第22話 追跡
花火が打ち上げられて暫く、修と見上げていたアイリスだったが、急に誰かの鋭い視線を感じ、パーティー会場を見回した。
「…どうしたアイリス?」
「動かないで、そのまま花火を見ていて…!」
「…?」
アイリスは足に括り付けていた銃を取ると、プレゼントの箱に隠して会場の人混みの中に入って行った。
「失礼…ちょっと失礼します」
人混みを抜けると、怪しい中東系のターバンをつけた人物が、アイリスを見て人気の無い方へと逃げて行った。
「…待ちなさい!」
アイリスが人混みを抜けて銃を手に男を追いかけると、男が発砲して来た。
アイリスもすかさず発砲し、それは男の腕をかすめた。
男は唸り声を上げながら、アイリスを睨みつけ、車に乗った。
アイリスは車の前に立ち発砲したが、車は止まらずに走って来たので、アイリスは右に飛んだ。
そこへ白いバイクが無人で走って来て、アイリスはそれに飛び乗った。
「ありがとうテルマ!」
「はいアイリス。安全運転で」
男の車を追いかけて、アイリスはバイクで梶原邸を飛び出すと、ドレスをひらめかせながら、前の車に発砲した。
前の車も負けじと発砲し、アイリスは運転をテルマに任せ、射撃に集中した。
「アイリス、この先は使われていない工場地帯です」
…哲士が言っていた彼らのアジト!?
「このまま逃げ切る気でせか…舐められたものです!」
そう言ってアイリスがまた狙いを定めて銃を構えた時だった。
後ろから追いかけてくるバイクに気づいたのは。
「…あれは…!」
「アイリス、少し揺れます」
テルマがそう言って銃撃を避けるために左に避けると、後続のバイクは路地を回って行った。
…あの先は…待ち伏せするつもりですか!?
そう思いながら、アイリスはまた銃撃を受け今度は右にテルマが避けた。
その時アイリスは運転を手動に切り替え、後続バイクを追って路地に入った。
そして男の車を待ち構えていたバイクに乗った少年に、アイリスは叫んだ。
「オサ!これを使って!」
アイリスが路地裏から先回りした修に銃を投げると、修は迷わずそれを受け取り男の車のタイヤを撃った。
タイヤを撃たれた車はバランスを崩し、その場にあった電柱に激突した。
アイリスは修の隣にバイクをつけると、フルフェイスのヘルメットを取った修の頬を叩いた。
「オサ!なんて無茶を!狙われているのは貴方なのですよ!?」
「わかってる、でもアイリスだけに任せて守られてばかりじゃ嫌だったんだ」
そう言うと、修はビンタされた頬に触れながらアイリスを見つめた。
「私は嫌ですよ、父上のようにオサがベットに横たわっているのを見るのは…。」
そう言って修の肩に顔を埋めると、修はそんなアイリスの顔を片手で抱きしめた。
「大丈夫、そんな事にならないように鍛えてもらってるんだから。俺、がんばるよ」
アイリスは頷くと、少し落ち着くまで、二人共そのままそこで立ち尽くしていた。
そんな中、男が車から脱出し、逃げて行くのを見ていたテルマは、バイクから小さい発信機を撃ち、男の動きを追った。
***
落ち着いたアイリスは自分の乗って来たバイクにまたがると、修が話しかけてきた。
「さっきの男、何者なんだろう?」
「おそらく暗殺部隊の仲間の一人でしょう」
「えっ!?何これ!?」
いきなりテルマに話しかけられて修が驚くと、アイリスもテルマも笑った。
「初めまして修。人工AIのテルマです」
「はっ…初めましてテルマ…。」
しどろもどろに修がそう言うと、テルマはまた笑った。
「何か困った時、アジトやアイリスの側で呼んで下さい。可能な限り力になります」
「それはご親切にどうも…。アイリスはいつもこんなハイテクなバイクに乗ってたんだな…。」
そう言いながら修はしげしげと、アイリスのバイクを見つめた。
「テルマ、あの男はどこへ?」
「はいアイリス、追跡していた男はこの近くで姿を消しました。発信機に気がついたか、追跡を遮断する施設に入ったか、さだかではありません」
「そう…。」
…哲士が言っていた通りなら、やはりこの近くに彼らのアジトが…でも今乗り込むのは時期尚早ですね。
「帰りましょうオサ」
「えっ?もういいの?あれだけ追い回したのに?」
「今回で少しは牽制になったでしょう。それにパーティーに主役がいないのはいけません」
「えぇ〜戻るの?」
修が肩を落とすと、アイリスは静かに笑った。
梶原邸ではまだ花火が打ち上がっているようだった。
***
男がアジトに戻ると、レオが寝そべってキャンディーを舐めながら言った。
「タウルス、遅かったね。どうだった梶原邸は?」
タウルスと呼ばれた少年はターバンを床に投げつけると、怒りをあらわに言った。
「なんだあの女とターゲットは!?銃を所持してるなんて聞いてないぞ!」
「あーやっぱ銃持ってたんだあの子。可愛いかったろ?」
「とんでもない!あれは女豹だ!危険極まりない!」
「あー…。」
レオが苦笑すると、タウルスは怒りながら奥へ消えた。
その後もレオはまた可笑しそうに笑っていた。
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