第14話 インターポール
ゲミニの双子を捕らえたジョージは、二人をアジトに連れ帰り、鎖で繋いで尋問していた。
「もう一度聞くが、誰に雇われた?」
その問いにゲミニの双子はそっぽを向くと貝のように口を閉した。
「父上、どうですか?」
そこへアイリスが帰って来ると、ゲミニの姉が声を上げた。
「あぁ!アンタずっと邪魔な所に居た女じゃない!」
「姉さん、声がデカいよ」
やっと口を開いた二人を見てジョージは笑うと、椅子に逆に座りながら再び問いかけた。
「喋れるじゃねーか。コードネーム、ゲミニだったな。悪い様にはしないから雇い主の名前を吐いちまうな」
ジョージの問いかけに、二人は顔を見合わせると渋々口を開いた。
「私達はただ狙撃を命じられただけで雇い主の事なんて聞いてないのよ」
「僕らは暗殺部隊でもそこまで偉いわけじゃないからいつも誰もやりたがらない仕事を押しつけられていて…。」
「なるほど、梶原修暗殺は誰もやりたがらなかったワケだな」
二人が頷くと、ジョージはタバコに火をつけ一服した。
「問題はお前達をどうするかだな」
「父上、何者かがアジトに…。」
アイリスがそう言うと、AIテルマの防犯システムが作動した。
「侵入者です!侵入者です!防犯システムを稼働してもよろしいですか?」
「…まてテルマ、彼らは客人だ。お通ししろ」
「…かしこまりましたジョージ」
AIテルマがそう言うと、アイリスがすかさずジョージを問い詰めた。
「客人とはどういう事です?こんな時間にですか?」
「あぁ、一度人目のつかない場所で話をと思っていたんだ」
ジョージはそう言い、立ち上がると、テルマに通された者達が部屋に入って来た。
「そこを動くな、インターポールの福地だ」
「荒井です」
福地健人(フクチ・ケント)と荒井佳穂(アライ・カホ)はそう言うと、銃を構えながらジョージに言った。
「黄道十二宮隊のゲミニを捕らえたのは貴方ですね?」
「如何にも」
「なぜアジトの場所を明かしてまで我々に連絡を?」
「そりゃ、引き取ってほしいからさ」
「何だって!?」
ジョージと福地が話している中、ゲミニの姉が割り込むように声を上げた。
「私たちを売る気!?そんな事したら絶対に許さないわよ!」
「姉さん落ち着いて…。」
弟がなだめるが、姉の怒りはどんどんヒートアップしていった。
「呪ってやる!化て出てやる!」
そんな姉に、アイリスが何か注射すると、姉は先程とは別人のように大人しくなった。
「何?私どうしたのぉ?」
「鎮静剤を打っただけだ、二人にはインターポールのお偉いさん達の所に行ってもらう。ですよね父上」
「そうだな、そのかわり…。」
ジョージは何かが書かれたホワイトボードを引っ張ってくると、それをインターポールの二人に見せた。
「これは…梶原総理と息子さんの交友関係と知人達ですか?」
「そうだ、息子さんの殺害予告をした奴がいてな。何かわかったら情報が欲しいんだがどうだ?これからも暗殺部隊を捕まえたらアンタらに引き渡すって条件で」
ジョージがそう提案すると、福地と荒井は顔を見合わせた。
「どうします?願ってもない提案ですが…。」
「全世界で指名手配している暗殺部隊だからな。断る理由がないだろう」
「じゃあ契約成立だな」
ジョージはそう言うと、福地と荒井はゲミニの双子を連れてアジトを後にした。
「よかったんですか父上、あの二人を捕まえるのは大変だったのでは?」
「そうは言ってもまだガキだ。殺すわけにもいかないし、いい引取り先だろ。正直言って犯人探しもどんづまりだったし」
ホワイトボードを軽く叩くと、ジョージはタバコに火をつけた。
「犯人像はわかりかねますか?」
アイリスがそう尋ねると、ジョージはタバコの煙を吐き出し言った。
「そうだな、何でも人任せなところがあるな、あと計算高いところもありそうだ」
「当てはまる人物は…?」
「まだ何とも言えない。だがそのうち尻尾を掴んでやるさ」
アイリスは何か言おうとしたが、言葉を飲み込んだ。
「どうしたアイリス?日本が居心地よくて離れ難いなら、任務が終わってもここに残ったっていいんだぞ?お前の好きにするといい」
「…いえ、私は父上について行きます」
「そうか?お前が好きで一緒にいたい奴がいるなら父さんは応援するぞ?」
「そんな人、おりません…。」
アイリスは少し顔を赤くしてそう言った。
それを見てジョージは思った。
…この子がこんなに表情豊かになったのは、母親が死んで以来だな。我が子としては微笑ましいが傭兵としては…。
「父上?」
アイリスの頬に触れながらジョージは温かい目で笑い、言った。
「何でもない、今日は疲れただろう?もう寝なさい」
「…はい、おやすみなさい父上」
「おやすみアイリス」
ジョージはアイリスが部屋へ向かうのを見届けると、再びホワイトボードを見つめた。
アイリスとの会話で少し犯人の影が見えた気がしていた。
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