第30話 奪還作戦
「別にいいけど、なんで私を読んだわけ?」
真衣が不機嫌にそう言うと、アイリスはホワイトボードにマジックで作戦内容を書き始めた。
「真衣を尾行していた三人がおそらく萩原さんの居場所を知っているでしょう。そこで私と福地さんと荒井さんで真衣が呼び出されるのを見計らって場所を特定し乗り込んで行って奪還しようと思います」
「はぁ?何言ってるの?呼び出されるって何?何で呼び出されるってわかるのよ?」
真衣がそう尋ねると、アイリスは真衣に向き直って言った。
「萩原さんが捕まったのはおそらく真衣の父親だからでしょう。真衣に連絡がくると思うのは彼らが真衣がここに来た時点で真衣を見失ったからです。そうすると、せっかく捕まえた萩原さんが何の役にも立ちませんし、もちろん真衣の行動を監視出来ません。そうなると必ず彼らは真衣を呼び出すはずです。萩原さんは真衣がスパイかそうでないか、何らかの確認をする上で利用されるでしょう。そこで真衣にお願いがあります」
「なっ…何よ?」
真衣がのけぞりながらそう言うと、アイリスはホワイトボードに書いたものを消しながら言った。
「出来るだけ彼らの注意を引いてください。それだけでいいです。あとは何かあった時のために昭子さんとオサはここでスタンバイしていてもらえれば…。」
「わかった!ただ、ドローンをテルマに飛ばしてもらってもいい?」
修がそう尋ねると、アイリスは少し考え込んだが、グーサインをした。
「よかった!これでみんなの事見守れますよ副長官さん!」
「あら…そうなの?」
昭子はブラウン親子のアジトのハイテクさをまだわかっていないらしく、反応が薄かった。
しかしテルマが画面を光らせて自動的にモニターを立ち上げると、興味を持ったように近づいた。
「このモニターで見守れ流って事?」
「はい、そうです。テルマと申します。初めまして昭子さん」
テルマがそう声をかけると、昭子は驚きながら二歩ほど画面から下がった。
「何!?これ喋るの!?」
真衣も驚きながらそう言うと、なぜか修が得意げに説明を始めた。
「そうだよ!テルマはAIで何でも知ってるし、すごく頼りになるんだ!ゲームも強いんだよ!」
「オサ…またテルマにゲームさせたんですか?」
アイリスが腕組みしながらそう言うと、修はやばいと思いながら口笛を吹いて誤魔化した。
「困った人ですね。まぁ少しくらいは目をつぶりましょう…。」
「やった!よかったなテルマ!」
「はい、修」
そんかやり取りをしていると、真衣の携帯にタウルスから電話がかかって来た。
「うそ…本当に電話来た!ヤバ!」
「私達の存在に気づかれないようにしてくださいね!」
「わっ…わかってるわよもう!」
そう言いながら、真衣は一度気持ちを落ち着かせてからみんなに聞こえるようにスピーカーにして電話に出た。
「何?私忙しいんだけど?」
「そう言わないでよヴィルゴ、私達は貴女の大事なお父様を預かってるんだから」
「その声は…アクアリウス?」
そう尋ねると、男達の笑い声が聞こえてきた。
それで相手もスピーカーを使っているのがわかった。
「アクアリウス、預かってるって聞こえたけど、何かしたの?」
「そうね、大丈夫。ちょっと眠ってもらってるだけよ。貴女は私が渡した小瓶も使わずに今どこにいるの?出来れば学校の近くの廃ビルに来てほしいんだけど?」
「…いいわ、てか私には他に選択権は無いんでしょ?」
「わかってるなら早く来てね、じゃないとお父様の体が五体満足でなくなるかもよ?」
そう言うと、アクアリウスは電話を切った。
「不味いわね、このままじゃ真衣の正体もバレてしまうかもしれないわ」
昭子がそう言うと、アイリスが銃を腰に隠し持ち、ナイフなども数本スカートの下の太ももに隠した。
「準備出来たので行きましょう。萩原さんが心配です」
「当たり前の様に銃刀法違反しますね…頼りになりますが」
荒井がそう言うと、福地も車のキーをポケットから出した。
「車は回すから足は大丈夫だ。必ず救い出そう!」
福地がそう言うと、アイリスと真衣、そして福地と荒井は顔を見合わせて頷くと、アジトから駆け出して行った。
「できる限りサポートしましょう!テルマ、ドローン飛ばして!」
「了解しました」
修と昭子はモニターの前に座ると、アジトから一足遅くドローンが飛び出し、アイリス達が乗る車を2機が追いかけた。
「なるほど…設備がいいわね。かなりいいサポートが出来そうだわ」
昭子がそう言って笑うと、修は昭子を気づかいながら言った。
「ご主人心配ですね…きっとアイリスが何とかしてくれますからね!」
「ありがとう…貴方は彼女を信頼しているのね」
「はい。アイリスは出来ない事は絶対に口にしません。だから今回も絶対に大丈夫です!」
「そう…私も貴方くらい主人に信じていてもらえたらいいのだけど…。」
そう言うと、少し昭子の表情は曇ったが、すぐに真面目な顔でモニターと睨みあった。
そんな昭子を心配しながら、修もモニターを見つめていた。
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