第34話 帝国軍との遭遇
王国側の拡大を終えた俺達は帝国への国境側へ拡大を始めた。
今回は危険が付きまとう、そう理解はしていたが今の作業に集約されているだろう。
既に王国側との通路は分断済み、それを強固にするために国境へ広げるが、それは敵対勢力、帝国との接触が想定される。
王国側の時に共に来てくれていた村人達は今回残ってもらい、代わりにココに協力を頼んだ。
今回のメンバーは俺、リュウ、ルビー、ココ。
最悪戦闘も考えられる為、油断は出来ない。
斥候などでこの森の広がりを確認しているだろう。
既に帝国のテリトリーに入ってると思って間違いない。
ルビーに索敵を頼み、反応の無い場所に木を植えていく。
そうすることで斑だが少しずつ森は広がっていった。
兵が撤退したところにすかさず木を生やせばその斑も無くなっていく。
今回は村の最高戦力の内3人を引き連れて来たので、難度の高い作戦も順調に熟せた。
想定していた範囲の7割を終えた俺達は、森に隠れ作戦を立てる。
「残ったのは既に帝国兵が陣を張った場所だけなんだが、どうするべきだと思う」
「私とココで偵察した所、前線の陣に居るのは1000人程度でしたわ。森が広がり侵略が進まなくなって、一度兵を引かせたのでしょう。今残ってるのは索敵や探索に長けた人が多いようね」
「俺はちょっかい掛けても良いと思う。今いる帝国の兵を削れば、探索能力をごっそり削れるはずだ。今後どうなるか分からないが、森の調査は相当遅れると思う」
ココは戦いたがっている訳では無さそうだが、冷静に判断した上で一戦交えるべきだと言う。
「ねーねーハルキ」
「どうしたリュウ?」
「大丈夫? なんか難しい顔してるから」
「俺はさ、出来るだけ危険を避けたいんだ。ココが言う通り相手の斥候達を削る事が今後に影響するのはわかるんだけど、どうしても踏ん切りがつかなくて」
家族を守るために人を殺める事だってあるだろう。
それはこの世界に来て、国に関わって戦争を止めようとしている時点で覚悟している。
ただ家族がいくら強いとはいえ、4人で1000人に突っ込むことで危険が無いわけではない。
味方の命を預かるというのは、そこまで重たい事なのだ。
大切な家族なら猶更。
「んーなんで危険なの?」
「なんでって……あの兵士たちに戦いを挑むんだから、命を狙われるんだぞ?」
「こっちが安全な位置から攻撃しないの?」
「安全な位置……」
今の俺達には魔法がある。
だが遮蔽になるとしても木位だ。
追い付かれはしないだろうが、万が一にでも決死の特攻をされてしまえば100%なんてものはない。
「崖でも作っちゃえばー?」
「崖か」
土魔法で一気に山を作り、更に水魔法で堀の様にしてしまえば……
頂上に壁を作り、そこから攻撃。
敵兵が引いたら簡易的な砦でも作れるか。
「リュウは何でも考えついちゃうんだな」
「えへへ」
頭を撫でてやると顔をだらしなくさせるリュウ。
これから行うのは一方的な殺戮になるのだが、今は心から癒される。
「ココ、ルビー。今から土魔法で横長に山を作る。国境側に水魔法で堀を作ってくれないか。リュウは山を一緒に作ったら、遮蔽物になるように山の上に壁を何重にも作ってくれ」
「実は使えないかと色々模索しててな、防壁魔法が出来たんだ。ハルキは堀を協力してくれないか、俺は全力でお前らを守る」
ココは魔法を教わりながら戦闘で使える魔法を考えていたようだ。
物理も魔法も防ぐ盾。
家族や仲間を守りたいというココの気持ちが伝わる。
「分かった。最初はみんなで出来るだけ国境を埋めるように山を作る、準備は良いか?」
「うん」「おう」「ええ」
「3.2.1.いくぞ!」
そういうと4人で同時に土魔法を使う。
この世界には魔法が存在して、魔力の消費量に伴い様々なランクの魔法が存在する。
だが俺達は魔法を覚える順番が違うからなのか、元々理の違う世界から来たからなのか、イメージによる魔法を使う。
勿論詠唱して行うことも出来るが、元素となる属性をイメージに組み込みオリジナルの魔法を使う事が出来た。
魔力量も神の力で余りある。
俺達四人の土魔法は、あっという間に小高い山を作り上げた。
「何が起こった!?」「報告を急げ!」「敵襲か!?」
帝国の陣でも騒ぎが大きくなりざわめきが起こる。
俺達は作った山に登り、前もって話をしていたように堀を作り遮蔽物となる壁……何故だかリュウに任せたら簡易的な砦になっているのだが、準備を進めていく。
ココは俺たちを守るように防壁を張っているのだが、余りにも常識外れの光景に帝国兵は警戒だけしているが何も出来ずにただ黙って見ている。
結局何も攻撃されることは無く、たった4人で山に建つ堅牢な砦を作り上げてしまったのだ。
俺は3人の前に立ち、大声で呼びかける。
「俺達は王国の協力者だ、お前たちの一方的な侵略に怒っている。逃げ出す者は今すぐ逃げろ、立ち向かう者は容赦しない!!」
俺が叫ぶとやっと相手が人間だと理解して落ち着いたのか、帝国兵が弓と魔法を放ってくる。
それらすべてを防ぐココの防壁。
一つもこちらに届かない事を知り、帝国兵たちに焦りが見え始めた。
「ルビー、探索に長けている者達を狙ってくれ。俺はあそこにいる指揮官らしき人間に攻撃を仕掛ける」
「わかったわ」
ルビーは小さい水の弾を銃弾のように放つ。
帝国軍の斥候達を上手く狙えているのだろう、まばらだが倒れていく。
「殺してないわ、足は痛いだろうけど」
そういうルビーは悪い顔で笑う。
ルビーは怒らせてはいけないと思った。
俺は大きな炎の塊を作り上げ、指揮官が居る本陣目掛け放つ。
勿論誰にも当たらない様にだが。
一際大きな音を立て、周辺の地面が抉れる。
放たれた場所は炎が消えず、地獄のような光景となる。
「さあ、最後通達だ。立ち向かう者には容赦はしない、逃げるなら今の内だ」
俺が改めてそう言うと、帝国の者達は急いで逃げ出し始めた。
1000人程度居た陣はルビーに攻撃された者達と共に放置される。
どうやら覚悟をしていたが、一人も殺めずに切り抜けられたようだ。
「ありゃー皆逃げた、かっこわるー」
リュウは少年の体に引っ張られるように不貞腐れる。
戦いという物に憧れているのだろうが、命のやりとりなどしなくて済むなら一番なのだ。
「とりあえず倒れている斥候達を捕虜にしよう。それと陣の物資もあるから王国から兵を連れて来るか、頼めるかココ」
「ああ、任せておけ」
そう言うとココはジェットの魔法でデサリアへ向かう。
「大人しく捕まってくれるといいんだがなあ」
俺は蹲っている者達を見ながら、面倒な事にならなければいいなと思うのであった。
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