第13話 狙撃者
狙撃を続けていたコードネーム、ゲミニの二人は、ターゲットが校舎から出て来る本日一番のチャンス、下校のタイミングを待っていた。
「さぁ、姿を見せなさい。梶原修」
姉の方はそう言いながら、昇降口から修が出て来るのを待った。
「姉さん、やっぱり相手もプロだ。見つからないよ」
ジョージを探していた弟はそう言うと、みごとにジョージに翻弄されていた。
ジョージはある時はカーテンの隙間から、ある時は車からAIテルマを使って威嚇射撃をし、ゲミニの二人は全くその場所を把握出来なかった。
しかも自分達がいる場所はすぐに特定されてしまい、グーの音も出なかった。
「なんでこっちの居場所がわかるのよ!せっかくいい場所見つけたと思ったのに!」
再び威嚇射撃を受け、姉の方がそう言うと、弟の方は冷静に言った。
「姉さん、向こうは子供だと思って威嚇しかしてこないのかもしれない。ターゲットを殺せれば僕らの勝ちだ。だから僕もターゲットを狙撃するのに集中するよ」
「なるほど、そうね。じゃあどっちが先に狙撃出来るか、いつも通り競走しましょう。負けないわよ」
「姉さん、今回は勝たせてもらうよ」
二人はそう言うと、昇降口に狙いを定めた。
そして出て来たのは小雨が降っているため傘をさす生徒達だった。
「何よもう!これくらいの雨で傘さすんじゃないわよもう!」
姉の方はそう言うと、銃を構えるのをやめた。
「姉さん、今日のところは中止して帰還しようか」
「嫌よ!他の部隊のメンバーに何言われるか!絶対に今日中に暗殺するわ!」
そう言って姉の方は銃を急いでしまい、移動の準備を始めた。
「次は梶原邸の近くに行くわよ!あそこなら傘をさしていようが関係なく撃てるはず!」
「なるほど、さすが姉さんだ」
そして二人は急いで移動を始めた。
その様子を見ていたジョージは、すぐにアイリスに連絡した。
「もしもしアイリス、実は今な…。」
***
「さぁ、ここからなら簡単に狙撃できるはず!競争の続きをしましょ!」
「負けないよ姉さん」
そう言って二人は廃ビルから、少し離れた梶原邸の門の前に狙いを定めた。
そしていつもの様に、高級車に乗って誰か帰宅した様だった。
「さぁ、早く出て来なさい…。」
狙いを定める二人に緊張が走った。
しかし帰宅したのは、総理大臣の梶原節子の様だった。
「何よ…人違いじゃない」
「つまんないね姉さん」
二人はがっかりしながら、銃を下げていったん休みながら、ターゲットが来るのを待った。
節子の方は秘書らしき人と車を降り、何か話しているようだった。
「野沢、今度のスケジュールだけど…。」
「はい、わかっております総理」
秘書の野沢武彦(ノザワ・タケヒコ)はそう言うと、メガネを少し掛け直した。
「息子の誕生日くらい家族で過ごしたいなんてわがままだったかしら?」
「そんな事ありませんよ総理、時間は調節しておきますので」
「ありがとう野沢、貴方がいてくれて助かるわ」
節子がそう言うと、武彦は明らかに照れながら言った。
「とんでもないです、総理あっての私なので」
武彦がそう言うと、節子は少し寂しそうな顔をしながら言った。
「息子も貴方みたいに謙虚だといいのだけど、最近は私に反抗してばかりよ」
「まだ若いからですよ。わかってくれる時が来ますきっと」
「どうかしらね、あらやだ私ったら外で立ち話なんて…早く中に入りましょう」
そう言って節子達は梶原邸の中に消えた。
そんな中、また一台高級車が梶原邸に横付けした。
「来たわ!今度こそ梶原修でしょう!」
ゲミニの二人がライフルを構えると、車から誰か降りて来るのが見えた。
すると降りて来たのは、傘をさした4人くらいのグループだった。
「ありがとう萩原」
運転手にそう言うと、修はアイリス、茜、海斗を連れて家に入ろうとした。
「もういいわ!全員撃ち殺しましょう!」
ゲミニの姉はそう言うと、一番左にいた傘に狙いを定めた。
その時だった、ゲミニの弟が鈍い音と共に倒れたのは。
「何!?誰!?」
姉が後ろを向くと、そこにはジョージの姿があった。
「これで隠れていたつもりか?なめられたものだ」
ゲミニの姉が発砲すると、ジョージはそれをサッと避け、銃口を上に上げるとゲミニの姉のみぞおちを殴り気絶させた。
「父上、どうですか?」
アイリスからの電話に出ると、ジョージはため息をつきながらタバコに火をつけた。
「大丈夫だ、問題ない。傘の作戦はちょうどいい時間稼ぎになったな。さすが俺の娘だ」
「何をおっしゃってるのです、全て父上あってこそです」
「ハッハッハ!謙虚で何より!」
その後、電話を切ったアイリスは修の部屋に入ると、宿題をしようと待っている三人のところへ戻った。
「もう遅いですよロボ子さん!始めちゃおうかと思っちゃいました!」
「何の電話だったんだアイリス?もしかして男とじゃ…。」
修がそう言うと、アイリスは考えながら言った。
「男性は男性ですが、お付き合いとかではないです」
「そう…ならいいんだけど」
明らかにホッとした修ね顔に、アイリスは少し笑みを見せた。
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