暗転

「俺」が存在すること自体が何らかの影響を及ぼすのだ。

だから、呪詛のように何かを訴え続ければ屁の突っ張りほどの影響力はあるだろう。

その行為がどんな結果を招くか予想もつかない。

しかし、塵も積もれば山となる。

ああ、そろそろ時間切れだ。

あっという間の五分だった。

俺は消える。

頼んだぞ。次の俺。



◇ ◇ ◇


思い出そうとしても記憶にとどめられず、覚えようとして忘れちまった。

えーとどっちだ。とにかく、忘れられない格言がある。

五分以上の短期記憶を維持できない俺だが、このフレーズだけは身体に刻まれているのだ。

神の御業か、本能か原因はわからない。どういうわけか俺の脳内からきれいさっぱり記憶を消し去る機構も、この言葉だけは拭えない。


その端緒を掴んだような気がするが、ええっと。

何だっけ、何だっけ。


ええい、クソ!


だいたい、どこのどいつだ。俺をこんな所に閉じ込めやがったのは。

俺が一体何をしたというのだ。


刑罰か。

いや、禁固刑なら反省させるために罪の記憶は残しておくものだろう。


人身御供か。

それなら取引相手が狼狽する様子を垣間見せて、窮状を訴えさせるだろう。

それもない。

となると、俺は実験動物として捕らわれたか、造られたのだろう。


許せん。

俺は血の通った人間だ。感情もある。


ふざけんな!


    

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