第10話 親衛隊とアイリス
「修君をしたっているなら、まずは我々親衛隊に入ってもらうわ!それがスジってものよ!ただし入るにふさわしいか、親衛隊テストを受けて貰うけど、貴女にわかるかしら?」
ちょっと意地悪そうに親衛隊のトップらしき女子にそう言われるが、アイリスは表情一つ変えずに言った。
「親衛隊に入れば、オサとつきあってもいいのですか?」
「おっ…オサ!?てゆーかなんですって!?貴女話を聞いていたの!?独り占めはダメだと言ったでしょう!」
そう言う親衛隊のトップが、他の女子達にアイリスに向かって行こうとするのを止められていると、アイリスは落ち着いた様子で続けて言った。
「オサに物理的に近づけないなら親衛隊に入れませんね…。どうしてもと言うのなら考えますが…。」
「ふざけないでちょうだい!元々入れて上げる気が無いのがわからない!?どうしてわざわざ貴女みたいな子を入れなきゃならないのよ!?」
「はぁ…そうですか」
そう言う親衛隊の面々に、アイリスは興味無さそうな様子でそう言うと、最後にこう言い放った。
「別に入りたいとも思いませんし、結構です。それより任務が…いえ、用事がありますので失礼します」
「なっ…なんですって〜!」
トップらしき女子の怒りがMAXまで達すると、皆もう止められず、女子がアイリスに向かってきた。
しかしアイリスは、向かってきた女子を受け身を取りながら投げ飛ばした。
その場は硬直し、アイリスが教室に戻ろうとすると、トップらしき女子が唸りながら言った。
「痛ぁ〜、アンタなんて修君にまったく相応しくないんだから〜!」
そう言うトップらしき女子を担ぎながら、他のメンバーはいそいそと逃げて行った。
それを見ていた茜と海斗は、教室に戻ろうとするアイリスに話しかけた。
「素晴らしかったわロボ子さん!」
「強いんだなアンタ!修の言ってた通りだ!」
そう言われ、嬉しい反面、修がいなかった事での寂しさを感じていた。
***
その後、作戦会議をしていた親衛隊のメンバー達は、悔しそうにハンカチを噛んでいた。
「絶対に許さないわ!私達親衛隊は普段から修君に近づくのを我慢しているのに、あの子は急接近の上に猛アタックときたら、許されるわけがないのよ!」
「リーダー落ち着いて下さい。まだ手はあります」
一人がそう言うと、タブレットで何やら計画を説明し始めて、すべて話終わると、リーダーが悪い顔で笑った。
「これは良いわ!あの異国人ロボ女に一泡吹かせてやりましょう!」
皆その言葉に頷くと、リーダーはクルクル巻いた髪を弾ませながら円陣を作り手を重ねた。
「行きますよ!ファイオー!」
***
そしてそれは、昼休みが終わってから始まった。
「…!?」
校舎の横を歩いていると、戦場のような殺気を感じ、アイリスは横に飛んだ。
すると軽い音を立てて、どこからか落ちてきた鉢植えが割れた。
「ちょっと!?ロボ子さん大丈夫!?」
茜が駆け寄って来ると、校舎の窓の人影は逃げ出し、そのまま消えた。
それを睨みながら、アイリスは自分が狙われる事での任務遂行の難しさを懸念し考えこんだ。
…学校で狙われているのは私の方かもしれない。そうなると任務に支障が出る可能性が高い。何とか問題を解決しなければ…これは急務だ。
こうしてアイリスへの嫌がらせが始まった。
体育ではどこからともなくボールが飛んで来たり、実験室では薬品が落ちて来たりと、とんでもない事ばかり起こったが、アイリスは持ち前の反射神経でそれらを回避した。
何かしなければと思ったアイリスは、ワザと一人になり、犯人達をおびき寄せようとしていた。
その時、全ての出来事を修も目撃していて、心配そうな眼差しを送っていた。
そして、再び校舎の脇を歩いていると、後から汚れた水が降って来た。
「危ない!」
「…!?」
アイリスは避けられるはずだったが、修が庇って割り込んで来たので、自身も汚れた水を浴びる事になった。
「オサ…なぜ?」
「ごめんアイリス…カッコよく助けたかったんだけど…。」
修は濡れた髪をかき上げると、何やら上から声がした。
「やだ!修君にかかっちゃった…!」
そう言いながら、親衛隊の面々はいそいそと顔を隠しながら校舎の中に引っ込んで行った。
アイリスは修についた汚れを拭こうとハンカチを出した。
「いいよ、それより頭洗って着替えよう」
修がそう言って水飲み場を指差し、豪快に頭を洗った。
それを見てアイリスは真似をすると、髪を濡らしたアイリスはまるで女優の様に綺麗だった。
「オサ…さっぱりするな」
「おっ!アイリス、今もしかして、自が出たんじゃないか?」
そう言う修にアイリスは苦笑いをすると、すぐにいつもの無表情に戻った。
そして二人は体操着に着替えるために仲良く校舎に入って行った。
そんな様子を羨ましそうに親衛隊が見ていると、リーダーが言った。
「ダメだわ!これじゃ修君に迷惑はかかるし、修君に近づきたいロボ女の思う壺よ!」
そう言ったのがきっかけで、嫌がらせはパタリとやんだ。
しかし親衛隊とはどうしても仲良くなれなさそうなアイリスだった。
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