第7話 亡くなった弟へ

 不良と呼ばれた弟だった

 凶器みたいで

 先生や校則を無視していた


 ふざけた弟だった

 寝ている私の耳元で

 大きな声で歌をうたっていた


 おしゃべりな弟だった

 話が面白くて

 寡黙な父も笑っていた


 大きな夢をみる弟だった

「俺は、一旗揚げて故郷に錦を飾るんだ」

 そう言って都会へと出て行った


 結婚して

 子どもが生まれて

 良いパパになろうとしていた


 母の愛を知らない弟は

 自分の家族を大切にした


 家族を守るために

 懸命に働く


 心と体が

 軋み始めても

 弱音を吐かなかった


 限界を超えるまで


 そう

 限界を超えるまで……




 弟は 旅立った

 私たちの手の届かない世界へ





 弟よ

 あの世で会ったら

「ばかやろう!」

 って殴っていいかな

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