転生ブームなどという馬鹿げた熱病

 転生ブームなどという馬鹿げた熱病が醒めた世界で残された人々は故人を偲ぶ暇もないほど苦しい生活を強いられています。


 おとうさん。私は貴方を強く恨みます。どうして轢かれたいと思ったんですか?


 転生であたりを引いた勝ち組は地球の技術を異世界に持ち込んで豪奢チートな生活を満喫しました。

 遅れた文明を加速させて貢献しました。

 彼らは華やいだ暮らしぶりをSNSに投稿していました。

 しかし、成功者たちはこちらの世界に何ひとつ利益をもたらしてはくれませんでした。

 ワクチンの製法ひとつ教えてくれなかったのです。


 付け焼刃の現代知識で異世界に繁栄を築いたものの、肝心の基礎研究を行う下地ができていないばっかりに技術革新が行き詰ってしまったのです。

 ウィキペディアや検索で調べることは出来ても学歴のない人に技術を発展させることは無理ゲーでした。

 本来ならば、異世界で培った技術をこちらの世界に回してウインウインになるべきでしょう。 

しかし彼らは学問より酒池肉林を選んだのです。


 良識ある勇者が、いつかきっと現代文明を追い抜いて凱旋してくれる。

誰もがそう信じて待ちました。



 あれから二十年。世界は滅亡の瀬戸際にあります。転生というパンドラの箱を開けてしまった人類は努力という行為をやめてしまいました。


 

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