第31話 救出まで
アクアリウスに指定された廃ビルの近くにアイリス達が到着すると、ドローンの映像を見ている修と昭子は息を呑んだ。
「着いたみたいね…。」
「萩原…無事だといいけど…。」
そう言いながら修と昭子は、熱探知機で人が廃ビルに4人いるのを確認した。
「アイリス、中に4人いる…!」
修が作りつけのマイクにそう呼びかけると、アイリス達が着けていたイアホンに繋がりアイリスも制服のジャケットにつけたマイクに話しかけた。
「了解です、これから真衣に先に入ってもらって私達3人はビルの裏側からアプローチしてみます」
「そっか…気をつけてな!」
話が終わると皆頷き合い、真衣は正面から堂々と、アイリス達は裏の窓から入る事になった。
幸いアイリス達が入る所は誰も見ておらず、すんなり入る事が出来た。
***
その頃、暗殺部隊の3人組は。
「ところで、このおっさんどうするよ?ヴィルゴの前で痛めつけるのか?」
タウルスがそう質問すると、アクアリウスが萩原を見ながら言った。
「うーん…それもいいかもしれないけど、もっといい事を思いついちゃった」
「なんだい?もっといい事って?」
レオがそう尋ねると、アクアリウスは楽しそうに話し始めた。
「私がヴィルゴに渡した毒薬を飲ませるの!使わないなんてもったいなくって!」
「あれ?梶原修に飲ませるんじゃないの?」
レオが笑いながらそう言うと、アクアリウスはもう待てないといった様子だった。
「今すぐ効能を確認したいの!今日それがわかると思って二人についてきたんだから!誰が死ぬかは問題じゃないのよ!」
「じゃあヴィルゴが裏切り者だった時は親子仲良く毒薬を飲んでもらおうか」
サラリとレオがそう言うと、アクアリウスはうっとりとしたが、タウルスは少し二人とは違ったようだった。
…昨日まで仲間だと思っていた奴を簡単に殺すのか…こいつらも他のみんなもどうかしてるな。
タウルスがそう考えていたのがわかったのか、レオはタウルスに言った。
「タウルス…君は情にあつい。それはいいところだとは思うけど暗殺者には向かないな。もっと暗殺者は無情でないと、この先苦労するよ?」
「…あぁ、そうかもな」
タウルスはそう言うと、時計を見ながら真衣が来るのを待った。
3人とも黙り、それぞれ時間を潰していた所に真衣がやって来た。
「遅かったわねヴィルゴ。本当にお父さんの手足をもぎ取ろうかと思ったわよ?」
「…別にオヤジのためだけに来たわけじゃないし!それで?そっちの要件は?」
「ヴィルゴ、お前が任務を受けて暗殺した奴ら、生きてるんじゃないか?」
タウルスがそう尋ねると、真衣は表情には出さなかったがかなり動揺した。
その様子をドローンから見ていた昭子が顔をおさえてた。
「ヤバイわね本当に…。」
「あの子の言った通り本当に生きてるって事ですか?FBIが上手く逃したならどこからその情報を彼らは…。」
「そうね…どうして知っているのか、もう少し話を聞きましょう」
そう昭子が言うと、修も頷いて黙って画面を見つめた。
「この前、ハッキングしてFBIのファイルを覗き見してね…。なぜかお前が担当したターゲットをみんな警護対象にしていた。その経緯を見たかったがそれを見てすぐにハッキングに気づかれて追い出されてしまった。だからお前に直接聞く、お前、スパイとかじゃないよな?」
「もちろんよ、そんなわけないじゃない」
真衣が冷静を装ってそう言うと、3人は真衣の動揺を見破れなかった。
「そう…変なこと聞いて悪かったわね。でもなんで今日は梶原修に毒薬を使わなかったの?」
「警護のガードがかたくてね…あの女マジでロボじゃね?」
真衣がそう言うと、3人は何のことかという顔で黙った。
「…いやね!あの女は学校じゃロボ子って呼ばれてんのよ!」
慌てて真衣がそう言うと、3人はやっと納得した様子でため息をついた。
「…さて、それじゃどうするこのおっさん?やっぱりヴィルゴの親だし殺しちゃまずいか?」
「私は別に居てもいなくてもいい人だけど死なれるのはね…。」
真衣がそう言うと、アクアリウスが目を輝かせながら真衣の服を掴み言った。
「じゃあ死なない程度に毒薬を飲ませるのは構わないかしら?」
「…は?」
真衣は何とも言えない表情で驚くと、アクアリウスはニコニコしながら言った。
「居てもいなくてもいいならもし死んでもそんなに気にしないでしょ?いいじゃない!ダメ!?」
「いやあの…それは…。」
「いいわよね!?」
やばい方向に話が行っているのを確認して、アイリス達が予定通り動いた。
まずは灯りを銃で打って消すと、暗闇でも動ける温原センサーのついたゴーグルをし、バタバタと音を立てて萩原を奪還した。
「誰だ!?」
タウルスがそう言うと、レオがスマホで灯りをつけた。
「やっぱり君か…噂をすればだね」
レオがそう言うと、アイリスが萩原の前に立ち、ゴーグルを外した。
「警護対象の大事な運転手を連れ去るなんて、喧嘩をうってるんですか?」
アイリスの剣幕に少し驚きながら、レオは答えた。
「そんなつもりじゃなかったけど、仲間も居るみたいだから今日は大人しく撤収するよ。またねアイリス」
レオがそう言うと、福地と荒井が萩原の無事を確認する中、真衣も連れて暗殺者の3人はその場を後にした。
「よかった…。」
その様子を見て昭子が目頭をおさえると、修が何も言わずにハンカチを差し出していた。
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