第2話【Falling Down】

晋は九州の田舎からミュージシャンを目指し18歳で上京してきた。

19歳でバンドを組み、初の自主録音でその才能を大物プロデューサーに

見初められ、いい気になっていった。

バンドメンバーは晋以外、皆学生で、貧相だった。

スタジオ代はもちろん、全員に顎足(食事と交通費)付き。

録音費用も、ライブノルマも一切、貰わなかった。

Baby達(女子たち)にはブランド衣装から装飾品、高級下着までも

買ってあげた。何ら職にも就いていない男なのに恐ろしく余裕があった。

 晋の実家はもともと裕福であった。父親は地元で暴力団相手に墨を

入れる名の知れた刺青師で、常に懐に100万単位で金が入っているような

豪快な男だった。当時は遊ぶ金がなくなると、晋は黙って親の金をくすねた

ものだったが、東京では稼ぎ分のみが自分の金になるため、必然的に賃金の

高い深夜の飲食関係アルバイトを転々とした。バンドのためだった

資金集めは、晋の要領が良いことも手伝って余裕が生まれるようになり、

やがて女と薬に溺れるきっかけとなってしまった。

ドラックに手を染め、売に走り、稼いだ大金でバンドを運営していた。

朝まで飲んで、起きると隣に知らない女がいつも寝ていた。

目の前にある成功と、刹那的快楽。バランスを保ち続けていたはずのふたつは、

完全にあとでに傾いていった。六本木で遊び呆け、泡銭を撒き散らかす日々を送る晋に口出し出来る者もいなかった。そして堕落の道を進んでいった。

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