第37話 当たり前の日常
「ハルキーそろそろ起きて!」
リュウの声で目覚めた俺は、軽く伸びをして起き上がる。
「寝すぎだよ、もうご飯できてるよ!」
「悪い悪い、ついつい二度寝しちゃって」
目先の問題を片づけた俺は少し安心したのかだらけ気味の生活をしていた。
勿論仕事はしている、でものんびり起きてごはんを食べ、働き寝る。
充実した生活をゆっくり送っていた。
「目玉焼きと味噌汁か、やっぱ朝はこれだな」
俺は昔から卵に目が無い。
目玉焼きも玉子焼きも、スクランブルエッグも、朝食に出てくればそれだけでごはんを食べられる。
それに味噌汁も目覚めに飲むと頭がシャキッとするし、心から温まって落ち着く。
「ごちそうさま、トラ」
作ってくれたトラに感謝をしつつ流しに片付けに行く。
作ってくれたから片付け位は自分でする、それはトラと皆との約束だった。
ご飯を作ってもらえる感謝を忘れない、いつもありがとうという気持ちを忘れない様に提案したのだったが、家族は皆同意してくれた。
ココとルビーは相変わらず狩りに出てくれている。
農産物が取れるようになったとはいえ、肉はご馳走だ。
食卓を彩ってくれている二人には感謝しかない。
それとこの前捕虜にしたエレン達も狩りに参加してもらっている。
あの後村人達と話し合い、エレン達とも打ち解ける事が出来た。
今では立派な村人になっている。
得意の索敵で主に野草や資源採取を行ってもらっている。
ここは未開の森、魔物の強さは伊達じゃない。
鍛え始めたエレン達も徐々に強くなっているが、まだ安全のマージンを取るために戦闘にならないよう努めて貰っている。
リュウはその資源を元に新たな魔道具作りを行っている。
エレン達の住居が出来、急ぎで村の設備を整えて来た今までとは違い村人達は自分たちの理想の街づくりを始めている。
勿論俺達も協力しているのだが、何でも加護頼みで作らないようにしている。
自分達が汗を流し作り上げる村だからこそ愛着が持てるものだろう。
新たに作った魔道具の中には世に出せないような代物を除きデサリアにも提供している。
帝国の侵略もひと段落付き、王国内からのちょっかいを防いでもらっているビックス達に少しでも協力しようと思ったのだが、ことのほか役に立っているようだ。
今では王国一進んだ街と呼ばれるデサリアには、リュウが作り上げた魔道具が少しずつ増えていた。
特に冷蔵、冷凍が出来る箱を作り上げた時は、食に関して革新的な進歩を迎える事を喜んでくれた。
今ではリュウは魔導王なんて呼ばれている。
家族としては鼻が高い。
ハクに関してはあまり進展はしていない。
だが今の所大きな問題も起こっていないため、焦らずに調べていこうと思っている。
今も村の子供達と遊んでいる姿を見ていると、このままの方がいいのではないかと思う位だ。
徴兵されていた村の男達は約束通り任期満了として戻されてきた。
村人達は大いに喜び、三日三晩宴となっていたが、やはり家族という物は特別だ。
その輪に少しでも力になれた事を俺は誇りに思うし、これからも力になれる事を探していきたいと思っている。
色々見て回って家についた俺は、ふと考えた。
前の世界でも、もしかしたら悪意を持たない純粋な心で接してくれていた人もいたかもしれないな。
余りにも疑心暗鬼になり距離を置き、孤独に死を迎えた俺が改めて振り返る事が出来るのも、この世界に送り出してくれた神様のお陰だ。
そして力も与えてくれて、今平穏な日々を送れている。
当たり前に出来る事、存在している事は、自分の力ではない。
俺はやっと味わえた日常を噛み締めつつ、家族とご飯を食べる事にした。
第一部 完
異世界に行ったら家族同然のペットが人になって本当の家族になりました。 るーも @tosindai_moo
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