第3話 戦闘
運転手の荻原達志に見守られながら、アイリスと修が歩いていると、急に人気の無い所で男達が二人を挟み立ち塞がった。
…刺客か…?
アイリスが構えようとすると、修は和かにその男達に話しかけた。
「何だ、誰かと思ったら哲ちゃん達じゃん!どうしたんだ?こんなところで?」
「ちわーす!お疲れ様っす!修の兄さん!」
修にそう挨拶すると、一際目立つリーゼントをした青山哲士(アオヤマ・テツシ)は他の者達にも頭を下げさせた。
「なっ…なんだ?」
戸惑うアイリスをよそに、修は親しげに話しかけた。
「哲ちゃん丁度よかった、この子今日転校して来たアイリス・ブラウン。アイリス、この人は青山哲士っていってこの辺の不良を束ねてるんだ。何か困った事があったら力になってくれるよ」
「…なるほど、承知しました」
「よろしくお願いします!アイリス姉さん!」
呆気に取られながらも、アイリスは任務のために使えるかもしれないと哲士の事を一目置いた。
「哲ちゃん何か用があって来たんじゃないか?」
修がそう話しかけると、哲士は真面目な顔をし、修に耳打ちした。
それをアイリスは哲士の口元を見る事で読み取った。
「最近変な奴らが兄さんの周りを彷徨いています…ご忠告までに」
「そっか、ありがとう!気をつけるよ」
…変な奴らが彷徨いている…これは、向こうは襲うタイミングを見計らっていると考えた方がいいかもしれませんね。
「じゃあ哲ちゃん!またね!」
「はい!お気をつけてお帰りください!」
アイリスが考えている間に挨拶を済ませて、修はアイリスを連れて帰路につこうとした。
「アイリスって家どっち?送って行くよ」
…家、そう言えば父上から何も聞いていませんね…。
アイリスはそう思いながらも、送ってくれると言う修とのこの状況を利用することにした。
「そこの角を曲がって…。」
***
人気の無い港の倉庫の近くに、アイリスは修とその運転手の達志を連れて行くと、すっかり外は暗くなっていた。
「アイリス、本当に君の家ってこっちなのか?」
「そうです、もう着きますよ」
アイリスが武器になりそうな物を探しながら歩いていると、達志がその場の雰囲気に音を上げ始めた。
「坊ちゃま、こんな所を歩いていたら危険ですよ!」
「荻原!失礼な事を言うなよ!それにアイリスをこんな所ならなおさら一人に出来ないだろ!」
「坊ちゃま…貴方も十分失礼です」
二人がそんな会話をしていると、後ろからゾロゾロと騒がしい足音が近づいて来た。
「来たようですね…走って!」
アイリスはそう言うと、修の手を引き走り出した。
それに、達志もビビりながら必死について行った。
「哲ちゃんが言ってた奴らか…!?」
「…。」
修がポロっと口にした言葉を受け流しながら、アイリスは空いていた倉庫の中に逃げ込むと、戸を閉めて中に入れない様にした。
追って来た者達はいずれも黒ずくめのスーツ姿で、サングラスをしていた。
…多いですね、これでは守りきれない。父上は今どこに…。
アイリスがそう思っていると、修が遠慮がちにアイリスに言った。
「あの…アイリス、手が…。」
「…!?」
少し頬を赤らめながら修がそう言うと、アイリスもずっと修の手を握っていた事に気づき手を離した。
達志は微笑ましそうに二人を見ていたが、当事者達は少し気恥ずかしいそうにしていた。
そんな中、修は真面目な顔をし、アイリスにまた話しかけた。
「アイリス、俺はちょっと特殊な家の子で…こういう事も珍しくないんだ。だけど君は違うだろ?君の動き、まるでこうなる事をわかってたみたいだった。君は何者でなんで俺を助けてくれるんだ?」
「…それは言えません、ただ…。」
アイリスは倉庫の天井の窓が光るのを見て、戦闘体制になると言った。
「貴方は私が守る」
そう言ってアイリスが走り出すと、それに合わせる様にガラスを突き破ってジョージが武器を外のヘリから放り込んだ。
…恩に着ます父上。
そう思いながらアイリスは機関銃をカシャリと動かすと、言った。
「殲滅する!」
アイリスがそう言うと、倉庫の扉が破られ中に男達がワラワラと入って来た。
その時アイリスは温原センサーをつけて電球を撃ちその場から光を奪うと、機関銃で次々に男達を倒していった。
「坊ちゃま…!」
「萩原!何が起こってるんだ!?」
男達の呻き声ばかり聞こえてくるため、修と達志はただただ動かずに終わるのを待つ事しか出来なかった。
アイリスが戦闘を終えると、その場には無数の男達が倒れ、戦闘不能になっていた。
…出来れば殺しは避けたいですからね。ここは平和の国ですし。
アイリスがそう思う中、修は戦闘の音が止んだ後、スマホを持ち出しライトで辺りを照らした。
「何があったんだ…?」
銃を持って倒れている男達と、その上に機関銃を持って立っているアイリス、現実離れしている状況に、修と達志は自らの頬をつねった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます