁ…!もっといい男いっぱい居るじゃん!」


真衣が全て嫌になってそう言うと、アイリスはまた、ため息をついた。


「私はわかる気がしますよ、アリエスという彼女の気持ちが」


「え?何でよ?」


「人に惹かれる時は理屈じゃないのだと思います。何かその人のためにしたいと思うのも、彼女が暴走するのも、人に感情があるからかと」


アイリスがアリエスを見ると、アリエスはジェスチャーで殺してやると激情をあらわにした。

それを見たアイリスの顔を見て、真衣は何か悟った顔をし言った。


「何となく何を見たか想像つくわ…アンタと真逆で感情豊かでしょあの子?坂で転がり出したらもう止まらない、石みたいな子なのよ」


「なるほど…それはいい例えですね」


「感心してる場合じゃないわよ?狙われてるのアンタなんだから」


真衣はそう言うと、手だけカーテンから出し、鏡を使ってアリエスを見た。

アリエスは相変わらずアイリスをものすごい顔で睨みつけていた。

それを見て二人は、がっくりと肩を落とした。

また下校時に激闘がまっているであろうと確信して。


***


そして下校の時間となった。

アイリスを真衣が尾行して来たというポーズを二人で取ると、アリエスは何も疑わずに二人の前に躍り出て来た。


「アンタを絶対に許さない!カプリコルヌスを返しなさいよ!」


アリエスがそう言いながら、ナイフを投げて来ると、アイリスはそれを全て銃で撃ち落とした。

しかしアリエスはダッシュでアイリスの懐に入り込むと、狂気をおびた笑顔で言った。


「もらったー!」


アリエスがそう言ってアイリスの脇腹を暗器で殴り、肋骨を折ろうとしたが、そのあと間合いをとったアリエスの顔はさえなかった。


…この感触、入ってない。


アリエスはそう思いながらアイリスを見ると、アイリスは脇腹を軽くおさえながら服の下の防弾チョッキを見せた。


「今のは危なかった…これのおかげで助かりましたよ」


アリエスはそれを聞いてまた激しく怒った顔を見せて、アイリスに言った。


「そんな物を学校に着てくるなんて、日本の学校もおかしいわね」


…いや、こんなの着てくるのロボ子だけだから!


真衣は心の中でそう思いながら黙っていた。

そしてアイリスはアリエスの様子をあまり見ないまま、思い出したように言った。


「これは貴女の大好きなカプリコルヌスに習って着たのですよ?彼はこれを着ているからと過信していましたが…。」


その話はもちろんアリエスの逆鱗に触れ、あまりに怒り過ぎた彼女はもう笑ってしまい、そして言った。


「ふふふ!よくその口で彼のコードネームを言えたわね!」


アリエスは隠し持っていたナイフを沢山出し、アイリスに投げた。


「ちょっと!アタシまで殺す気!?」


アイリスの後方からやり取りを見ていた真衣にもナイフが飛んできたが、真衣はそれを回避した。


「ヴィルゴ!遊んでないで手伝って!今日こそこの女を地獄に送るんだから!」


…嫌われたものですね。


アイリスはそう思いながら、アリエスの後方を見た。

そこにはケガをした様子の福地と、そんな福地に肩をかす荒井がいた。


「…丁度いいですね、私こそ今日は貴女を捕縛させて頂きます」


アイリスがそう言うと、アリエスは口角をつり上げて笑った。


…どうなっちゃうのよこの2人!?


真衣はハラハラしながらその様子をアリエスの手伝いをするフリをしながら見守った。

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ロボ的な彼女 雪兎 @yukito0219

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