第28話 毒薬
廃工場の中で黄道十二宮隊の子供達が集まると、何やら話し合っていた。
「ヴィルゴ、お前学校に潜入したらしいな。何かわかったかあの女について?」
タウルスがそう尋ねると、真衣は皆の注目を浴びながら答えた。
「はぁ?なんで私がアンタに現状を報告しなくちゃいけないのよ?」
「…。」
真衣の返答にタウルスは顔を片手で覆うと、他の皆もため息をついた。
「なっ…何よ!アタシの獲物なんだから別にいいでしょ!?」
「よく無いんだなそれが…梶原修は俺らが結成されて以来なかった暗殺失敗を重ねてるターゲットだ。あまりにも守ってるあの子が手強いからこうして皆集うまで話が大きくなったんだから、ちゃんと報告してもらわないと」
キャンディーを舐めながらレオがそう言うと、真衣は赤くなりちょっとしおらしく言った。
「そう…レオ君がそう言うなら…。」
真衣はそう言うと、手帳を取り出し今まで見聞きした事を読み上げた。
「敵はアイリス・ブラウン、ロボットのような片言の日本語を話し、成績も優秀なため、ロボ子と呼ばれている。梶原修の通学に毎日付き添い、側を離れないため隙が無い。今んとこ、こんなもんよ?」
「…もっと何かなかったのか?潜入したんだろ?」
タウルスがそう言うと、嫌そうな顔をしながら真衣は答えた。
「仕方ないでしょ!まだ潜入したてなんだから!…そうだよねレオ君!」
真衣がそう話をふると、レオは笑いながら言った。
「あの子の名前が知れただけで俺は満足さ。次の情報に期待してるよ」
「そうだよね!ありがとうレオ君!」
真衣がそう話すと、他のメンバーはあからさまにため息をついた。
そんな中、一人真剣そうに考え込んでいたメンバーがいた。
「ヴィルゴ、新しい毒薬を作ったんだけど使えないかしら?」
「流石アクアリウス!どれどれ見せて!」
真衣がコードネーム、アクアリウスにそう言うと、アクアリウスは皆に見えるように小瓶に入った毒薬を見せた。
「まだ試作品だけど、一滴で致死量になるはずよ。上手に使ってちょうだい」
「はーい!ありがとう!」
毒薬を受け取りながら軽くそう言う真衣を見て、皆少し不安を抱いていた。
真衣だけが今後の事を気楽に考えていた。
***
翌日、真衣がちゃんとやっているかどうか、タウルス、アクアリウス、レオが見張っていた。
「学校っていうのは楽しそうでいいね、君もそう思うだろ、アクアリウス?」
「レオ…真面目にやりなさい」
「おー怖い怖い…はーい」
アクアリウスとタウルスは真面目に真衣が失敗しないかどうかを見守っていた。
いや、監視していたともいえるかもしれない。
「どうもあのヴィルゴって子はきな臭い…本当に暗殺したのかどうか、確認出来た事が一度もないんだもの」
「その点については俺もアクアリウスと同意見だ。アイツはなんだか嘘っぽい」
タウルスがそう言うと、レオはキャンディを噛みながら真衣を見た。
「確かに…確かめてみるのもいいかもねー。」
校舎の中の真衣は、何とか修に近づこうとしているようだった。
それを見ながら三人は何か計画を立てているようだった。
***
「ゲッ…。」
放課後、修とアイリスにしつこく付き纏っていた真衣が萩原の顔を見た途端にそうもらした。
「真衣!?」
「オヤジ…今日も送り迎えするんだ?」
「もちろんだよ、これがお父さんの仕事だからね」
萩原がそう言うと、真衣はげんなりした顔をしながらうなだれた。
しかし修から予想外の言葉が飛び出した。
「萩原、今日はアイリスの家で訓練するから歩いて行くよ。帰っていいぞ」
「…坊ちゃま!?いやしかし…それでは私が奥様に叱られてしまいます!」
「大丈夫だよ、母さんには俺から言ってやるしアイリスがついてるんだから」
「そうですか…?」
萩原はそう言うと、渋々と引き下がった。
「じゃあ私もついて行っていい?」
「ダメです」
真衣の提案をサラリと断ると、アイリスと修は仲良く走って行ってしまった。
「何よもう!」
「真衣…父さんと帰るか?」
「いいわよもう!ほっといて!」
真衣はプリプリ怒りながら帰って行った。
「真衣…。」
その時、萩原の肩を叩く者がいた。
「はい、何でしょう…?」
***
「あー!疲れたー!」
一通りの訓練が終わり、修が倒れ込むと、アイリスは涼しい顔でスポーツドリンクを手渡した。
「こんなのはまだまだ序の口ですよ?」
「えぇ!?」
修がオーバーリヤクションをすると、アイリスは少し笑った。
そんなアイリスを見て、修は顔を少し赤らめた。
「どうしましたオサ?」
「いや…何でもないよ」
そんな事をしていると、テルマが何かを察知し言った。
「侵入者です!何者かがこちらに向かっています!」
「何だって!?」
アイリスが素早く銃を取り構えると、修も素早く起き上がって侵入者の顔を見た。
「…萩原昭子…さんですね?」
アイリスがそう言うと、昭子は軍服の様な格好で言った。
「私の旦那が姿を消したの、もしかしたらここかと思ってね」
そう言うと昭子は銃を構えて警戒するアイリスを見て笑った。
「なぜここがわかったのですか?貴女は何者なんです?」
そう尋ねるアイリスを見ながら、昭子は微笑していた。
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