第27話 敵か味方か


結局、何も有益な情報は得られないまま、萩原と真衣、昭子はファミレスを出て真衣と昭子はホテルへ帰るようだった。


「どうしますかアイリス?」


「あの母親と真衣を追います。見失わないようにドローンでテルマも追跡してください」


アイリスは人混みにまぎれ、真衣と昭子の後を追った。


「…真衣、先に帰ってなさい」


「…?わかった」


真衣と昭子が別れると、テルマに指示を仰がれた。


「どうしますかアイリス?」


「テルマは真衣を追って!私は母親を追う!」


急に早足になった昭子を、アイリスが追うと、昭子は路地に入り込み、アイリスも入ろうとすると、待ち伏せされていた。


「こんにちは、お嬢さん」


昭子が腕組みをして壁にもたれかかりそう言うと、アイリスはやられたと思った。


「こんにちは…昭子さんでしたか?貴女は何者ですか?」


「ただのキャリアウーマンよ。今はね…。」


明らかに一般人には無いオーラを出す昭子に、アイリスは警戒しながら近づいた。


「娘さんも貴女も、こちら側の人間ですよね?何をしに日本に来たのですか?答えによっては貴女方と戦わなければなりません」


「…そうでしょうね」


昭子はタバコに火をつけると、一服しながら言った。


「…そうね、出来れば穏便にすませたいのよこちらも。あの人は何も知らないし…。」


「ならなぜ…!?」


問いただそうとした時、自分にドローンがついているのに気づき、テルマに言った。


「テルマ!真衣の方を追ってって言ったのに、何で私を追尾してるの!?」


「はい、アイリス。それは修が…。」 


テルマが説明をしようとした時、昭子はタバコの火を消すと、アイリスに後ろで手を振り言った。


「お取り込み中のようね、じゃあさようならお嬢さん…。」


「あっ…待ってください!」


アイリスが追いかけようとした時、そこにはもう昭子の姿は無かった。


***


「で、何故私に何も言わずにドローンを動かしたんです!?」


「…申し訳ありませんアイリス。問題無いと思いまして…。」


「問題無いかを判断するのは私であって、貴女ではありませんよテルマ!」


テルマが怒られているのを見て、暫く静かに聞いていた修が声を上げた。


「待ってよアイリス!テルマは悪くない!俺がアイリスの方も見れるようにしてって頼んだんだ。悪いのは俺だよ!」


「いいえ!連絡を怠るのは怠慢としか言いようがありません!テルマはこのような失敗を何度も正して育てて来たAIです。こんな失敗するはずがないんです!」


そう言うアイリスに、その場の皆黙り、気持ちを少し落ち着かせた。

そして暫くして口を開いたのはテルマだった。


「申し訳ありませんアイリス…私は修とゲームをしたり、話したりしているうちに自分が任務を遂行するためのAIである事を忘れてました…。」


テルマがそう言うと、修がテルマを庇うように言った。


「待ってくれ!悪いのは俺なんだ!まずテルマに頼んだのは俺だし、AIだって人間に触れて人間っぽくなる事もいい事だと思うんだ!」


「オサ…普通のAIならそうかもしれませんがテルマは私達の仕事をサポートするためにプログラミングされたAIです。任務に関わる以上、こんな事が起こってはいけないのですよ?」


「でも…。」


修は納得いかないという顔で、考え込んでしまった。


「…ありがとう修。アイリス、本当に申し訳ありませんでした。これからも貴女の目となり足となれるように励みますので、どうか今回の事、許して頂けたらと思います」


「…そうですね。私こそいつも私のサポートをしてくれる貴女に甘えていたかもしれない。テルマ、貴女を許します。だから私の暴言も許してほしい」


「…ありがとう、アイリス」


テルマはそう言うと、機能を停止させた。


「じゃあ俺もこれで…。」


そう言って修が一人でアジトから帰ろうとすると、アイリスがその手を掴み言った。


「まだ貴方とは話す事があります!勝手にテルマとゲームしていた事や、テルマに指示をしていた事、詳しく聞かせてもらいますよ!」


アイリスは顔は笑っていたが目は笑っていなかった。


「ごめんごめん!俺が悪かったってアイリス!」


「許しません!バツとして腕立て100回!その後私とランニングですからね!」


「えぇー!?」


修は嫌そうな声を出してはいたが、アイリスとランニングデートが出来ると内心嬉しそうだった。


***


その頃ホテルでは。


「お母さん、なんで私だけ先に帰したの?何かヤボ用?」


「…こっちの事はいいわ。貴女は自分の任務に集中なさい」


「…はーい」


そう言って真衣が自分の部屋に帰って行くと、昭子はイヤリングを外しながら思った。


…あの人との子にあまり危険な仕事をさせたくないけれど、私の子ですからね…。


そう思いながら、真衣がまだ小さい頃撮影した家族写真を眺めた。

しかしそこへ電話がかかって来た。


「はい、もしもし…えぇ、計画は滞りなく…了解しました」


昭子は電話を切ると、眺めていた家族写真を下に伏せた。







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