第17話 迎え撃つには
アジトに戻ったアイリスとジョージは、何とも言い難い顔をしながら深刻に考えていた。
「また同じ手で狙われたんだ。近いうちに梶原修の命を狙いに来るぞ」
「父上、私は理解しがたいです。あの暗殺者笑っていました。どうすれば人を殺す時、あんなに愉快に笑えるのでしょう?」
アイリスの言葉に、ジョージは少し間をおいてから答えた。
「残念な事に悪い事をしてそれを楽しいと思う輩がこの世にはいるんだアイリス。奴らにはまともな理屈は通用しない。迎え撃つにはこの道で積み上げて来た腕と経験を信じる以外ない」
「…腕と経験が足りなければ…。」
「死ぬだけだ。だが俺は自分の腕も、お前の腕も信じている。あんな小僧にはまだまだ俺はやられない。話はここまでだ、もう今日は梶原修を襲いはしないだろう。風呂に入って寝なさい」
「…了解です」
アイリスはそう答えると、脱衣場の方へ消えた。
「もしもの時は…。」
ジョージはそれだけ言うと銃を構えた。
その構えた瞳には覚悟が滲み出ていた。
***
暗殺者の次の動きがあったのはジョージの誕生日だった。
休みの日なので、アイリスは早起きし、ジョージの好きな物ばかりを指を絆創膏だらけにしながら作っていた。
「おはようアイリス」
「おはようございます父上」
アイリスがそう言ってキッチンから出て来ると、ジョージは梶原邸に秘密裏に設置した幾つものカメラ画像と睨み合った。
まるで警備の監視室のような部屋で、ジョージは朝食を用意してもらった。
「テルマ、何か動きはあったか?」
「はいジョージ、梶原邸に何か紙のような物が投げ込まれました。それから数時間後に梶原修がそれを読んで自宅から抜け出そうとしています」
AIのテルマは問題の映像を映したカメラをピックアップしながら説明した。
そこには修が手紙を読んだ後、警備の目を盗み塀を越えようとする画像がリアルタイムで映っていた。
「まずいな…アイリス行くぞ!」
「はい父上!」
アイリスはエプロンを外すと、迷彩柄の軍服姿で銃を手に取った。
ジョージは吸っていたタバコの火を消し、アイリスの作ったサンドイッチを加えながらアイリスと共に外に出た。
「飛ばすぞ!」
「はい!」
AIテルマが修の動向をドローンで追い、リアルタイムでそれを映しながらナビをし、ジョージはノンストップで車を走らせた。
修は港の方へ向かっているようだった。
***
数分前の梶原邸。
「何だこれ!?」
放り投げられた紙を広げて読むと、修は少し声を上げて内容に驚きを隠せなかった。
"梶原修、お前の大事な人を預かった。返して欲しければ港まで一人で来い"
修はその新聞を切り取って使ったような脅迫状を手に自宅の塀を乗り越えた。
…大事な人って誰だ?母さんはあり得ない、友達だとすると海斗か茜…まさかアイリス!?
そんな事を考えながら修は港まで走った。
***
修が港に着くと、薄暗い倉庫の中に足を踏み入れた。
「誰か…いるのか?」
修がそう言うと、静寂だけがその場を包んだ。
しかし、少ししてからコツコツと足音が暗闇から近づいて来た。
そこに居たのは黄道十二宮隊のコードネーム、レオだった。
「梶原修だったっけ?ハロー、俺レオっていいます、ヨロシクね〜。」
チャラチャラした挨拶をレオが終えると、修は真面目な顔で尋ねた。
「あの手紙、君が作ったのか?どういうつもりなんだ!?誰を預かったって言うんだよ!?」
修がそう言うと、レオはキャンディーをなめながら、笑い言った。
「あれ〜本気にしちゃった?誰も預かってないよ〜これから君を預かるけどね…。」
「それってどういう…!?」
いきなり何かスプレーを顔にかけられた修は、咳き込みながらその場に倒れた。
その様子をレオは不気味に笑いながら見ていた。
***
港に到着したジョージとアイリスは、まわりを警戒し、銃を構えながら倉庫の中を覗いた。
「静かですね…。」
「あぁ、不気味なくらいな」
ジョージが銃を構えながら倉庫を見渡すと、暗闇に誰か居るのが見えた。
そこで威嚇射撃を受け、ジョージとアイリスは一度顔を引っ込むと、銃の安全装置を外した。
すると倉庫の中から愉快そうに笑う声が聞こえてきた。
「よう!ゲミニ達を捕らえた奴らだろ?一度ゆっくり話がしたかったんだよね!大丈夫出て来なよ、もう撃たないし梶原修も無事だからさ!」
そう言って愉快そうに椅子に縛りつけた修の肩にもたれかかると、顔に銃をつけた。
「話がしたかったね…こっちは話す事なんて無いが!?」
ジョージが倉庫を覗かずにそう言うと、高らかに笑う声がまた聞こえてきた。
「そうかいそうかいおっさん!でも出会いが悪かった分よく話し合った方がいいと思うんだ。実は俺、梶原修にはあんまり興味ないんだよね…興味があるのはおっさん達の戦闘力で!」
話している途中でジョージが倉庫を覗くと、再び威嚇射撃が飛んで来た。
「…撃たないって言っておいて撃つとは関心せんな!」
ジョージがそう言うと、またゲラゲラ笑う声が倉庫内に響いた。
「ごめんごめん!俺ちょいちょい嘘つくんだよね!おっさん暗殺者の言葉信じるなんて人が良すぎじゃね?」
…ふざけてやがる。
ジョージはそう思いながら、目で合図するアイリスに一度頷き、再び銃を構えた。
修は意識を朦朧とさせながら、そのやり取りを聞いていた。
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