第35話 君の記憶の中に 僕はいるだろうか?

未来を語り合った。

二人が並んで歩く未来を。


それが蜃気楼のように

消えて無くなるなんて思いもしなかった。

君の笑顔が消えるなんて

想像もしていなかった。



ある時から、君はよく

「疲れた。 しんどい」

というようになっていったね。

それは、君の体が軋み始めた時だったと、今ならわかる。


君のイライラや、落ち込みや、物忘れが病気のせいだと理解できていたなら

君と喧嘩することもなかったのに……


ごめん。


ごめん。


ごめん。


もう一度会って謝りたい。



「記憶が消えていく病気なの。

 正直、あなたのことを覚えているかわからないわ」

君のお姉さんがそう言って、入院先を教えてくれた。



まだ、君の記憶の中に僕はいるだろうか?





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