第3話【逮捕】
業界関係者の逮捕から芋ずる式で名前が上がった。
友人からの連絡で、刑事が晋を探しているとの事だった。
昭和58年10月1日。晋は自分に逮捕状が出ていたことを知った。
それは嵐の酷かった前日だった。晋は、大人しく逮捕される
つもりなど毛頭なく、担当の刑事に連絡し「出頭する」と嘘をついて、
知り合いの住んでいる新潟の落人村へ向かう準備をしていた。
そこには祖母の生まれ故郷である。冬になると雪で外界から閉ざされる
豪雪地帯だ。荷物を詰めていたそのとき、ようやく上京をしてきた本来の
目的を思い出しだしたかのように、焦燥に駆られた。しかし一方で、
ほとぼりが冷めたらもう一度東京に戻ってやりなおせる、という楽観も
あったのだ。しかしその夜、天罰は下った。
激しい雨の中を走り続けた晋は高熱を出して動けなくなったのだ。
結局、晋は聖徳太子の万札数百枚が散らかっている自分の部屋で寝込む
羽目となり、そして、不思議なくらい天気も身体も爽快な朝を迎えた。
さあ、いざ新潟へ・・・・とその時だった。やたら、外が騒がしい。
どうも、俺の部屋を複数人が取り囲んでいる。外で声がする・・・
課長!この家で間違いないです!居るようです!その瞬間、
玄関ベルが鳴った。居留守を使ったが遅かった。
台所の窓を壊して入ろうと声が聞こえたので仕方なしに応じた。
ドアを開けた瞬間、玄関口で逮捕状を翳された。
刑事3人と警官3人。6人で俺一人を逮捕しに来ていた。手錠をかけられ
パトカーに押し込まれた。最小限の荷物と現金をもって一路、署へ。
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