第5話 彼女からの会話

「ラナちゃん、良い女の子だね」

2年生だけ午前授業が終わり、田中カモメとその彼女の佐伯知夏は、二人で帰宅途中に突然、知夏(ちなつ)が言ったのだ。



カモメは、少し驚いたクラスも違うし、話した事もなさそうな2人だったからだ。



「この前、また過呼吸で倒れて保健室で横になっていたら、バンドエイドを探しにラナちゃんが来たの。困ってたから少し話したら良い女の子だった」

知夏が、珍しく笑った。カモメは少し照れつつもほっとした。



知夏の家は教育に厳しくて、両親共に子供の進学に力を入れている。知夏の高校2年生になる姉、知秋(ちあき)は、都内でも有名な進学校に行ったが、1年生の夏にうつ病になってしまい、引きこもっている。



姉妹は仲良く、知夏は姉を心配しながらも両親の期待は引きこもりの姉から、妹の千夏にいき、小学校6年生の時に過呼吸をおこしてたおれた。



それでも、姉妹の両親はいまだに知夏の進学校への受験をあきらめていない。



知夏の学力ならギリギリ入学出来る高校のため、勉強をしているがストレスをためては倒れる。



「高校は、カモメ君と違う高校になっちゃうね」

いつも寂しそうに言うだね知夏に、カモメは心が痛んだ。



自分の学力なら、知夏と同じ高校に行く事は出来る。



しかし、カモメにはどうしても行きたい高校がある。理由もある。自分の人生のために。



「田中さん、最初はとっつきにくい子かと思ってたけど素直な子だった」

話題を変えたくて、カモメは話を戻した。



いつの間にか、空は夕日から夜空になりかけていた。




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