第25話 転校生
いつものようにアイリスと修が萩原の運転で学校に着くと、何やら人だかりが出来ていた。
「何だろう?…って!萩原!?」
萩原が珍しく焦った様子で人混みの中に入って行くと、ある少女の腕を掴んだ。
「真衣!」
萩原がそう呼び止めると、一部の髪をピンクに染めた髪の長い少女はバツが悪そうに笑いながら言った。
「お父さん…手、痛いよ」
真衣と呼ばれた少女がそう言うと、萩原はゆっくり手を離した。
少女は萩原真衣(ハギワラ・マイ)萩原の実の娘だった。
「萩原!この子が前に話してた子?あんまり似て無いんだな…。」
「ハッ!?オヤジと似てるなんてマジ勘弁…。いえ…勘弁して欲しいですね…。」
清楚そうに装っていた少女の豹変に、その場の皆驚き、それまで可愛いと取り囲んでいた男達が一気にはけていった。
「えっ!?ちょっとみんな!なんなのよもう!オヤジのせいだからね…!」
そう父親を睨みつけて真衣が行ってしまうと、萩原は酷く落ち込んだ。
「はぁ…真衣、あんなに大きくなってたんだな…。」
「…ちょっとキツそうだけど元気そうな子でよかったじゃないか萩原。なっ!アイリス!」
「…そうですね」
アイリスはそう言うと、真衣の手に注目していた。
彼女の手には銃を打つ人に出来るガンダコのあとがハッキリとあった。
***
「なぁ…あの子」
「あぁ、見た目は可愛いんだけどな」
真衣はクラスが同じになり、自己紹介をして席に着いたまではよかったのだが、滲み出る言葉遣いの悪さからクラスの、特に男子達から遠巻きにされていた。
「ちょっとなんなのよ!言いたい事があるならはっきり言ったらどうなの!?」
真衣がそう言うと、ザワザワしていたクラスの皆一瞬だけ黙り、すぐにまたザワザワと話し始めた。
それを見た真衣は深くため息をつくと、ドカンと足を組んで座り込んだ。
「真衣さんでしたっけ?後ろの席の佐藤茜です。
こっちはロボ子さん…じゃなくてアイリス・ブラウンさんです。仲良くしてくださいね?」
「…よろしく」
「…。」
柔らかい雰囲気の茜に対し、ぶっきらぼうに真衣がそう言うと、アイリスは黙って頭を下げた。
アイリスがその時見ていたのは鞄の膨らみで、ちょうど銃が入るくらいのものと見てとれた。
それを真衣も見ていた様子で、ぶっきらぼうにアイリスに話しかけてきた。
「何?アタシの鞄がそんなに珍しい?」
「いえ、可愛らしい鞄だと思って…。」
「そう?可愛いのは見た目だけで危ない物が入ってるかもよ?」
真衣はそう意地悪そうに笑うと、頬杖をついた。
そしてしばらく作り笑顔で笑い合う二人を茜が困ったように見比べながら言った。
「じゃあ…真衣さん、帰国子女なんですよね?困った事があったら何でも言ってね。私達、力になるから」
「…私達、ですか?」
アイリスが茜に腕を掴まれて少し困惑したようにそう言うと、真衣は意地悪そうに笑いながら言った。
「あれ?貴女は私の力になるのイヤなんだ?」
「…そうでもありませんが」
「ちょっと!どっちよ!別にそんな困ってないからいいけどさ!」
真衣はそう言うと、サッサと次の授業のある教室へ移動して行った。
「私達も行きましょう、ロボ子さん」
「そうですね…。」
アイリスは移動教室の時も、修達の側を離れなかった。
それを真衣は笑みをもらしながら見ていた。
***
休み時間になり、真衣が席を立つと、アイリスは修達に危険がないのを確認しながら後を追った。
追いかけて行った先で、真衣が体育館裏で電話をしているのを見かけると、アイリスはこっそり内容を聞いていた。
「えぇ、簡単に入り込めたわよ。まぁ任せておきなさいって、このコードネーム、ヴィルゴにね!」
…ヴィルゴ、やはり暗殺部隊の一人だったみたいですね。
アイリスは腕時計を触ると、AIのテルマに繋がった。
「はい、なんでしょうアイリス?」
「小型のドローンを飛ばしてください、マークしてほしい人物がいます」
「了解です」
テルマがアジトからドローンを飛ばすと、アイリスは真衣の情報と写真をテルマに送った。
「アイリス、この人物の事をインターポールに伝えますか?」
「いえ、確信はありますが情報が少なすぎます。でも写真くらいは送ってもいいかもしれませんね」
「了解です。あとアイリス、修にもドローンをつけますか?」
「出来れば!何かあったらすぐに知らせるように!」
「了解しました」
修の所にもドローンが飛ばされると、アイリスは少しホッとした様に息を吐いた。
***
「何だあれ?」
修は小形のドローンをすぐ見つけると、変顔をしてからカーテンを閉めた。
「…面白い方ですね」
テルマはアジトでそう言うと、画像を温度探知に切り替え、修の様子を見守った。
***
もう一つのドローンは気配をさっちされてはいるが、上手く隠れて真衣をマークしていた。
「ん?何か飛んでるような…?」
2階の廊下を歩いている真衣を追いかけていたテルマのドローンは、窓と壁の僅かな死角に入り込み、発見されるのを避けていた。
「…まっいっか!」
真衣は何事もなかったかのようにスキップして廊下を歩いて行った。
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