第18話 奇襲
ジョージとレオが話をしている間に、アイリスはこっそり倉庫の上に登っていた。
「俺さ、この梶原修よりゲミニを捕まえたアンタらに興味があってね!…どれくらいの実力があるのか、試させてもらってもいいかな?サシで勝負しようぜおっさん」
そう笑いながら、レオは銃をジョージが隠れている扉に向けた。
ジョージは苦笑いをすると、レオに向かって言った。
「人質をとるとはフェアじゃないな。しかもアンタは嘘つきときた。こっちが出た途端に発砲するんだろ?勝負はおあずけだ」
「わかってないなおっさん。アンタに断る権利なんて無いんだぜ、預かってるこの男の命がおしかったら出て来て俺と勝負しろ」
そう言ってレオは修の首に手を回すと銃を修につきつけた。
その様子を鏡で見ていたジョージは舌打ちすると、銃を腰にしまい出て行った。
「おっさん、やっと顔がよくわかるぜ」
「随分俺たちに興味津々じゃないか、そんなにゲミニとかいったあの姉弟と仲がよかったのかな?」
ジョージがそう言うと、レオはたちまち不機嫌になり言った。
「あんな弱小姉弟と仲良くなんかねーよ。ただ同じ暗殺部隊に所属してる奴らが捕まったとあったら気分が悪い、それだけだ」
「それだけか?あの姉ちゃん可愛かったし惚れてたとかじゃねーの?」
「バカな…あんな女に興味はねーよ」
…嘘ではないらしいな。
ジョージはそう思うと、手を上げながらレオと修にゆっくり近づいた。
「それよりアンタんとこのこの前、俺に向かって撃って来た子はどうした?俺としてはあっちの方がタイプなんだけどな?」
…アイリスの事か?
朦朧とした意識の中で修らそう思うと、少し抵抗する仕草を見せた。
「おっと?梶原修、アンタもあの子にご執心か?こりゃどこにいるのか教えてもらわねーとな!?」
「おいおい…勝負するんじゃなかったか?」
呆れた様にジョージはそう言うと、背中側の腰に隠した銃を手にするタイミングをはかっていた。
「勝負はするぜぃ、その前に答えてもらおうか…あの子はどこだ?」
「ここです!」
アイリスの声がした方を皆向くと、アイリスは倉庫の上に垂れ下がっていた鎖に掴まり、皆の頭上を空を切りながら移動してレオに向かって発砲し、レオの持っていた銃を弾き飛ばした。
それと同時にジョージも隠していた銃を取り、レオに駆け寄ると、銃を突きつけた。
「形勢逆転だな。お前と同じ暗殺部隊の奴らの事でも話してもらおうか?…裏で手引きしている人物の事もな」
ジョージがそう言うと、レオは声を出して笑いながらジョージを見上げた。
「何が可笑しい?」
「アンタわかってないな!誰が一人で来たと言った?」
その瞬間、銃声を聞きアイリスが振り向くと、修を庇う形でジョージが撃たれたようだった。
「父上!?」
撃ったのは倉庫の入り口にいる人物で、顔は逆光で見えなかった。
アイリスが頭に血を登らせながらも冷静に倉庫の入り口にいる人物に向け発砲すると、レオと共にその人物は逃げて行った。
「またね!可愛い子ちゃん!」
レオがそう笑いながら出て行くと、アイリスは怒りに震えた。
そしてすぐに下に降り、ジョージと修の容態を見た。
***
それから銃を隠して救急車を呼び、修とジョージは病院に運び込まれた。
二人の容態を心配しながら、待合室で知らせを待っていると、梶原節子も秘書と共に駆けつけて来た。
「クライアントの梶原節子さんですね?」
「…そう言う貴女はブラウンさんの娘さんね?」
お互いそう確かめながら少しの間沈黙が流れた。
「ブラウンさんが撃たれて、息子が意識混濁状態と聞きました。ブラウンさんのことだから息子を守っての負傷だと思いますが、このまま息子の護衛は無理ですよね?もちろん今までの分の報酬は払いますので、お大事にしてください」
そう言って立ち去ろうとする節子をアイリスは止めると、秘書の野沢が声を上げた。
「君ね!梶原先生は忙しいんだぞ!」
「構わないわ野沢…まだ何か用かしら?」
節子が優しくそう話しかけると、アイリスは真剣に話した。
「父がこんな目にあったんです、このままでは私も引き下がるわけにはいきません!これまで通りオサの護衛を私に続けさせてはもらえませんでしょうか?」
「…。」
節子はアイリスに向き直ると、優しく話しかけた。
「お父様に話は聞いていましたよ。貴女もプロですものね。お父様があの様な状態になってしまうほど怖い世界ですよ…むしろ頼んでもいい
のですか?」
アイリスは決意した目で節子を見ると、ハキハキと答えた。
「はい!必ず息子さんを守ってみせます!」
「…君ね!」
野沢が何か言おうとしたが、それを静止し節子は言った。
「では任せます、えっと…。」
「アイリスです、アイリス・ブラウン」
「アイリスさんですね、頼みましたよ」
節子はそう言うと、野沢と共に修の病室の方へ向かった。
「よろしいのですか総理、あの様な娘に息子さんを任せて?」
「いいのですよ野沢…あの子、いい目をしていました」
そう言って節子は笑うと、野沢は納得がいかないという顔でアイリスを振り返って見た。
アイリスは修の事もそうだが、処置中のジョージの心配をしていた。
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