憎悪

どこのどいつだか知らないが、ここから出たらぶっ殺してやる。


死ね!

死ね!

死ね死ね死ね!


絶対に倒してやるからな。開口一番、喉を掻っ切ってやる。


待ってろよ。

あっ、そろそろ五分経過。


頼んだぞ、次の俺!



◇ ◇ ◇



「こ、これは?!」


蝋燭の密林が揺らめくダンジョンの最奥部。

身の丈三メートルはあろうかという巨漢が青ざめている。

正体不明の骨格や木乃伊のアクセサリを纏ったまま、ぶるぶると震えるさまは魔王の名に恥じるというものだ。


禍々しい色に光り輝く水晶玉。それに照らされて勇者が不気味な笑みを浮かべている。


「俺を抹殺しなかったのは『善意』が必要になると思ったからだろ? 性善説が無くちゃ人間を騙せないものな。嘘は悪意の主食だものな」

「お、お前の言うとおりだ。裏切られる善意があってこそ、俺たちの悪事が成立するというものだ。だが、お前を保存したのは間違いだったようだ。ううっ」

魔王はこめかみを揉みながら嗚咽した。

「光の勇者が自力で封印を破ったんだものな。しかも、悪意をバネにして。で、どーするよ」

かつての「俺」氏は聖剣を魔王の喉元に突き付けた。相手はぐうの音も出ない。

    

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