第5話 警護対象者

警護対象者である修と離されてしまったアイリスは、どうにか茜から解放されようと考えていたが、そうとは知らない茜は、学校の中を案内していた。


「この桜ノ宮学園では様々な分野を学ぶ事が出来て敷地も凄く広いのよ。それから色んなジンクスがあって…これはあまり興味ないかしら?」


「ジンクスの内容にもよりますが、それを知って私が何をすればいいか疑問が残ります」


「そっか…てっきり修狙いなのかと思ったわ、他の女の子と一緒で。だって昨日一緒に帰ったでしょ?あれで貴女、学園中の女子から反感かったんじゃないかしら…。」


茜にそう言われて、アイリスは冷静に、しかし少し変な方向に考えていた。


…なるほど、女子の視線が殺気立っているのはそのせいか…。本当にオサはモテるのですね…でもこれはもしかしたら、オサの近くを彷徨く理由を作るチャンスなのでは?


そう思ったアイリスは、胸に手を当てて真剣にかつ一生懸命アピールした。


「それがその通り、私はオサが大好きなんだ!ずっと側にいたい!その為なら何でもする所存だ!茜、もし良ければ私に協力して欲しい!オサとずっと一緒にいられる様に!」


それを聞いた茜は驚いた顔のまま固まってしまった。

そしてポッと顔を赤くし、茜はアイリスの手を取った。


「貴女の熱い思い、心に響いたわ!喜んで協力します!任せて!」


そう言って茜がアイリスの手を強く握ると、アイリスは心の中でガッツポーズを決めた。


***


「結局ロボ子から何にも聞けなかったな」


「あぁ、茜にどこまで連れて行かれたんだか…。」


海斗と修がそんな話をしていると、授業の時間ギリギリに、茜とアイリスが教室に入って来た。


「それじゃロボ子さん、レッツアタックよ!」


そう茜に背中を押されて、アイリスは修の前に出ると、修に言った。


「オサ、昼休みにカフェテリアまで付き合って頂けませんか?」


「えっ…いいけど?」


アイリスの申し出に、修は色々な事を考え混乱していた。


…俺、避けられてるわけじゃないのはわかったけど、何だろう?まぁ俺もアイリスが転校して来た初日に一緒に帰ったりしたけど…てゆーか、あんな強いんじゃアイリスを怒らせたら酷い目に合うんじゃ…!?


「かっ…海斗も一緒でもいいかアイリス?」


「はぁ!?何で俺も!?」


海斗が抗議の声を上げたが、修がすぐに海斗を黙らせ、アイリスの返事を待った。


「では、茜も一緒にではどうでしょう?」


アイリスがそう言いながら茜の顔を見て頷くと茜も笑顔で頷いた。


…邪魔者は頼みましたよ茜!


アイリスがそう思ったのが手に取るようにわかったのだろう、茜はこう思っていた。


…大丈夫、任せておきなさい!


そう思いながらグーサインを送る茜を見て、これはかなり心強い味方を得たとアイリスは思った。


「…そっか、それなら安心…えへん!何でもない!じゃあ昼休みに!」


「了解です」


こうして、昼休みに四人でカフェテリアへ行く事になったのだった。


***


「アイリスは上手くやってっかな?」


その頃ジョージは、車の中で寝そべりながら、学園のすぐ近くでアイリスのと、警護対象者である修の帰りを待っていた。


「にしても難儀だなこれは…。」


そう言って見ていたのは、修を狙う容疑者の一覧だった。

総理大臣である母親の関係者から、親戚、顔見知りなど、思い当たる人物をクライアントである梶原節子に依頼した結果、疑わしい人物が多すぎて特定は難しいかもしれないと、ジョージは肩を落とした。


「多すぎだろ…何人知り合い居るんだよ」


ジョージはリストになっている紙を顔に被せるとそのまま寝てしまった。

昼休みの少し前の出来事だった。


***


そしてとうとう、昼休みがやって来た。

カフェテリアでアイリスと修は向かい合って座り、その様子を茜と海斗が見守る形になった。


「あのさアイリス、君は…。」


「待て!動かないでオサ!」


「えっ!?」


修がコーヒーを持ったまま固まると、アイリスは周りを警戒した。

誰もこちらを気にしてないのを確認すると、固まっている修の着衣に何か仕掛けられていないか、探知機で調べ始めた。


「あの…これは」


「シー…静かに、盗聴器があるかもしれない」


「盗聴器!?」


アイリスが修の周りをウロチョロしていると、それを見ていた茜と海斗が話し始めた。


「まぁ!ロボ子さんってば大胆!」


「何か探してるんじゃないか?おーい…聞いてるか?」


うっとりとし、頬を赤くする茜に、海斗はため息をつきながら、二人を見守った。


「ねぇ!コーヒーは下ろしてもいいよね!?」


耐えきれなくなった修がそう言うと、アイリスは、ジェジュチャーでOKサインを出し、やっと修はコーヒーカップを置く事ができた。

しかしホッとしたのも束の間、盗聴器と発信機が修の校章から見つかった。


「最新型です。仕掛けた人物に心あたりは?」


「母さんだ…それしか考えられないよ。あの人は俺を監視下に置きたいんだ」


「…。」


…出来ればクライアント以外の話が聞きたかったのですが。


アイリスはそう思いながら、盗聴器と発信機を

壊した。












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