第12話 ジョージと暗殺者


アイリスも暗殺者の気配を感じとっていた。


…さっき窓に光が二つ反射していた。一つは父上でもう一つは…。


アイリスは何も知らない修達を守るように窓の前に立った。


「アイリス!何とか言ってくれよこの二人に…俺はそんなつもりはなかったって…!」


「いや、確実にやらしい事考えてたね修は」


「そうよそうよ!ロボ子さんも何かされそうになったら大声出していいんですからね!」


海斗と茜にそう言われ、窓の外を気にしていたアイリスは皆の視線を感じ答えた。


「申し訳ありません、何の話でしたか?」


「ロボ子が修に狙われてるって話!」


海斗がそう言うと、アイリスは首を傾げて言った。


「いえ、殺気のようなものはオサからは感じませんが?」


「違うのよロボ子さん、修は女の子の大事な物を狙ってるの!」


「何ですかそれは?」


「それはね…。」


コソコソと女子で話し出すと、男子達はそれを聞こうと耳を澄ました。


***


一方、ライフルを持ってジョージはビルを駆け上がると、光が反射した方へ構えた。


「さて、暗殺部隊の皆さんの顔をおがむとしますか」


そう言って向かいのビルや高台を探すが、中々すぐには見つからなかった。

だが、光の反射をジョージは見逃さず、ビルの中から二人組の怪しい影を見つけた。

二人組はマスクにフードを被り、顔ははっきりとわからなかったが、身長や体つきからアイリスと同じくらいである事は間違いなかった。


「…そう簡単に顔見せはしてくれねーか?」


ジョージがそう言っていると、向こうもジョージに気づいたらしく、同じくライフルで発砲して来た。

しかしその威嚇射撃にジョージは動じず、寝そべった状態で撃った。

それは二人組のフードに命中し、一人は女子、もう一人は男子であるのが髪型でわかった。


「さぁ、どう来るかな?」


ジョージがそう言うと、二人組は早々にライフルをしまい、尻尾を巻いて逃げて行った。


「おやおや…張り合いのない」


ジョージは深追いはせずに、そのまま暗殺部隊が帰るのを見届けた。


***


そんなやり取りが、アイリス達が教室に戻ってからも続いた。

どこかでライフルを構えているのをジョージが見つけては逃すを続け、アイリスも修の盾になるように窓際で授業を受けていた。


「ブラウンさん、あまり勝手に席を動かさない様に」


「…申し訳ありません、承知しました」


先生から注意を受けたが、この日はどうにか窓際をキープ出来た。

だが毎日そうするわけにいかないと、考えていたら、修自ら窓際にやって来た。


「オサ…危ないから座っていてくれませんか?」


「…窓際が危ないんだろ?じゃあこうすればいいよ」


修がそう言ってカーテンをしめると、アイリスはその手があったかと額をおさえた。


「疲れてるんだろアイリス?そんな全力で俺を守らなくてもいいんだぜ」


「私は疲れてなど…。父上が頑張っておられるのに何も役に立っていないのは嫌なんです」


「そうか…でもさアイリス、君が神経をすり減らして頑張っても、君の自己満足でしかないんじゃないか?」


修がそう言うと、アイリスは驚きながら修の目を見つめた。


「なぜそんな事を言うのです?オサは私がお嫌いですか?」


アイリスがそう言うと、修は優しく答えた。


「違うよ。その逆で君が好きなんだ。君は強いし守ってくれるし、何より賢いし美人だ」


修がそう言ってアイリスに笑いかけると、アイリスは戸惑いながらこう思っていた。


…オサは冗談を言っている様子ではありませんが、何を考えているかイマイチわかりませんね…。父上ならこういう時どうされるでしょうか…。


アイリスは同じようにジョージが女性に告白されるのを想像した。

その結果、全く女性に興味なさそうで武器の話を延々とするところを想像し、参考にならなかった。


「オサ…今何を考えてますか?」


「…今は君の事を考えているよ」


「…。」


真顔のままのアイリスを修は見つめながら、真剣な表情でアイリスを見た。


***


一方とあるビルでは。


「本当に頭に来ちゃうわ!誰だか知らないけど、迷惑よね!」


「こんな話、聞いてないよ!姉さんどうする?」


ライフルを構えながら二人組の男女がそう言うと、再び襲いかかるジョージの威嚇射撃や、ターゲットの前に居座るアイリスに対して、顔を真っ赤にして怒っていた。


「そもそもあの優男一人殺せない他のやつらが悪いのよ!」


「確かに…僕らに任せたいのはわからなくもないけど…。」


アイリスと同じくらいの男女は、男子は少し髪がはねた感じの頭で、女子はお団子頭で同じ黒っぽい服を着ていた。


「本当に何なのよ!邪魔してくる狙撃手を見つけたらただじゃおかないんだから!」


「大丈夫だよ姉さん、いつも二人で任務をこなしてきたじゃないか、今回もいつも通りやればいいんだよ」


弟らしき少年がそう言うと、姉の方も少しずつ落ち着いてきた。


「そうねコードネーム、ゲミニの私達双子ならって言われて来てるのだものね」


姉がそう言うと、コードネーム、ゲミニの二人は片方はジョージを探しながら、もう片方はターゲットの修を撃つチャンスを待ちながら、狙撃を続けた。





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